第66話かっちゃんを回想、そして物語は幕を閉じる

優子とカッちゃんは、短大の同級生として知り合う。

今から20年ほど前のことだ。

神戸にある、名前を聞いただけでお金持ちを連想するような高級なネーミングの名前。

学校のある場所も、関西随一の高級住宅街に近い場所だった。

優子がその短大を志願した理由は簡単だった。

そのネームヴァリューに惹かれたのだ。

一般的な範疇でのネームヴァリューでは無い。

その名前の持つブランド力とでも言えばいいのだろうか。

学力的な観点から、その短大を出ているからといって

「優秀」というイメージを連想するわけでは決してない。

その名を聞けば、お金持ちの箱入り娘が行くような学校というイメージを持ち易い名前なのだ。


入学して間もなく

出席番号が優子は1番。浦崎だから

そして2番は、葛馬(カツラウマ)だから席が前と後ろだったことが仲良くなったキッカケらしかった。

阿部…井田…宇多川…

優子より早い順に来る苗字はそんなに無いかもしれない。


お互いの初めて印象はどんなだったか聞いたことがある。

優子はカッちゃんをヴェトナム難民か何かと思ったとのことだった。

カッちゃんは優子をデカくて怖い人だと思ったらしい。

「当時は凄い太っていたのよ」

「当時の印象が強いからアナタは優子を褒め千切るけどイマイチよくわからないの」

「確かに痩せて、綺麗になったのは確かかもしれないけど私のイメージは当時のままなのよ」

「当時は本当に酷かったんだから。写真もあるけどアナタには見せられないわ。」

「これも重要な個人情報として保護されてもおかしくはないわ」

「でも整形したとか、そんなんではないわ、もちろん」


今を知らない人間は、今の姿から過去を想像してしまう。

当たり前のことだ。太っていてメガネをかけた冴えないパっとしない女。

今の優子からは微塵も想像は出来ない姿だ。

昔のことはどうでもよかった。どうでもいいという言い方はすこし違うかもしれないけど

過去がどんなであれ、今の彼女を真の意味で受け入れたなら過去も受け入れられるだろう。

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