第121話 寿埜国
ドーンと目の前に聳え立っている真っ赤な門。門の上の方に文字が書いてあるが、読めない。鉤爪で切り込みを入れたのかなっていう感想が出てくるくらい荒々しい文字だ。
門の方は、見た感じ鳥居にも見えなくはないが、上に屋根みたいなものが付いている。日本の神社と中国の門が融合したような、そんな門だった。
その門が岩の壁に綺麗に嵌め込まれた感じで建っている。どうやって建てたんだろう。
「あれ何て書いてあるの?」
「これより古(いにしえ)の地、寿埜(ジュノ)って書かれてる」
「ジュノ」
この世界は皆何かしらの獣人を先祖に持っているらしい。これは初めの巨人、ラ・クーが聖なる獣で、ラ・クーが産み出した子等が古の獣人(ガラージャ)と言われている。早い話がこの世界の人間は獣人が進化した新しい生物で、獣人(ガラージャ)が古い生物って事らしい。
ちなみにルキオは蛇や蜥蜴とかの鱗を持つ一族を祖としているらしい。で、カリアの出身地ロッソ・ウォルタリカや、同じく巨人の地と言われているロッソ・ローデアは頑丈な一族、熊を祖にしている。そしてキリコはカリアとは違う頑丈な一族、竜を祖にしている。
この説明を受けて、シルカで
本来なら御先祖として敬(うやま)われてもいいはずなのに下に見られるという現状なのは、獣人(ガラージャ)は大昔の人種、進化出来なかった劣等人種と考えている人が多数おり差別を受けているらしい。あとは魔法が使えないからとか。ぶっちゃけオレから言わせたら獣人(ガラージャ)の方が身体能力とか凄いけどな。魔法とか使えないけど、それは人間も大多数がそうだし。
ルキオは獣人(ガラージャ)と共存関係らしく、人拐いとかの問題もあるから行き来できるのはごく少数だけどちゃんと交流がある。
そして己を忘れないようにと国境に門を建て、獣人(ガラージャ)が本来の姿として暮らしていけるよう世界から切り離した土地として残している。ルキオはそれを他国に隠すようにしてるので、とりあえずまだ人拐いの問題は起きていないらしい。
「お待ちしていました」
声がして、何処から聞こえたのか探すと屋根付近の窓から人影が顔を覗かせている。
「今そちらへ向かいます」
その人は窓から軽く跳び、そのまま柱の装飾に紛れた突起を利用して降りてきた。
綺麗な女性だった。ただし頬、首筋、腕や脚には鱗、そして先にいくにつれて色がエメラルドグリーンになっている蜥蜴の尻尾が生えている。
どうやら蜥蜴の獣人(ガラージャ)らしい。爬虫類も獣人(ガラージャ)に含まれるのは些か不思議な感じだが、アウソの先祖は恐らくこんな感じなのだろう。
民族衣装姿の女性が右手の甲をカリアに突き出す。それをカリアは手に取り顔を近付け、今度はカリアが女性に同じ事をする。
敵意はないと言う獣人(ガラージャ)同士の本来の挨拶らしい。
臭いを嗅がせて自分の事を教えているんだとか。
オレ達もそれに習い挨拶を済ませると、ようやく女性が自己紹介を始める。
「わたしは門の番人エムウラと申します。カリアさん達の事は山の守人ザラキから聞いています。仲間にも知らせていますので、どうぞお通りください。ジュノの言葉を交わせる方は居(お)りますか?」
「はい」
アウソが手を上げる。
お前すげーな。
「共通語を話せる者が少ないので、迷子にならないようお気をつけください。案内役はジュノの門にて待たせてあります」
エムウラが門の扉を開ける。
ここから先は駿馬を使ってはならないと言う事なので、駿馬四頭をエムウラへ預ける。灰馬が凄く不満げな顔をしていたが、規則なんだ、すまんな。
扉を潜ると岩の壁が奥まで続いていた。
ジュノはその先だ。
『良い匂い』
「だな」
ネコが早速鼻をヒクヒクさせて空気の匂いを嗅いでいる。オレも真似て嗅いでみると空気がどことなく甘い。
「アウソ、頼んだよ」
「アタシ達じゃさっぱりだからね」
「超久しぶりだから喋れるか心配…」
「頑張れ君なら出来るさ」
心配で胸を押さえるアウソを三人で元気つける。大丈夫だ、全く喋れない&分からないのが三人もいるから、片言でも通じれば何とかなる。
何とかならなかったらボディーランゲージで何とかするしかないがな。
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