煙草のむ美人に夏の雲かかる

【読み】

 たばこのむびじんになつのくもかかる


【季語】

 夏の雲(夏)


【大意】

 煙草をのんでいる美人のうえに夏の雲がかかっていることである。


【附記】

 夏の雲と言えば一に入道雲、二に梅雨の雲といったところだろう。入道雲を意味する「雲の峯」に置き換えてもよさそうなものであるが、それだとすこし出来すぎかと考えた。


 美人の吸う煙草のけむりと夏の雲の白さが真っ青な空に映えるのかもしれない。


 この句には切れ字がない。「美人」を「美人」とすればその点は解決する。この句にマ行とナ行とバ行の音が多いことや屈折気味な句の内容のためか、現行案のほうがわたしにはしっくり来るようである。なお、「吸う」ではなく「のむ」としたことにもそれらの音の多さが影を落としていそうである。


【例句】

 膳とりて座はくづれけり夏の雲 岱水たいすい

 山寺や軒の下行く五月雲さつきぐも 闌更らんこう

 夏の雲朝からだるう見えにけり 一茶

 夏雲や辰巳にあるを阿波太郎 正岡子規


 ふなずしや彦根の城に雲かかる 蕪村

 鮎汲あゆくみや喜撰がたけに雲かかる 几董きとう

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