　美少年（びせうねん）たりし日（ひ）もあり老（おい）の春（はる）

【季語】

　老の春（新年）

【大意】

　美少年だった日もあるものを、すっかり年をとって新春を迎えることである。

【補説】

　歴史修正主義。

たりしはもしかするとなりしが良いかもしれない。たりはもっぱら漢文訓読文に用いられていたと聞く。

【参考句】

　とび梅のかろがろしくも神の春　守武（もりたけ）

　難波津にさくやの雨や花の春　宗因（そういん）

　天びんや京江戸かけて千代の春　芭蕉

　四海波（しかいなみ）魚のきき耳あけの春　嵐雪（らんせつ）

　ほのぼのと鴉黒むや窓の春　野坡（やば）

　鬼を山が笑ひかへすや明（あけ）の春　也有（やゆう）

　目を明けて聞いて居る也（なり）四方（よも）の春　太祇（たいぎ）

　三日せば乞食忘れじ江戸の春　蓼太（りょうた）

　初春や炬燵の上の小盃　重厚（じゅうこう）

　ひとつづつものなつかしやけさの春　蒼虬（そうきゅう）

　象潟（きさかた）もけふは恨まず花の春　一茶

　年々や家路忘れて花の春　井月（せいげつ）

　目出度（めでた）さも人任せなり旅の春　同

　鶏の鳴く函谷関（かんこくくわん）や明の春　同

　松の苔鶴痩せながら神の春　夏目漱石

　神かけて祈る恋なし宇佐の春　同

　淋しさの尊とさまさる神の春　正岡子規

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