第48話

イギリス、ロンドン。

食事が美味しく無いと言われるこの国だけれども味音痴の国民性のお陰で他国には無い優れた事がある。

ソーホー地区にあるインド料理屋に行くと他国ではその国に合わせたインド料理になるのだけどもイギリスでは現地のままの味の料理が出されている。

つまり、どんな味の料理を出しても違いが解らないイギリス人に合わせるのでなく自分達の味そのままを出す各国料理が食べられる味の都なのだロンドンは。

この地に日本から嫁いで来て最初の頃は食事が合わずに辛かった。

家の料理人に日本の料理を少しづつ教え食環境が良くなってきて安心したある日。

こちらで友人になった方からソーホー地区のインド料理屋に誘われ食事してその美味しさにビックリして店のオーナーに話しを聞いて思わず笑ってしまった。


それから暇があると色々な国の料理屋を巡るのが私の趣味になってこの国の食事に対するイメージが変わった。

この国は、何でも受け入れてしまうのだ。

そして時間を掛けて自国の物にする。


イギリス料理は発展途中の料理なんだろう。


でも意地の悪いイギリス貴族が何故イギリスが大航海時代に世界中に出て行ったかと言うと自国の料理が不味いから外国に美味しい物を探しに行ったのだと私に言うのだった。

もっともその意地の悪いイギリス貴族は私の作った手巻き寿司をニコニコしながらお代わりする義父なのだけれども。


私の祖父、黒田善哉がイギリス留学中に学んだイギリス宮廷魔術師マーリンの三男でイギリスを魔術で護っている分家のdeep‐blue家を継いだソルト・ディープ・ブルー氏の長男のペッパーに私は嫁いだ。

ソルト義父は、魔術師の家系だけあり長命で百歳を超えている様にはとても見えない。

まあ、私の姉の蜜子や祖母達を見慣れていると不思議な気はしないけれども・・・実際、私も実年齢と見た目がかなり違う。

義父は若い頃に船に乗って料理人をしていて日本人の弟子に父親の魔法の加護が掛かったコック帽をイギリスに帰り分家を継ぐ際に渡して来たとか。

今度日本に帰ったらその人の店がまだ続いているそうなので行ってみよう。

蜜子姉さんは、祖父と一緒によくその店の初代が生きている頃に行っていたらしい。


私は、先見の魔女などと言われているが自分では魔女の自覚が無い。

姉さん達や母様の様に目に見える魔法が使えないからだ。

幼稚園の頃描いた嘘の絵日記の通りの事が起こったりして母様やお魔族の婆様、台北の徐福大爺様が大騒ぎして”先見の魔女”と呼ばれたけれども私としては母様みたいに派手な雷撃を打てる方が良かった。


幼い時から先見の魔女などと言われたが普通の魔法が使えない私は別のどこかへ逃げ出したくて仕方なかった。

学園で人狼族の大神紅さんと蜜子姉さんの親友の白龍さんのファン倶楽部会報誌【紫の花束】に妄想丸出しの小説を投稿しそれが裏の世界で【預言書】などと言われ日本から逃げ出そうと思っていたら祖父が以前学んだイギリス宮廷魔術師のマーリン様からイギリスに遊学しに来ないか?との誘いがあり喜んで学園を卒業後イギリスに渡った。

ホームスティ先としてマーリン様の三男ソルト・ディープ・ブルー家を紹介され御宅に伺った際に出会ったソルト氏の長男ペッパーさんの顔を見た瞬間に私の口から。

「ペッパーさん私をお嫁さんにして下さい!」

と叫んでいた。

先見の魔女の能力がそう叫ばせたのだろうと魔族のお婆様が結婚パーティに来た時に話していたが。

結婚して下さいと叫んだ席にいたマーリン様が教会の大司教の位も持っいたのでディープ・ブルー家の屋敷に併設されている礼拝堂で私とペッパーさんの結婚式が行われた。


結婚式が終わってマーリン様の顔をみると計画通りみたいな感じの笑顔をしていたのが気になってマーリン様に質問したら。

「先見の魔女が産む子供が次代のイギリス宮廷魔術師になると占星術で示されて貴女が来るのを待っていた。そこへこのお嫁さんにして下さい宣言。逃す物かと」

やられた。

計画通りに捕まった・・・。

それからしばらくして産まれた娘の”たると”は今、姉の十勝餡子の元に魔道具を作る修行に行っている。


日本に行っている娘の魔女仲間のLINEにUPされた写真に口の周りにケチャップとマスタードを付けながらホットドッグを食べている蜜子姉さんの新しい真っ黒な甲斐犬の使い魔の蜜が映っていた。


流石、食いしん坊の蜜子姉さんの使い魔。


蜜丸兄さんから蜜子姉さんがイギリスにある美味しい各国の料理を食べたいと言っていたので近い内に買い物籠を咥えた蜜ちゃんが私の所へ現れるだろうと連絡が来ていた。


ん?暖炉の影から黒い何かが現れる予感が。

徐仙道家の古銭を付けている使い魔ならこの屋敷の結界を通り抜けられる筈だ。


写真に有った真っ黒な甲斐犬の使い魔の登場を予想していた私は、黒目の大きな撫子の浴衣を着た可愛いい女の子を見て肝を潰した。


蜜丸兄さん聞いて無いぞこんなの黙っていて驚かせようとしたな?


けれどもこんな浴衣姿で買い物籠を持った美少女を連れてロンドングルメツアーが出来るなら文句は無いぞ。


私は目の前に現れた蜜ちゃんに。

「どこの国の料理が食べたい?先ずはお勧めのインド料理屋さんからにする?」

と聞くと凄く良い笑顔になった蜜ちゃんが。

「美味しい物なら何でも食べます!でも黒蜜おばばに持ち帰る品意外の物を食べたのを内緒にして貰えませんか?この前、たるとちゃんにホットドッグを食べさせて貰ったのがバレて大変だったんですよ。何で解ったんでしょう?」

魔女仲間のLINEを見たのね蜜子姉さん。

「解ったわ蜜ちゃん証拠はUPしない様にして置くわ。さあグルメツアーに出かけましょう」

私は蜜ちゃんの手を取りロンドンの街に繰り出した。

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