第163話 迷宮へようこそ~一方その頃①~
取り合えず上を目指すつもりで歩いているのだが、階段らしきものも、坂道らしいものも見付からない。
「やっぱり逆だったのかな……」
かといって引き返して蜘蛛に遭遇したくはない。
もう少し歩いてから決めようと、三人と一匹の無事を祈りながら歩いていった。
ーーキリコsideーー
砂に飲み込まれたキリコは、突然縦穴に放り出された。
「!?」
足元に地面はない。しかも相当深いらしく下が見えない。
すぐさま体が重力に従って落下を始めた瞬間、キリコはすぐさま近くの壁に目星をつけ、ロープ付きの短剣を取り出すと、それを全力で壁に向かって投げた。
短剣が壁に深々と突き刺さり、ロープが張る。
キリコは落下を防げたが、その代わりロープの遠心力によって壁に向かって速度を上げて近付いていく。
このままだと壁に叩き付けられる。
キリコはクルリと器用に体制を変え、壁に足を向ける。
そしてぶつかる寸前、両足で叩き付けられる筈の衝撃とほぼ同じ威力の蹴りを壁に放ち、威力を相殺。
そしてそのまま壁へと着地した。
「うあー、久々に焦った」
まさか危険ランクA-指定のヴィーゥが現れるなんて。
アレは別名迷宮の惑わせ鳥。
土と重力、そして音の魔法を巧みに使い迷宮内を部分的に砂へと変えて、重力操作で獲物を引き摺り込んでは変なところに放り出す。
悪戯好きの厄介な
「しばらく潜ってなかったから忘れてたわ」
ロープを使って縦穴をよじ登る。
さて、取り合えず何処かしらには通路に出られる穴があるはずだから、まず上まで登りきろうとキリコが顔を上げ、とあるものを見付けた。
上の方から、何かが降って来ていた。
「……これは、ちょっとやばい」
大蜘蛛だった。
キリコはすぐさまロープを掴んだまま壁を横に走った。
ロープの範囲内しか動けないが、それでもいい。
ロープギリギリまで駆け抜けると、すぐさま壁に短剣を突き刺して体を固定する。
そのキリコのすぐ横を大蜘蛛が落ちていった。
「全く、迷宮ってこういうのが多いのよね」
でも、と、キリコはロープを手繰り寄せ、横移動をしながら笑みを浮かべた。
大蜘蛛が落ちてきたと言うことは、上の方に落ちてくることができる通路があるということ。
キリコは久し振りの迷宮のワクワク感に浸りながら壁を登っていった。
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