思ひきやつちさへ裂くるみなづきの日の照るなかにマスクせむとは

【読み】

 おもひきやつちさへさくるみなづきのひのてるなかにマスクせむとは


【語釈】

 思ひきや――①……と思ったところが意外にも。②……と思っただろうか、思いもしなかった。[参考:デジタル大辞泉]

 みなづき(水無月)――旧暦六月の異称。新暦の7月頃。


【大意】

 思ってもみただろうか。大地さえ裂ける水無月の日差しの照るなかでマスクをすることになろうとは。


【附記】

 万葉集の作者不明歌の本歌取りである。


【例歌】

 六月みなづきつちさへけて照る日にもわが袖めや君に逢はずして 作者不詳


 放たれし悲哀のごとく野に走り林にはしる七月のかぜ 若山牧水


【例句】

 六月や水行く底の石青き 信徳しんとく

 雪の河豚ふぐ左勝ひだりかち水無月の鯉 芭蕉

 水無月や鯛はあれども塩鯨 同

 六月や峯に雲置くあらし山 同

 六月やほたやく里の郭公ほととぎす 朱拙しゅせつ

 水無月の汗を離るる仏かな 鬼貫おにつら

 六月や沖に煮ママたる浪の草 野坡やば

 六月の峯に雪見る枕かな 支考しこう

 六月の空もかなしき恋路かな 旦藁たんこう

 六月や雲の中なる淡路島 仙化せんか

 六月や氷つきわる山近し 北枝ほくし

 水無月を際だつ雲の高嶺かな 霊椿

 骨髄に青水無月の芭蕉かな 蓼太りょうた

 六月の氷もとどく都かな 同

 温泉でゆあれど六月寒き深山みやま哉 闌更らんこう

 水無月の限りを風の吹く夜かな 同

 水無月の朝顔すずし朝の月 樗良ちょら

 天六月たみのなみだに曇るべし 同

 六月の埋火うづみびひとつ静かなり 暁台きょうたい

 白滝や六月寒き水煙り 青蘿せいら

 新芋にまづ六月の月見かな 几董きとう

 戸口から青水無月の月夜哉 一茶

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