第190話 悪魔の情報整理

悪魔、魔族、魔のモノ、混沌から来たモノ、深淵のモノ。これらは全て同じものだ。呼び名は違えど、意味は同じ。


「コッチが師匠から聞いた話では、もう一つの世界の住人らしい。ただ、そんなこと言われても理解ができる訳じゃないし、地面の裂け目から這い出てくるから、地面の底にある混沌、地獄から来た化け物とされているんよ」


「マヌムンも、元々は人に悪さをするヤツって意味で付けられてるしな。此処らの地域からはマモノと呼ぶらしいけど、意味は同じって言うし」


本来、魔物は地の底から這い出てきたモノのみに使う言葉だったのが、魔力が淀む洞窟などで変異して魔物の様になった魔獣が増え、一目見たくらいでは見分けがつかなくなってしまっているので、通常の獣とは違うモノは全て魔物と言われている。


駿馬も朱麗馬だって、元々は普通の馬だったのが、魔力の影響を受けて体が少しずつ変化したものだという説もある。


勿論人間もだ。

魔術師や魔法使い等の魔力を使いこなすやつらが現れている。元々無かった魔力に適応していってるからな。


そのなかでも特に力が強くて頭のおかしい連中は何かしらの実験を繰り返し行っているらしいが、その筋に詳しくないので知らない。が、ザラキの“とても為になる話”のなかで出てきた不老の研究をしているアホ共がいるというのを思い出した。


多分賢者の石とか作ろうとかしてるんじゃないかな。


「その悪魔達はみんな魔法使いだと思った方がいい。それも詠唱無しで繰り返し発動してくる質が悪いの。前戦った悪魔、…あのタコのやつ名前何だっけ」


「……エ、ちがう。レエー?だったっけ?」


「それ。そのレエーみたいに複数の属性を持っているやつは珍しくない。しかも人よりも身体能力が高く、そこそこ頑丈。簡単に言えば魔法が使える獣人ガラージャってところよ」


「うわぁ、超厄介」


まさに鬼に金棒。

あのレエーも、多勢だったからこそ退けられたけど、一人だったら間違いなくあの骨の山の仲間入りを果たしていただろう。


「でも奴らは二度に渡ってこちらの人種に負けた。何でだと思う?」


「勇者がいたからじゃ?」


「前の戦争は世界中でほぼ同時に起こったんだぞ。勇者だけじゃ無理さ」


と、アウソ。


同時多発的だったのか。恐いな。


「そこで人種は世界連合軍を立ち上げ、それまで活躍の場が無かった魔術師達と連携して巨大な連絡網を立ち上げて波状攻撃で抵抗。勇者は戦場に意識がいっている好きにあちらの世界へと侵入し、手薄になっていた本部を壊滅させたんよ。あいつらは力任せに攻撃してくるから頭を使わない。だからこっちは頭を使って連携して退けられた」


「ほぉ、凄いな」


ちらりと隣のネコを見た。

しかしネコはやはり記憶がないみたいな顔で普通に話を聞いていた。


「まぁ、初代は戦闘能力おかしかったし先陣切ってた話だけど。勇者といっても二人とも持ってた能力は違ったから、何も無理して先陣切ろうとしなくても大丈夫。むしろコッチは手薄なところから一気に叩いた方が有効だと思ってる」


「だからアタシが毎回陽動で突っ込んでるのよ。動きやすいでしょ?」


「めっちゃ動きやすいです」


何で戦闘始まるとキリコが毎回先制攻撃仕掛けにいくのかと思っていたらそう言うことだったのか。


「で、今回のこのエルトゥフ達の争いが起きている所と亀裂の位置なんだけどね」


カリアが長老から借りた地図を広げ、印を書き込んだ地図、そしてスマホの地図を照らし合わせた結果。争いが起きている場所の奥、丁度悪魔達が駐屯地にしていると思わしき所に亀裂があった。


「また厄介なところに」


キリコが腕を組ながら言う。


「これ、突っ切っていくの?」


それにカリア。


「とりあえず、明日の朝、その場所を見せてもらってから決めようと思う。地形や相手の戦い方によって立ち回りも変わるから。でも、“無茶せず自分の出来ることを全力で行い亀裂を塞ぐ事”これは変わらずよ」


頷く。

まずは情報を集めないとな。

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