第140話 帆船
「危なかった、駿馬のことばっかり考えてたからネコの事忘れてた」
『今度やったら首に咬みつくからな』
先程船の手続きを終えたのだが、危うく猫の事を言い忘れるところだった。褐色肌の綺麗なルキオの美女職員さんに以上ですか?と言われ、そのまま以上ですと言いかけたところでネコが耳元で怒ったように鳴いたので思い出した。
「アウソも教えてくれよー」
「いや実は俺も忘れていたばーて」
『ハアン!?』
「ごめんよ、後で肉あげるからそんなに怒るなし」
『なら許す!』
許すと言いながらも、ふんふんと鼻息荒いままネコはフードの中に丸まって不貞腐れた。
オレも後で肉あげよう。
船の搭乗券である証明書を鞄の奥に仕舞い、確りと背負う。緩く背負うと物取りに狙われるからな。
「さーてと、んじゃ船見に行こうぜ!」
「行こう行こう!!」
手続き所から少し行くと、白い畳まれた帆が見えてきた。そして港に着くと、その大きさに驚いた。
あいにく帆は畳まれてはいたが、想像していたよりも大きい。船は青と白に塗られていて、所々に角が生えた蛇の装飾がされていた。
「おいネコ起きろ、すげーぞ」
『おおお!山みたい!』
「明日これに乗って行くんだ。帆を張るともっと格好いいんだぜ!」
アウソが誇らしげに胸を張った。
「ちなみにこれは国を行き来するだけだからそんな綺麗な感じだけど、南の方の船は更に二倍はでかくて、赤と黒と黄色に塗られていて獅子の顔が付いてる」
「そっちも見てみたかったな」
さぞや格好いいんだろう。
十分に船を眺めて、スマホで隠し撮りをしてから、あらかじめカリア達と落ち合う店へ向かった。
今日はラーメンとうどんの間のような食べ物、スバを食べるらしい。
楽しみだ。
翌日。
絶対に吐くからと朝御飯を抜かされた。
「吐くの?」
「アタシ達は慣れてるけど、それでも風の機嫌によるからね」
「揺れに慣れてるアウソだって一応抜くから。万が一よ」
「そうですか…」
昨日もっとスバおかわりしておけば良かったな。あれはとても美味しかった。
「じゃあ券は預かっておくから、くれぐれも知らない人と目を合わせないこと。じゃあ出発」
目を合わせるとロックオンされる。
いまだにこの文化だけは慣れないなぁー。
帆が視界一杯に大きく膨らんでいた。大きな三角と四角が合わさった帆がたくさん立ち並び、出港を今か今かと待ち望んでいるようにも見えた。
「はい、絶対に無くさないように」
「了解です」
灰馬の綱を片手に、ネコをフードに、そして券はもう方手ごとポケットに突っ込む。よし!
駿馬がいるので、人だけの階段とは別のスロープへと向かう。職員に券を見せて馬の積み込み。
番号が書かれた柵に駿馬を入れる。
良かった。みんな隣同士だ。
そして階段を上がって、また券を見せると鍵をくれた。聞いてくれ、なんと個室なんです。
ビックリです。
「さあって、部屋に行って荷物おろしてこなきゃ」
地図に従い部屋に着くと、広いとは言いがたいが、足を伸ばして寝られるベッドが用意されていた。感激した。旅先でこんな広々と寝ることができるなんて。(ザラキ家除く)
「俺荷物置いたら上あがるけど、どーする?」
「オレも行く」
荷物を下ろして鍵をしっかり締めたら、甲板へと向かった。
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