蝶になりはた蝶を追ふひとになりながき春日を遊び暮らすも

【読み】

 てふになりはたてふをおふひとになりながきはるひをあそびくらすも


【語釈】

 はた――さらにまた。あるいは。

 遊び暮らすも――遊び暮らすことである。「も」は感動・詠嘆の終助詞。


【大意】

 蝶になりはたまた蝶を追うひとになり、ながい春の日を遊び暮らすことである。


【附記】

「胡蝶の夢」の応用。


【例歌】

 この世にし楽しくあらばむ世には虫に鳥にも我はなりなむ 大伴旅人


【例句】

 酒くさき人にからまる胡蝶こてふかな 嵐雪らんせつ

 大はらや蝶のでて舞ふ朧月おぼろづき 丈草じょうそう

 蝶の舞面箱持のかはづかな 木導もくどう

 狸にも蝶にもならぬひるねかな 諷竹ふうちく

 てふてふや加茂の芝生にひもすがら 存義ぞんぎ

 蝶が身の人よりかなし春のくれ 樗良ちょら


 まん丸にいづれど永き春日哉 宗鑑そうかん

 春の日や日永の宿しゆくの霞酒 秀吉

 春の日の威光をみする雪間哉 重頼しげより

 春の日にいそがぬ蛇のあゆみ哉 尚白しょうはく

 長々として便なき春日かな 浪化ろうか

 つくづくと春の日脚や杖のふし 存義ぞんぎ

 春の日や午時も門掃く人心 太祇たいぎ

 薪尽て門を出れば春日哉 闌更らんこう

 春の日や鴎ねぶれる波の上 同

 橋長し人多しげに春日哉 同

 うちつれて汐木しほぎを拾ふ春日かな 暁台きょうたい

 鶤鶏たうまるのみだれ尾にひく春日かな 青蘿せいら

 春の日や暮れても見ゆる東山 一茶

 道芝におぼえてのびし春日かな 卓池たくち

 窓ひとつありとてくるる春日哉 李東りとう

 春の日や高くとまれる尾長鶏 村上鬼城

 垂れこめて古人を思ふ春日哉 正岡子規

 水底に魚の影さす春日哉 同

 砂浜に足跡長き春日かな 同

 春の日のくれなんとして豆にえぬ 室生犀星

 竹の風ひねもすさわぐ春日かな 同

 軒先に和布わかめ干したる春日かな 芥川龍之介

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます