第62話
別荘の重厚な扉を開けて入って来たのは金髪のチャラいジャケットを着た二十代中場の若者。
中にいた私達を見て目を輝かせて嬉しそうに汚い言葉を吐いた。
「うおお!綺麗所が上から下まで選び放題じゃあないか!大魔術をぶっ放して追い出してやろうかと思っていたが気が変わった!今夜は取っ替え引っ換えで全員可愛がってやるぜ。この大魔導師、賀茂陣内様がな。大魔導師中の大魔導師を見てびっくりして声も出ないか?それが普通だよ。滅多に本物の大魔導師なんてお目にかかれないからなぁ」
ドヤ顔で言う若者。
「ねぇ、蜜子ばぁ。賀茂って京都の陰陽道の?」
たるとちゃんが人差し指を頰に当てながら可愛く聞く。
「そうだよ。安倍に並ぶ陰陽道の大家の賀茂だよよく勉強してるね」
「んー、ママから受けたあのズドンと来る奴で頭に入った知識にあったよ。でも私最近までイギリスにいたから日本の事に疎いから」
「へぇー金髪の外人さん日本の陰陽道に興味があるんだ。俺が今夜、ベッドの中で詳しく教えてあげるよ」
金髪の若者が卑下た笑いをしながら、たるとちゃんを上から下まで舐め回す様に見る。
カミーラお婆様の眼が赤く光り、紅さんの爪が伸びた。
部屋が青白くなり空気が帯電し始めているのに金髪の若者は気が付いていない。
この状況で何も気が付かないのは一種の才能だろう。
「でも金髪の君は後で相手をしてあげよう。それと年齢不詳の黒いワンピースの人と薄黄色いチャイナドレスのオバサンは俺の守備範囲外だから部屋から出て行って良いよ。それと真っ白な宝塚の男役も」
シッシと手であっちに行けとやっている。
部屋の中でキーンと音が鳴り空気中の電圧が高まる。
「んー誰を一番最初にしようかな。こんな機会で無いと味わえ無さそうな小学生見たいな君とオカッパのセーラー服の女の子から味見してあげようか・・・」
「年齢不詳で悪かったなぁ」
「オバサンで悪かったなぁ」
「宝塚の男役で悪かったなぁ」
黒田一家と白竜さんから雷が放出された。
『ズドドドン!バリバリ!』
白い光りと共に雷の落ちる音がした。
光りと音が止んだ後にはオゾン臭が。
金髪の若者は何も残さず消えていた・・・。
しばらくすると執事の宮川さんがノックと共に部屋に入って来る。
「カミーラ奥様、先程私ネズミをこちらの部屋にに逃してしまいましたが何かご不快になるなる様なご迷惑をお掛けしてしまった様で大変申し訳ありません」
深々と頭を下げる宮川さん。
「いや、大した事は無いそれより宮川は怪我は無いか?」
「私の身体を気遣って頂き誠にありがとうございます。御心配には及びません。何せ私既に死んで久しくありますから。廊下に置いてある花瓶が落ちて割れた位ですのでメイドが既に片付けております。」
「宮川、ちと力加減を間違えてな先程のネズミ。跡形も無く消え去ってしまったが。ネズミ故にこのまま気にし無いで良いかな?」
「はい、奥様、あのネズミはこちらの分家と言えども名ばかりで大した力も無いのに大魔導師などと嘯く痴れ者でして。京都の賀茂とも遥か昔に分かれた家の者、あちらも迷惑していました。しかし奥様、名ばかりとは言え陰陽道の家名を名乗る者でしたので黒田の魔女全員に無謀にも勝負を挑み返り討ちに遭い雷で跡形も無く消え去ったと私が証人と成り上に報告しますが」
「うむ、手間を掛けるな宮川。今回の逗留の代金はこれで足りるかな?」
「お釣りが出る程で御座います奥様」
また深々とお辞儀をしてから宮川さんは出て行った。
「カミーラ大婆様、以前こちらの別荘にいらした時もこうやって宿泊費を払ったの?」
またまた人差し指を頰に当てながら可愛く聞くたるとちゃん。
「たるとは賢いねぇ。あのタイミングでとても良い質問をしてくれたよ。以前は私を部屋に引き込もうとした華族の馬鹿二人を激怒した私の旦那の善哉が魔道具で石のガーゴイルに二人を変えてね。この別荘の屋根の飾りになってまだ居るよ。あの時は私の出る幕が無かったね全く」
うえっ。
と言う顔をして皆が上を見上げる。
葉巻を届けてあげた吉田さん全く食え無いお爺さんね私をダシにしたわね。
次からお使いの代金を倍請求してやるから。
やられた事の割にはちゃっかり儲けようとしている蜜であった。
晩御飯の準備が出来たとメイドが呼びに来る。
フランス料理のフルコースを供され先程の事など忘れて料理を堪能した一行はフカフカのベッドで眠りについた。
一方、駐車場のキャンピングカー伊達男はフランス料理の材料とワイン等を宮川さんに分けて貰い帰り道の為に伊達男風創作フランス料理をせっせと作り冷蔵庫と冷凍庫にストックしていた。
出来る男はやる事が違う。
マイクロバスの運転手さんは別荘の使用人が休む部屋で周りを警戒している人狼一族の者と定時連絡をしていた。
「夕食前に紅様や蜜様達がいる部屋に闖入者が入ったが程なく消滅した。それよりも問題はキャンピングカーの伊達男だ。美味そうなイタリアンを作り蜜様達の心を鷲掴みにしてそれを聞いたマイクロバスに乗っていた震電様からもっと美味いものを出さな無ければ帰りはキャンピングカーに乗って帰ると言われたぞ。その上、あの伊達男は別荘の者からフランス料理の材料とワインを仕入れて今、創作フランス料理を仕込み中だ!」
「先輩・・・我々も伊達男に食材を提供して料理を作って貰いマイクロバスの冷蔵庫と冷蔵庫にストックすれば良いのでは?」
「お前・・・冴えてるな!誰か手が空いてる奴で深夜に開いてる高級スーパーに行って食材を買って来い。あっ!買いに行く前にどんな食材が必要か伊達男に聞いてから行け。それと横浜に着いたらうちの駄犬の秘蔵してるバローロの当たり年のワインを伊達男に御礼に一本渡すと言っとけ。あれだけの食通ならこれで気持ち良く料理を作ってくれる筈だ」
「駄犬には勿体無いワインコレクションですからね。味の解る伊達男に渡した方が生きますよね」
部下にも駄犬と言われている・・・。
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