第116話 カリア達帰還
「あれ?ライハは?」
帰ってくるとライハの姿がなかった。
アウソは庭を見渡しながら探すが見当たらない。
「ん?ああ、もうすぐ戻ってくるんじゃねーの?」
何処にいるのかと訊ねたら、ザラキがカリアが買ってきたお土産を物色しながら言う。主に酒をだ。
「もしかして昔師匠にやられたやつやってるの?」
「あいつに合ってた。凄い成長してるぞ」
「……」
「アウソ、これ持っていて。荷物おいてくる」
キリコに馬の手綱を渡された。
居ないのなら仕方がない。待っている間駿馬に水を飲ましにいこうとカリアとキリコの駿馬も連れて裏に行くと、突然山から何かが飛び出てきた。
初めはザラキの部下の獣かと思った。だが、アウソは飛び出してきたものをみて驚いた。空中で身を捻りながら飛び出してきた奴はアウソのよく知る人物で。
「ちょっ!そこ退いて!!」
「へ? !! うわああ!?」
ライハが今までアウソが居た箇所に着地をした。
「ごめん!大丈夫か!?」
焦るライハ。その姿はほんの二週間前よりも何故か逞しく見えた。
『ライハ確認しなさすぎ』
「ちがうし、ちょっと余所見してただけだし」
そして茂みの間を縫ってネコが山から降りてきた。アウソはまた驚いた。ネコの姿が少し変わっていたのだ。少し大きくなり、どことなくしゅっとした体格になっていて尾は蛇のように長い。
そして何より驚いたのが。
「おい、ネコがフツーに喋っているぞ!」
「え?」
『ん?』
普通に喋っていた事だ。
カリアとキリコが驚いた顔をしていた。
カリアは尻尾を通じて会話をしていたから少しの驚きで済んでいるが、アウソとキリコの驚きようが面白かった。
「そういえば、ザラキさん。途中でネコと普通に会話してましたね。どこら辺からこいつ声出てました?」
オレは常にネコの声が聞こえていたから分からない。でもよくよく思い出してみたらザラキは途中からネコとの会話が成立していたようにも思う。
「さぁ、いつだったか?」
『覚えてなーい!』
そういえば、ネコもずいぶん滑らかに話すようになった。
毎日ずっと喋ったからか。上達したんだな。
「ずいぶん臭いが濃くなったわね、魔力が安定したの?」
キリコがまじまじと見詰める。
キリコは臭いで魔力を関知する。魔力の臭い濃くなったと言われ、嬉しくなった。頑張りましたからね。
「どこまで鍛えたよ?」
「いけるところまで。凄いぞこいつは、鍛えていて楽しくなったほどだ!」
「へぇ!これは披露してもらうのが楽しみよ!!」
「魔力の修行してたんだろ!?なんの技が出来るようになったば!?」
アウソが目をキラキラさせて訊いてくる。
アウソは魔法が使えない。ちょっとだけアウソを驚かせてやろうとザラキな見せていいかと目配せすると許可が降りたので見せることにした。
「見てろよ!こんなことが出来るようになったぜ!」
少し皆から離れて両手を合わせる。そして大きく広げた。
バチバチと腕から腕に走る雷を自在に操って見せる。腕に纏い、体の周りで放電させたり、あとは弓を引く真似をして空に向かって射ると、細い雷が空に飛んでいった。
「たーまやー!」
最近魔法を使うのが楽しい。
ありがとう異世界。ありがとう魔法。
「すっげええええ!!ライハすげーさ!!」
アウソが興奮している。やめろよテンション上がるじゃねえか。
凄いね、とカリアが声を漏らした。
「色々大変だったがな。一回魔法が暴発して死にかけた」
「あんたみたいね」
「はっはっは!あったなそんな事」
懐かしいな、とザラキが言いながら水を飲んだ。
キリコがじっとライハを見ているのが気になって訊ねたら。
「どうしたの?」
「魔力とは違う臭いが強い。なにこれ」
「秘密奥義だ。楽しみにしろよ、この二週間ちょいでライハはだいぶ使い物になったぞ。立ち回りもな」
「へぇ!」
「ほう、それは楽しみよ」
フフフフとカリアとキリコが楽しげに笑う。その気配を察してかライハの背筋に鳥肌が立った。
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