第136話 原因は不明なまま
紅破の葉で作ったお茶は体内魔力の調整をしてくれるらしい。
「うええええ、にげえええ……」
しかし良薬は口に苦し。
それを体現したかのような味だった。
「文句いうなよ」
「ごめん」
何となく朝から貧血のような感じで体の調子が良くなかったのでアウソに相談したら、これを飲めと渡された。恐らくグレイダンの中にあった黒い魔力を反転したときに、あまりにも量が多かったからそれに引っ張られて体内魔力が乱されたか、または反転時に大量に魔力を消費したから魔力欠乏状態なんじゃないかと言われた。
もっとも、今回は医者もおらず、魔力に詳しいのがいないから推測でしかないが。
「ちゃんと乾燥させたら苦味が消えて飲みやすくなるんよ。まぁキチンと乾かそうと思ったらジュノでは難しいね、何せ毎日雨も霧も出るし」
「……。なんて乾物に向いていない国なんだ」
乾燥しない。
ずっとしっとり。
「ネコも飲めば?」
『ことわる!』
オレと同じく怠そうにしているネコに紅破茶をすすめたら断られた。
「キリコは?まだ帰ってないの?」
「ないですね」
「あの子があんなに頭使うなんて、心配よ」
(これ、カリアさんキリコさんの事頭の弱い子認定していると認識して良いのかな)
チビチビお茶を飲んでいると、厠(かわや)に出掛けていたグレイダンが戻ってきて、急須(きゅうす)に入った紅破茶をまた飲み始めた。飲みすぎじゃないか?
「苦くないんですか?」
ぐびぐびと紅破茶を飲み干すグレイダンに訊くと、キョトンとした顔をして、コップの中のお茶を見た。
「え?美味いじゃないか!」
この
遅めの昼御飯を食べているとトルテとキリコが戻ってきた。
「ただいまー。あれ?うわまたそれ飲んでる」
キリコがグレイダンの持っているお茶を見てそう言った。
「お前も飲むか?」
「嫌よ、それの臭い好きじゃない」
「そうか!じゃあ仕方ない!」
「正直、私も好きない」
「すまん!!」
トルテも嫌そうだ。鼻を押さえている。
水出ししたのは臭いがなかったのに、熱湯だとハーブ茶に似た臭いが出るからな、好き嫌いが分かれるだろう。
しかしグレイダンは謝りながらもまたお茶を入れた。何杯目だよそれ。いい加減お腹壊すぞ。
「それで?キリコは何か見付けたの?」
「ううん。何か原因があれば良かったんだけど、何も残ってなかったわよ」
昨日、オレが疲れて爆睡したあと、大変だったらしい。
まず竜に水出しした紅破茶を飲ませたら、グレイダンは黒い粘り毛のある塊を吐き出した。それは動き出して近くにいたトルテに襲い掛かったのだが、トルテが驚きと、驚かされた怒りで黒いネバネバに紅破茶が入った入れ物をぶつけた。
入れ物から紅破茶が溢れて掛かる。すると黒いネバネバは白い煙を上げながらドロリと溶けて苔の間に流れていってしまったらしい。
訳が分からないままグレイダンに紅破茶を飲まし続け、呼吸が落ち着いてくると人の形に変わり自分で飲み始めた。
そのうち顔色が良くなってきて、グレイダンはごろりと横になるとそのまま寝てしまったらしい。流石にそのまま放置するのは良くないので、服を着せて運んで来たという。
キリコはその黒いネバネバの正体を探るために出掛けたのだが、何も無かった。
ついでに言えば、なんでああなったのかとグレイダンに訊ねるが。
「己も知らん!!」
と言われてしまった。
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