第39話 レッツ、大掃除!

 翌日、土曜日。朝の七時から大掃除が始まる。問題となるのは、ねこさんの居住スペースであるマンションの設置場所。そしてエアコン。粗相されたカーペットをどうするか、布団のダニ対策。誤飲の原因となりかねない危険物の撤収。お気に入りのもふもふ毛布の洗濯もしなければならない。


 特にマンションの設置場所はかなりの問題だった。はじめに設置するときには、いつでも近くで様子を見ることができるようにと、テレビの向かい側であり、ぼくの座椅子の真横であり、エアコンの対面である場所に設置したからだ。設置した当初は、夏生まれのこねこがエアコンNGだということを知らなかったのもあり、涼しいところのほうがいいだろうと、エアコンの対面にバッチリハマりこむ形で建ててしまったのだ。しかし、そうなると、今の状態のねこさんには寒すぎることになる。


 肺炎は完治したとは言われていない。寒さによって、風邪がぶり返し、病院まっしぐらなんてことは絶対に避けねばならない。となると、マンションは移動確定なのである。


 しかし、このマンション。思ったよりもでかいのだ。スリムタイプではないため、幅もそこそこある。解体して、もう一度設置するのは、ぼくの虚弱ボディーでは荷が重い。ならば、解体せずにそのまま移動すればいいが、そうなれば、そこそこ幅があり、高さのあるものが移動できる動線の確保が優先される。

 さらに言えば、フローリングである。床板を引きずれば傷になってしまう。それも避けたい。


 そこで居間のテーブルを隣の和室へ移動させ、薄手の洗濯可能なカーペットは洗濯機行き。設置予定場所の荷物も和室へ移動し、掃除機をかけた上で水拭きした。ワックスもかけてしまおうか悩んだが、乾かす時間はないため断念。マンション内のねこさんのトイレ、水受け、爪研ぎ、カプセルホテル等のグッズをすべてとり出し、軽くなったものを持ち上げて、テレビの隣であり、ひなさんのケージ横である場所に並んで配置する。エアコンの近くだけれど、真下、向かいではなくなったから、冷気が体温を奪うこともないだろう。


 次の問題はエアコンである。夏冬フル活動のエアコンを開けるのは、非常に怖かった。しばらく、きちんとしたフィルター掃除をしていなかったからだ。そして、恐る恐るエアコンの上蓋を開けて、しみじみ思う。


 そりゃ、悪くなるわな。


 フィルターは埃で覆われていた。何年もプロにお掃除してもらっていないし、室外機も埃で覆われている。自力でできることはやり、シーズンオフにはプロに洗浄を頼んだ方がいいだろうなと実感する。しかしながら、こんな状態でも健康でいられる我が身が不思議でならない。猫は肺の機能が弱いことを知っていたならば、こんな大事にはならなかったのかもしれないと、己の無知さを呪ってしまう。


 さて、エアコンクリーン大作戦の展開中に、布団の乾燥と洗濯を行う。春用のカーペットは夏用のい草のものに替え、シーツ、カバー、毛布も洗う。洗濯機は三回は回していたと思うし、洗濯物は干す場所に困るほどに膨らんでいたとも思う。


 結局、すべての片付けが終わるまでに三時間を要したのだが、普段からきちんと片付けができていれば、こんなことにはならないのにと、本当に心底、普段のだらけた生活を反省するばかりだった。


 とはいえ、あくまでこれは一泊二日の仮退院のために頑張ったことである。今後、彼が常にいる状態になったならば、普段から徹底して、きれいで過ごしやすく、危険物のない居室空間でいなければならない。


 危険物を排除しなければ、誤飲、誤食、怪我のもとになりかねない。実際、ぼくは過去、これで何度か痛い目を見ている。実家の小犬にケーキのセロハンを食べられたとか、ひなさん(子犬時代)が水銀体温計を噛んで、水銀を飲み込んでしまったとか。その度に獣医さんに駆け込み、吐かせて、なんとか大事にはならずに済んだが、できるならば、こんな事態には二度と遭遇したくないのである。


 掃除嫌いなぼくからすれば、これらは大いなる課題であるが、これも神のおぼし召しなのかもしれない。


 普段の生活を改めよ。


 という……


 大掃除を終え、きれいになった部屋でひなさんとまったり昼寝をし、午後の診察時間すぐにねこさんを迎えに行った。意気揚々と空っぽになっていたカプセルホテルを持って。


 楽しい一晩を想像して迎えた仮退院。それは、ぼくの想像を軽々と飛び越えるほどの喜びをもたらした、思い出深き日となったのだった。




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