第113話 望んでいたもの
夕方ごろにようやく雨が上がり、雲の切れ間にオレンジ色の空が見えるようになった。
「もう少し早めに上がると思ったんだがな。これじゃあ登れないじゃないか」
予想よりも強く、そして長い間降っていたので土のぬかるみが酷く登れなくなっていた。
「まぁいい。山頂でやる実験は明日にして、この庭で出来る実験(もの)をしよう」
「何をするんですか?」
「まずは目の機能を重ねて使えるかを確かめる」
ザラキの言うことはこうだ。
純粋な魔力を見る目や流れを見る目を一つのレイヤー的なものとして考え、いちいち状態に合わせて機能を変えていれば無駄な時間を使うと言うことで、全て重ねて一つにすることが出来ないかというもの。
(確かに便利だな)
ちなみに室内に籠っているときに三つ目の機能が判明した。これは色付の魔力を見るためのものだった。三つ目と四つ目は切替が楽だったが、一つ目二つ目は最近見えるようになったからか切替が疲れる。オレ的にはザラキの様に流れのと、魔力のとを纏めた方が楽な感じがしたので、ちょっとザラキと相談しながらやってみた。
「……うーん」
ザラキに魔力を纏って作業をしてもらいながら調整し、何とか一つ目と三つ目四つ目を重ねることに成功した。
だが。
「粒子が気になる」
気分的には砂嵐がずっと縦横無尽に飛んでいる感覚。
「薄く出来ないか?」
「やってみます」
頑張ってみたが、ハッキリ見える方にピントが合ってしまったようで、薄くしてもすぐに濃い方に戻ってしまった。
「練習が必要だな」
「そうですね」
しょうがないので、薄くできるまで一つ目を独立させることにした。
「ネコはどうだ?頑張ってるか?」
『どうだろう、形変わってる?』
「何になろうとしているんだ?」
『でっかいネコ』
「まだ大きさも変わってないな」
『んむうー』
ネコはネコで魔力が完全に安定したので、今度は自由に形を変えられないかの修行をしている。元々形を持ってないので、猫以外に成れたら出来ることが増えると言われ頑張っているが、感覚が掴めないのか苦戦中た。形を変えると言えば影に消えたりは出来るのに、何が違うのだろう。
ピント合わせは長くやっていると目が痛くなってくるので、目を休める間別の実験をしてみることにした。
「ふおおおお、この時を待っていた!」
そうです。ちゃんとした魔法を発動させる実験です。
オレの魔力がネコの形維持の負担分が無くなり、更に純粋な魔力吸収成功によって人並みの量になったはずなので、少なすぎて外に出すことが出来なかった魔力を使って魔法を発動させてみることにしたのだ。もちろん、今まで少ない量でも頑張ってきたからそれなりの威力になると思っている。出来るならば、普通にバリバリと腕に電気を纏えるだけでも嬉しい。
一応どのくらいの威力になるのかわからないのでザラキ立ち会いのもと、オレはワクワクする気持ちを押さえ呼吸で集中力を上げていった。
体を熱いものが駆け巡る。
「いきます!」
「おう」
オレは手を突き出し大きく息を吸った。
「ぬーやが!?いえー!!山の守人の家に雷が落ちよったどー!!」
その日、山の麓にある村で山の守人の住んでいる家に大きな雷が落ちたらしいと言う噂が広まった。
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