第6話

「ちょっと待ってくれ」


 陽仁が慌てて弥勒院に向かって言った。


「なんですか?」


「なんで他の子供はここに連れてこないんですか」


 弥勒院が面白いとでも言うように含み笑う。


「それは一目瞭然です。ここに来れるのはお友達として魅力のある人間だけ。たくさんのお友達に慕われている人間だけが来れる場所なんですよ」


「お友達って……、友達に上下なんかないだろう?」


 すると弥勒院が呆れたというような表情を浮かべた。


「ありますよ。それがわかっている人間がエクセレントクラスに入れるんです。そちらの方は可能性がありますけど、あなたにはないですね」


 お友達クラブと関わって初めて微笑みとは違う嘲笑を浴びた。


「弥勒院さん」


 晶良が口を開いた。


「なぜ、僕に資格があるのか、今度聞かせてくれますか? 別に今じゃなくていいですから」


 考え込むように弥勒院が穏やかな笑みを浮かべてから言う。


「いいですよ。東京に戻って連絡しましょう」


「僕から連絡します。電話番号を教えてもらえますか?」


 弥勒院が面白そうに笑う。


「積極的ですね。わかりました。じゃあ、これをどうぞ」


 弥勒院が尻のポケットから名刺入れを出して、一枚晶良に手渡した。


「ありがとうございます」


 晶良がそう言ってニッコリと笑った。陽仁と晶良はそれ以上詮索せず、相良に連れられて階下へ降りた。

 相良と別れて、二人は部屋に戻る。その途中、晶良が陽仁に向かって呟いた。


「弥勒院さんだけ雰囲気が違いました。中身があるんですけど、きれいでした」


「ああ、何もかも完璧だったな」


「完璧すぎますね。完璧すぎるから、すごく胡散臭い……。まるで、見ただけなら釈にそっくりです」


「でも釈は中身が空っぽなんだろ?」


「なんなんだろう……はっきりした証拠はまったくないのに、何かが繋がってるんです」


「あの瓢箪みたいなものは証拠にならないのか? あと焦げ跡」


 二人はお互いの部屋の前で佇んで話を続ける。


「お友達クラブと鳥羽さんは繋がった気がします。どちらも焦げ跡と瓢箪型のものがありますから。鳥羽さんと釈は釈の本と焦げ跡。でも、お友達クラブと釈は繋がってません」


「型のマーク以外は、そうだな……」


「光輝さん……無事だといいんですけど」


「無事ってどういう意味だ?」


「いえ、気のせいかもしれないから……とりあえず、光輝さんに電話しないと」


 陽仁が呆れた顔で言った。


「お前、ここが圏外って調べてなかったのか?」


「え! そうなんですか?」


「仕方ないなぁ……。ここじゃなんだから部屋に入ろう」


 陽仁の部屋に入り、陽仁はスマートフォンの電源を入れた。


「お、アプリに通知が来てる」


「通知?」


「うん。光輝さんと他に柘榴さん、翡翠さんに友達申請したんだ」


 晶良の目が輝く。


「へぇ、そんなことができるんですか!」


 そして一所懸命に画面を覗いてくるので、仕方なくベッドに腰掛けて、晶良が見やすいようにしてやった。

 返事は柘榴からだった。光輝と翡翠からはなんの返事もない。仕方ないので、柘榴にチャットを送ってみた。


『柘榴さん、こんにちは。陽仁です。光輝さんは合宿から戻りましたか』


「文字を打つのボタンじゃないんですね! 液晶画面に触ったらなんか色々出てきますね」


 陽仁は晶良からスマホを隠して念を押す。


「欲しがってもお前は駄目だ。第一お前、携帯メール打つだけで精一杯だろ」


「まぁ、そうですけど……」


 ピョコッという音がして、柘榴から反応があった。


『光輝から連絡なし』


 それだけだった。


『いま、お友達クラブという怪しいグループの施設にいます。多分山梨の富士山麓のどこかです。圏外で電話が使えません』


『光輝にはGPSを取り付けている。現在は行方がわからない。お友達クラブの詳細をくれ』


(お友達クラブの詳細……)


 陽仁が考え込んでいると、晶良が言った。


「柘榴姉さんと直接話ができるんですか?」


「多分……でもやめたほうがいいかもな。いくらパスワードつけててもワイファイの提供元がお友達クラブだったら内容を傍受されてるかも知れない」


「だったら、この内容も傍受されてますよ」


 陽仁は晶良のネット知識に驚いた。


「お前よく知ってるな」


「テレビで言ってました」


「テレビかよ……」


 陽仁は晶良と話した推測をそのままチャットに書き込んだ。すると、柘榴から返事があった。


『至急お友達クラブについて調査する。連絡を待て』


 陽仁はアプリを閉じた。


「GPSまで付けられてて連絡取れないって、光輝さんどうしたんだろうな」


「心配ですね。だからといってあの部屋に入るのは危険だし……」


「そうは言ってもこんな場所だと逃げられないだろ。監禁されてるんだぞ」


 すると、晶良が不思議そうな顔をした。


「逃げられますよ?」


「は!?」


 陽仁は驚いて口を開けたまま晶良に見入った。


「あ、あれか? 術法を使うのか」


「いいえ。癪ですけど、一つだけ方法があるんです」


「なんだよ?」


 晶良がすごくいやそうな顔をした。


「瑪瑙姉さんの妖し世を使うんです」

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