第22話




エリスが自分の固有武装を誠一郎に見せる。その固有武装は刀の形をしていて色は赤だ。


斬鬼ニルヴァーナの能力は空間操作よ。簡単に言えば空間を操る能力で空間転移もできるわ。効果範囲は半径10メートルで転移先が10メートル以上の距離があっても転移できるわよ」


誠一郎の能力は強力だがエリスの能力も強力だ。別の空間を作ることもできるらしい。


「そんなところかしらね。誠くんはなんか質問ある?」


エリスは先程誠一郎に質問していたため自分に質問があるか誠一郎に聞いてみた。誠一郎は首を振った。


「質問ないならもう寝よう?」

「そうだね。明日、父さんに呼ばれてるしね」

「えっ、もう一回言って」


突然のことで何を言っているのか理解できなかったエリスが聞き直す。


「だから父さんに呼ばれてるから明日いかなきゃって」


「そんなこと聞いてないんですけど」


エリスの反応を見てあとからしまったと思った誠一郎。


「ごめん。エリスに言ったと思ってた」


エリスに言っていないことに気づき素直に謝った。


「別にいいわ。それよりも明日ついていってもいい?」


誠一郎の父親に興味があったエリスは自分も行きたいと言う。その言葉に


「いいよ。俺もエリス紹介したいし」


付き合っている以上いつかはいかなければいけない。それが明日になるかもしれないだけだ。こんなチャンス逃すわけにはいかない誠一郎は二つ返事でOKを出した。


「だけど、突然だしダメかな」

「別に大丈夫だよ。人が一人増えるくらいなにもいわれんよ。それよりもどんな関係かとか言われるけど気悪くしないでよ」


誠一郎の父親は誠一郎の友達をいじるのが大好きなろくでもない父親だ。だから気をつけてと言う誠一郎に大丈夫よと答えたエリス。誠一郎も父親を弁護する。


「子供っぽいけど決してバカとかじゃないし、どっちかと言うと頭は回るからね」


「それはそうですわ。誠くんの父様が誠くんと違って頭までバカなはずありませんわ」

「それもそうだね。明日も早いからもう寝ようか」


二人は明日にそなえて早めに眠りについた。一つのベッドに入って。





そして次の日誠一郎とエリスの二人はあるところに来ていた。


「誠くんの父様って何者なの」


目の前にあるのは金属製の扉。その扉の前には固有武装を持った兵士が二人いた。


「ようこそ、おいでくださいました。栄次郎様がお待ちです。入る前にこれを書いてください。二人は書き終わるとなかに入る。廊下を進み一つの扉の前で立ち止まる。


「はじめに言うけど、緊張しなくても大丈夫だよ」


そう言ってエリスの手を握る。エリスの手の震えが収まっていく。完全に収まったとき誠一郎が扉をノックする。


「入れ」


中から低めの声が帰ってきた。誠一郎は扉を開けて中に入る。するとそこには


「あれっ」


誰もいなかった。誠一郎は部屋にある椅子の一つに近づき貫手を放つ。ガキィンと音がして一人の男性が浮かび上がってくる。


「やあ、父さん」


目の前から現れたのは誠一郎の父親だった。


「よう、誠一郎」


そして誠一郎の隣、エリスを見る。


「ディアスのところの次女か」


一通りエリスを見ると


「中々いい体してるな」


・・・唖然とする二人。そして


「・・・」


無言で誠一郎が固有武装を出す。

エリスは何が起こったのかわからなかった。

気がつけば固有武装を首の前に出した体勢で誠一郎が止まっている。首と固有武装の間には刀があった。それを見て初めて理解する。体倒崩速で接近し首に向かって刀を振ったことを。


「また、速くなったな」


余裕の声を聞いたエリス。誠一郎が固有武装を消したとたんさっきまでの張りつめた空気が嘘のようになくなる。改めて誠一郎のすごさを実感したエリス。それよりもびっくりしたのは自分が反応できなかった速度に反応し簡単に攻撃を止めていたことだった。


「まあ、冗談はこのくらいにして」

「冗談にしては悪質だ」


すまんすまんと悪びれる様子もなくあっけらかんとした調子の栄二郎。


「いったいなんのようだよ、父さん」


「まあ、いいから座れ。エリスのお嬢さん」


ソファに座るよう促す。誠一郎とエリスがソファに座るとその目の前に栄二郎が腰を下ろす。


「改めて、一ヶ月ぶりだな、トレーニングもかかさずやっているようでよかったよかった」


エリスに目を向けるとわずかにエリスの体がこわばる。


「君も楽にしてていいぞ」

優しい声音で言う栄二郎。その言葉に

体か弛緩するエリス。


「君は初めましてだね。俺は誠一郎の父親で八咫鴉やたがらす騎士団騎士長で隠密部隊長官の赤城栄二郎だ。神崎舞姫の同僚だ」


エリスを見つめる。そして目を放して話す。


「君も中々いい素材してるね。誠一郎もそんな睨むな。見たところ体も鍛えてるようだし誠一郎も彼氏として誇らしいだろうよ」


一目で恋人と見破った栄二郎の目を見た。その目は優しいものの、どこか貫禄がある。

誠一郎の父親だと改めて実感する。


「早速聞くがお前らも覇王剣祭出るみたいだな」


誠一郎に聞いたところ


「はい」


一言返事をする。


「早速トレーニングするか。おい、練習場空いてるか」


秘書に聞くと


「空いております」


と返した。


「今から二時間程使うから申請しておいてくれ」


秘書に仕事を丸投げして部屋を出る。練習場に入るとすぐに竹刀を二人に渡す。


「固有武装使わないんですか」


なぜ使わないのか栄二郎に聞くと


「今からの訓練には必要ないからな。まずはじめに言っておくが今からの訓練は竹刀を使って模擬戦だ。いつもの模擬戦と違うところは二つ。一つ目はディアスのところのお嬢さん」


「固有武装を使わないことです」


エリスは質問に答えた。


「これに特に意味はないが二つ目はなんだ、誠一郎」


「重力がかけられていること」


簡単に質問に答えていたが、よくわからないことを聞いた。重力系能力を使えるやつはいないはずだ。そんな疑問をよそに話は続く。


「なぜ、かけられているかわかるか。誠一郎、答えろ」


「動きづらくすることで体の使い方を覚えるため」


また、当然のようにこたえるが


「重力を強くするってどういうことですか。使える人はいないんじゃないですか」


訓練内容に文句はないが気になったため聞いてみると


「訓練場の角を見てみな」


言われたように角を見てみるとそこには刀が刺さっていた。


「それは俺の固有武装で重力を操ることができる。それをさして重力をかけているんだ。よし、それじゃ始めるぞ」





始まってから1時間30分後。


「よし最後のメニューは2対2のタッグマッチだ。おい、そこの二人ちょっとこっちこい」


呼ばれた二人がやって来た。


「こいつらは覇王学園の元生徒だ。タッグマッチにも出ていたから実力はある。こいつらから学ぶこともあるはずだから真剣勝負だ。固有武装を幻想形態ファクトフォームで出せ。それじゃあ始め」





タッグ戦が始まった。栄二郎に呼ばれた二人はそれぞれ、銃と斧、誠一郎とエリスの二人は剣と刀を使い戦う。


エリスは銃使いと、誠一郎は斧使いと戦っている。エリスたちは、弾丸と衝撃波の応酬、誠一郎たちは接近戦を繰り広げている。勝負が動いた。誠一郎が体勢を崩された、否崩した。斧使いが斧を振るった瞬間、


「なっ」

「えっ」


誠一郎とエリスが入れ替わる。動揺から動きが緩まった瞬間に誠一郎が疾風突きを繰り出す。銃使いは突然の相手変更と急接近に反応が遅れ、疾風突きを受け、場外へ。そのころエリスのほうも戦いが終わろうとしていた。斧の攻撃を空間断層の障壁で防ぎ、空中で止まった斧使いに王室剣技をくりだす。斧使いは速さに対応できず、攻撃をくらいそこで勝負はついた。


「二人ともいい勝負だったぞ。騎士団員に勝利するとは中々の力だな」


自分の息子が勝ったため機嫌がいい。誠一郎たちに負けた二人もとても楽しそうにしている。


「お前らー。はしゃいでるところ悪いがちょっと用事があってここを開けるから、出てくなら鍵しめとけよ」


誠一郎とエリスは違和感を覚えた。さっき自分達がこのなかに入るとき門には門番がいたはずだ。それをいおうとするが


「あとは任せたぞ」


とだけ言って出ていってしまった。


「あの門番は魔力で作られたただの人形だよ。建物の中に人がいなくなると自動で消えることになっている。だれもいないときは魔力を通さない結界が張られているから人形の門番は形を維持できないからね」


「あの、僕らは学園に戻りますね」


一言ことわってから二人は隠密部隊の本拠地をあとにした。




このあとも学園内で軽くトレーニングをして夕方を迎えた。エリスは友達とご飯を食べにいっているため部屋にはいない。部屋でくつろいでいると電話が鳴った。


「はい、もしもし」


電話から聞こえたのは聞き慣れた声だった。


「誠一郎。今から夕食食べにいこ?」


受話器の向こうの声、楓が夕食に誘ってきた。まだ夕飯を食べていなかった誠一郎は


「わかった。用意できたら行くよ。6時30分でいいよな」


「うん、わかった。待ってる」


楓と夕食を食べに行く約束をして電話を切った。時間までは30分程あったため、着替えてから部屋を出ると、まっすぐに待ち合わせ場所に向かった。


待ち合わせ場所につくとそこには


「おーい赤城くん、こっちこっち」


そこには楓となぜか生徒会長がいた。

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最弱と思っていた俺は実はすごかったなんて知らなかった 天龍寺凰牙 @ouga-tenryuzi

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