第206話 エルトゥフの森での攻防.13

胴に突き刺さる木が燃えるが、やはり太さがあるせいで燃やしきれないようだ。


しかし、それにもめげずにナマズは暴れる。暴れまわる。ところ構わずにマグマを撒き散らしながら叫び声を上げた。


「!!!」


目の前にマグマの塊が大量に落ちてきて、慌てて急ブレーキをかける。すんでで焼かれることはなかったが、煙で視界が悪くなった中で黒い尾が迫っていることに気付くのが遅れ、尾がオレに直撃した。


熱すぎて、一瞬脳が変な錯覚でもしたのか冷たく感じ、次いで激痛が駆け抜ける。


「ぃだっ!!」


視界が悪いせいで木との距離が正確に把握できずにぶつかり頭を打ってしまった。グワングワンする頭を押さえつつ立ち上がると、ぬるりとした感触。


不思議に思って手を見てみるとめっちゃ血が付着していた。やばい額割れたか。


「大丈夫!!?」


「なんとか大丈夫でーす!!」


オレにして見たらずっと火の中でナマズの背中抉って何かを探しているキリコの方が心配である。本当に熱くないんだな。


「二本目!!」


ズドンッと更に突き刺さる木の槍。


『ア"ア"アアア!!!!』


ギョロリとナマズの目がカリアの姿を捉えた。


「ッ!」


すぐさまナマズの目を狙い矢を射つが、射つ瞬間に額の血が目に入り視界がボヤける。


しまった、ズレた。


矢はナマズの目には当たらず、その横のヒビ割れの中へと消えていった。

次の瞬間。


「え!?」


キリコが異変を感じて、アウソの槍を引き抜くとすぐさま全力でその場から離れた。

ヒビが広がり、ナマズの形が崩れてマグマの玉になった、場所によって流れが変わり、魔力が網目状になって覆っている。その中心に、魔力が特に強い核の様な物があった。


「キリコ!!」


カリアが叫ぶ。


その声に呼応するかのようにキリコがアウソの槍を構え、マグマの中心核を狙い突撃した。


が。


「!?」


「うわっ!!」


マグマの玉が一瞬小さく萎んだと思うと、大量の石つぶてを生成し、それが全方向へ向けて、まるでショットガンのように放たれた。


近くにいたキリコが、回避が間に合わずに攻撃を喰らい吹っ飛ばされ、オレも咄嗟に木の裏に隠れたが幾つか喰らってしまった。


「ぐぅうううーー…」


めり込む石を腕から取り除いている最中、なんとなくその石を見てみると、透明な硝子のような石だった。なんかこれ見たことあるな。


『グググ…、人間の癖に、人間の癖に、人間の癖に、大人しく食われてろ!!!』


「ライハ伏せてろ!!」


「!!」


カリアに言われるままにその場に伏せると、すぐ頭上を風切り音を立てて通り過ぎていく。バキャアと重々しい音を立てて木が斬り倒されて燃えていた。


しかも幾つも。


(嫌あああ!!もう怖いよおお!!)


ちらりとナマズを見ると、今度は鳥へと変化していた。翼を刃物のように使うサギに似た鳥。何でもありか。


「!」


マグマの量が減っていた。それに大きさも、初め見た時の凡そ1/10程だ。


マグマの量は有限なのか?

体積に比例する、とか。


翼の先に石を溜めて刃物にしている鳥を観察し、なんとなく鳥を覆っている魔力の色を見てみた。


全身を黒い魔力が覆っている。

流れを見てみると、核を中心に網状の魔力を使ってマグマを留めているようにも見えた。


「…………良いこと思い付いた」

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