第87話

『恐怖!!レッサーパンダが攻めて来た! 』の撮影が早速始まった。

魔女っ子との対戦の場は京都伏見大社。


何故伏見大社かと言うと紅葉で世界各国からの観光客が増えた伏見大社の千本鳥居からレッサーパンダ達がワラワラ現れて観光客達をダメ人間にするのが目的と清明さんのお母さんの葛の葉さんが狐さんの化身なので撮影許可を取るのが楽だった事もある。


しかし撮影開始前に問題が発生した。

京都駅ビル近くの果物屋さんのフルーツパーラーで清明さんとレッサーパンダ達と顔合わせした魔女っ子達がレッサーパンダの可愛さにやられてしまったのだ。


「やだー!チョさんて言うの?このレッサーパンダ!超ー可愛い♡震電母さんの所に連れて行って自慢する〜」

黒蜜おばば、黒こげパンダになるから止しなさいそれは・・・。

威嚇するレッサーパンダ達にメロメロの餡子さんとバーバ・ヤーガ、妹のシナモンまでがレッサーパンダの威嚇で挙げた両手を掴みクルクル回してる。

ダメだわこの人達・・・。

瘴気や怨霊でなく純粋に可愛いさにやられてメロメロになってるわねコレ。

店内でクルクルするシナモンを叱りお店の人に謝っているとこの店自慢のフルーツサンドとミックスジュースセットが出てきた。

清明さんお勧めのフルーツサンド。

皿に盛られたフルーツサンドを見たレッサーパンダ達はきちんと席に着きお手拭きで手を綺麗にし始める。

京都の人はこのフルーツサンドの美味しさを知っているのね。

清明さんも手を拭いて嬉しそうにしてる。

美味しい物に目が無い黒蜜おばばもレッサーパンダに倣いテーブルに着き手を拭いている。

バーバ・ヤーガとシナモンもサッと切り替わった美味いもの好き達の行動を見て席に着くと手を拭き始めた。

私も席に着き手を拭いて目の前に置かれたフルーツサンドをパクリ!

ふぁ〜何これ?

私が今まで食べて来たフルーツサンドは何だったの?次元が違うわコレ!!

はしたないけど両手で掴んで交互に口に運びパクパク食べてしまった。

ふ〜言葉が無いわ全く。

未知の美味しい物に出会うと夢中で食べてしまうわね。

メニューを見るとお持ち帰りがある!

時間が経ってシットリしたのも美味しそう店員さんにお持ち帰りを十個たのんで人郎さん達と夜にたべようっと。

後になったけどフルーツジュースも美味しい!

参ったわね京都・・・攻める場所がたくさんありそうね清明さんだけでなくチョさん達にもお勧めのお店聞いて見ようっと。

そんな事を考えていたらいつの間にか黒蜜おばばとチョさんが仲良くなって盛り上がっている。

清明さんもシナモンとバーバ・ヤーガが女学生みたいにキャアキャア言いながら友達になってるし。

ノリが軽すぎるぞあんた達。


チョさんから何かを聞いていた黒蜜おばばが急に言った。

「皆んな!レッサーパンダ達と親睦を深める為にこれから京都タワー地下にある温泉に入りに行くわよ!」

なんじゃそりゃ?でも温泉か良いわねぇ。

私は支払いを済ませフルーツサンドは後ほど取りに来ると言って温泉に向かって出て行く十数匹のレッサーパンダと黒蜜おばば達を追った。


街中を一列に歩くレッサーパンダ達とその後を歩く見た目だけ可愛い魔女三人と爽やかロン毛のイケメン清明さん中々目を引く構図ね。

清明さんの後ろに付いた私は道行く人々に愛想笑いを振りまいた。

京都タワーの地下の温泉、清明さんがレッサーパンダに付いて女湯に入ろうとしたのを叩き出し入り口でハンドタオルを買いレンタルのバスタオルを借りて中に入る。

レッサーパンダと餡子さんは子供料金だった。

レッサーパンダ達はバスタオル人数分要らないわよね?


洗い場でレッサーパンダ達は洗面器で湯を被ると備え付けのボディーソープを体に纏い泡だらけになって黒蜜おばばや私に襲いかかる。

威嚇のポーズのまま背中にピタっと張り付きワシャワシャと体で泡立てて洗ってくれる。

これが彼らにとって親睦を深めることなのかしら?

ふふっ、少しくつぐったいけど気持ち良い。


お返しに私もレッサーパンダの体をワシャワシャ。

それからお湯を頭から被って泡を流して皆んなで温泉にどっぽん。

ふう〜生き返るわ〜。

温泉に浸かるレッサーパンダ達をよく見るとだいぶ瘴気が薄れてる。

これで撮影で暴れたらスッキリするんじゃあ無いかしら?


すると黒蜜おばばが近づいて来て私に耳打ちした。

「蜜や、チョさんはもう妖怪の類いになっているよ。本来なら清明さんが退治しなければいけないレベルだと思うんだけども・・・あそこまで言葉が理解出来て美味しい店や温泉を知っている知識があれば後天的だけど契約魔法を掛ければ使い魔に成ると思うんだ。チョさん以外のレッサーパンダはチョさんに隷属する眷属になると思うんだけど。撮影の最後のシーンでチョさんを蜜の使い魔にしてみないかい?」

えっ?使い魔の私の使い魔?

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