およそ下等で下品な、とされるネットの掃きだめ……2ch、アスキーアート、ニコニコ発の例のアレ、やる夫、ハセカラ……そしてそれに関わる、あるいは関わりたくないと忌避する人々……
それらが一つのif技術の分岐により今から想定可能な、また不可能な方向へとカタストロフへの道を突き進む、現代の科学技術および理論の延長線上にある例のアレ、を描いたSFです。
原作読者としても改めてレビューを書かせていただきました。
もとになった「下等な」世界を知るものが不幸か幸福かは読者に委ねます。
2020.7.3追記
ちょっと突っ込んだネタバレレビューを近況ノートの方に書きました。
https://kakuyomu.jp/users/sophnuts/news/1177354054908678702
ネタバレなので作品を読んでから踏むのを推奨します。
グーグルがあり、ウィキペディアがあり、淫夢民やハセカラ民すらいる世界。我々が知っている通りのネット。
それが、「2017年、AIが実用化」というイフ要素の導入により、異形のパラレルワールドへと変貌する。でも変貌した後の世界も、グーグルがあって5chがあって、明らかに地続きで、現実味にあふれた世界……
じゃあ、我々が生きている現実も、どこか別の時代、別の世界の人にとってはSFそのものかも? 我々はすごい世界に生きているな?
……と感じさせてくれる、世界の見え方が変わる小説。
赤野工作「ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム」は、知っての通りの傑作SFですが、この作品は、ある意味アレと同じような衝撃を与えてくれます。正統後継者であり、発展型であるともいえます。
こんなSFの書き方があったのか、という感じです。
追記
その後、8話で完結してしまい、「これで終わりなら、私の読みたかったものではないな」と、評価を下方修正しました。