第135話 読み聞かせの主人公

翌日、長の家に角が生えた男が座りもぐもぐと果実と肉を頬張っていた。


髪は赤く、目は灰色をしていた。


それを見て、先程起きたばかりのオレは全く頭が回らず、山羊か何かの獣人かと思っていた。しかし、そうじゃないと分かったのはその男がこちらを見て目を輝かせた時だった。


「おお!!黒い友よ!!」


「うぐええええ!!?」


猛烈なハグで背骨が一斉に鳴った。


「君のお陰で体調は絶好調だ!!!既に他のものにはお礼を済ました後なのだが、君にもどうしてもお礼をしたいと思っていてな!!!」


「だ、だれですかぁーー!!」


「グレイダンだ!!そうか人の形を見せたのは初めてだったな!!!」


体を離してくれたとき、オレは膝から崩れ落ちそうになった。死にそうだった。カリアと同等か、それ以上の締め付けだった。


ていうか、こんなに暑苦しい人、人?竜だったのか。


服装が獣人達の民族衣装なのだが、まぁ似合うこと似合うこと。

山羊の獣人と言われても違和感無かったぞ。


ところで。


「カリアさん達は何処ですか?」


それには長が答えた。


「青い人と茶色い人は他の仲間達と紅破の葉を摘みに、赤い人は世界樹(フーリャシヤグ)へと出掛けていった」


「そうですか」


じゃあネコとお留守番だな。

まだあいつ寝てるけど。


「カリアというのは青い友の事だな!!せっかくだから君と話をしよう!!聞いたぞ!!凄く遠い場所から来たのであろう!?」


ちがう、グレイダンも一緒か。


「私も聞いてみたいな。日の沈む方の地ではなく、雷と共に生き、空の果てを進み、星にまで辿り着く魔術師がいる世界の話を」


長もだった。

しかしアウソのやつ。説明するならちゃんと分かりやすく説明しないと、電気が雷になって、しかもなんかかっこよく改変されちゃっているぞ。


二人して目を輝かせ、まだかまだかと目の前には座られては断る訳にはいかない。


仕方がない。

せっかくだし仲を深める良い機会だ。


まだ山のように積み上げられた果実をお菓子代わりに真ん中に置き、オレは元いた世界の話をし始めた。









お昼過ぎ、カリアとアウソが帰ってきて目にしたのは、何かの物語を話すライハを中心にして子供の獣人達とグレイダンが取り囲み、長がそれを翻訳して聞かせるという光景だった。

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