第204話 エルトゥフの森での攻防.11
糸が繋がった木が物凄い勢い音を立てながら地面から引っこ抜かれ、一斉にカリアに飛んでいく。
まさかカリアの予想通りとは!
しかし、カリアは冷静に飛んできた木を視認すると、その内の一本を鷲掴み、まるでバットを振り回すがごとく次々に飛んできた木を弾き飛ばしていく。その先は上にいる鳥の集団。器用にも程がある。
鳥の集団はまさか木を使って攻撃してくるとは思ってなかったのか大混乱に陥っているようで、避ける間もなく大量に激突している。
「!」
地面が揺れている気がする。
下を見つつ、嫌な予感がしながら粒子モードに切り替えると、地面の中から大きな生き物がまるで泳ぐかのように急上昇してきていた。
「!!!?」
鯨は泡を使って魚を中央に集めて、下から一気に丸呑みにする狩りの仕方をする。
今見ている光景はまさにそれだった。
土煙を上げながら巨大な化け物が大口を開けてカリアの真下から襲い掛かってきた。
「本体そっち!!?」
黒い体躯に走ったヒビから真っ赤な光が漏れている。凄い熱気に包まれながらカリアを見るとアウソの槍を遠くへと投げている最中で、その手にはアウソが細工をしていた細かく編み込まれた縄が握られていた。
口を閉じる化け物、閉じきる前にとカリアは鷲掴みにしていた木をつっかえ棒にして口の中に閉じ込められるのを防ぐが、その化け物は相当の熱を放ち、力が強いのか、つっかえ棒にしていた木が自然発火しメリメリと音を立てながら折れようとしている。
このままじゃカリアが食べられる!
雷の矢をつがえ、化け物の目らしき所へ向けて射った。
ちょうど向かい側に居たらしいキリコも同じことを思ったのか、ほぼ同じタイミングで矢が射たれ、二つの矢は化け物の二つの目に突き刺さる。
『~~~~~!!!』
声に為らない悲鳴を上げる化け物。
その隙をついてカリアが真っ二つになる寸前の木を踏み台にして高く跳躍。
アウソの槍についた縄を利用して木をクッションにしつつ地面へと降り立った。
目の痛みでか、バタバタと激しく暴れる化け物のヒビ割れから溶岩に似た赤い粘りけがある液体が撒き散らされ、その液体が付着した所から火の手が上がって広がり始めた。
「…やばい、エルトゥフに怒られる」
犯人オレじゃないけど、森の惨状を見ておっさんエルトゥフのクアブが悲鳴をあげて怒鳴り散らず所まで想像できた。
しかし、ヤバイな。
あんな溶岩で出来た鯨みたいなやつ、どうやったら倒せるんだ?
空から降ってくるマグマみたいなのを避けつつ、観察していると、突如その姿がグニャリと歪み散っていた火の鳥達が集まっていく。
『ガガガガ、ニンゲン…ニンゲン、喰ってやる』
パチリと、先程の目とは別の場所から目が開くと辺りを見回し、急にこちらを向いた。
目が合っちゃった。
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