第12話《隠し事》


 あたしの名前は小島ハツナ。

 普段は陸上部のマネージャーで、たまに女子サッカー部の臨時部員をする高校一年生だ。

 その日、陸上部の部室戸締りをして帰ろうとしたあたしは、陸上部のニシ先輩と女子サッカー部の山岸先輩がキスをしているところを見てしまった。


「マジ?」


 陸上部の部室ロッカー隅で、二人は抱き合って唇を合わせている。

 やばいもの見ちゃった。

 どうしよう。このまま部室を出ようにも、部室の唯一の出入り口付近で二人がいるから出ようにも出られらない。

 とりあえず、二人が部室から出て行くまでこのまま隠れ続けておくしかなさそうだ。


「なぁ、いいだろ?」


「嫌だよ。部室じゃん」


「大丈夫だって、誰もいねぇから」


 ニシ先輩が山岸先輩のスカートをたくし上げようとしている。

 これはまずい。

 非常にまずい。

 このまま放置すれば部室であの二人おっぱじめるぞ。

 別に二人が付き合ってようと何してようと関係ないけど、みんなが使う部室をホテル代わりにするのだけは許さない。


「なんか鳴ってない?」


 山岸先輩がニシ先輩のスマホの着信音に気づいた。


《お疲れ様です! 今ってニシ先輩部室にいますか? もしいたら、ちょっと部員の記録タイムノート忘れたので、部室の鍵開けてくれませんか? 今からあたし向かいます!》


 とりあえずメッセージを送ってみた。

 これでとりあえず部室から出るらはず。

 ニシ先輩はスマホに送られたあたしのメッセージを読んで、肩をすくませた。


「誰から?」


「別に。広告だった」


 こいつ無視しやがった。

 おのれ……。


「あのさ。外出ない?」


「なんでだよ」


「もしかしたら見られるかもじゃん。やっぱダメだと思う」


「いいだろ? そういうのも好きじゃん」


「でもさ」


「せっかくお前に言われてさ、蛆神様にお願いしたんだぜ? 《顔面にち◯こ生やしてください》って」


 ニシ先輩の顔面が縦に割れる。

 割れた奥から、ピンクの突起物がうねうね生えてきた。

 それを見た山岸先輩が、鼻を鳴らしてうっとりと恍惚とした表情を浮かべる。


「しょうがないなぁ」


 山岸先輩がスカートを自分で捲し上げ、ニシ先輩が跪いた。

 それからこの部室で起こったことは、かなりひどかった。

 一部始終を見てあたしが思ったことはひとつ。

 明日からあの二人に会ってどんな顔をすればいいか、わからない。

 それだけだった。



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