第216話 反省会

「反省会を始めましょう」


「はい」


「うん」


「うす」


ベッドに横たわりながら、突然始まった反省会。

窓の外はもう夜で、昼間の戦いが嘘のように静まり返っている。


あの後、エルトゥフ達やゴーレムの助けのもとなんとか亀裂を発見したのだが、なんと石になったリューシュの下敷きになっていた。


下敷きといっても尻尾の先なのだが、塞ぐためには退けなくちゃならない。退けるといっても石になってるので、突貫工事のような事をする為、それが完了するのに時間がかかるからひとまず休息を取っておけと言うことらしい。


ゴーレムの拳でなんとかならないかと思ったが、リュニーの時よりも硬度がありすぎて駄目だった。地道に削っていくしかない。


「じゃあ、まずコッチから」


カリアが手を挙げる。

まさかのトップバッター。


「全体的に力が足りなかったよ。鈍りもあったけど、これからはもっと力をつけようと思う」


リューシュをあんだけ遠くに吹っ飛ばしたのに、まだ足りないと。やばい、最終目標がカリアなのに、最終目標自体がオレから遠ざかっていく。


「次はアタシ。何て言うか、初めてもっと良い武器とか防具とか欲しいって考えたわ。火に耐性あるっていっても、最後のはマグマだったし、正直、アウソの槍が無かったら大変なことになってたと思う…」


主に服がという幻聴が聞こえた。

最後まで一応頑張ってた服だが、最後の雨で止めを刺されたらしく裂けたらしい。今はエルトゥフの服を貸してもらってる。


「俺は全体的に力が足りてんさ。やっぱり人間の身じゃ此処までが限界って感じるけど、どうにかしたい…」


アウソの声が暗い。

そんなことを思っていたのか。そうだよな、オレも今はガンガン行こうぜ!って回復能力に任せて突撃できるけど、じゃなかったらアウソと同じように悩んでいただろう。


よく考えたらアウソはほぼ生身で戦ってるよな。何かの魔具とか装備して何とかならないだろうか?


「えと、オレも力不足です。回復能力なかったら、多分軽く五回は余裕で死んでる気がしますので。あ、あと戦闘中の周囲確認をもっとします」


「あー、ごめん。それアタシらもだわ」


「背中だっけ?当たったの。ごめん」


「いやいや、大丈夫。あれはオレのミスだから」


完全な事故だったけど、周囲の確認してたら回避できたことだ。次は無いようにしよう。


『ネコはベストを尽くした』


唯一胸を張るネコ。

お前だけは本当にサポートしっかりしてたもんな。


「今回の反省を踏まえて、今後、悪魔と戦うことが増えると思うから、各自弱い部分を鍛えるなり対策を練るなりして克服するよ」


「了解」









クユーシーが用意してくれた食事を済ませて床につく。


カリアは戦いの火や熱、あと秘技によってだいぶ体力を消耗していたらしく珍しく熱を出した。


オレは最後の全力での雷の矢で魔力欠乏で魔力が戻るまで動けない。


しかし戦いの余韻で眠れずにボーッと天井を見ていたら、皆が寝静まった時に小さくカリアに声を掛けられた。

起きたのか。


「ライハ…起きてる?」


「はい」


「なんで最後コッチを庇ったよ。下手したら死んでたよ、あんた」


「……」


あの時を思い出す。

本当に無意識の行動が多かったけど、ひとつだけ何であんな行動に出たのかの心当たりはあった。


「…もう、力不足を言い訳に後悔したくなかったんです」


思えば今まで色んな事を力が足り無いと言い訳して逃げていた気がする。この世界でも、向こうの世界でも。そして後悔して、それでも飽きずに何度も繰り返していた。


あの頃よりは力も経験も増えて、出来ることも多くなった。


だからこそ自分に言い訳したくなくて、体が動いたんだと思う。やらなくて後悔するよりは、やって後悔した方がマシだって。


「ばか」


カリアから一言が胸に突き刺さった。


あれ、思ったよりもダメージでかい。






「……だけど」





しかし、次の言葉でダメージは霧散した。






「ありがとう、助かった」






胸にじんわりとした物が広がる。


カリアの方を見ると、カリアは目を瞑りながらも笑みを浮かべていた。



「どういたしまして」

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