紅葉ちるや寝るこのそばを通るとき

 紅葉もみぢちるやるこのそばをとほるとき


【季語】

 紅葉且つ散る(秋)


【大意】

 寝る子のそばを通るときに紅葉がちるのであった。


【補説】

 子供にぶつからないようにそっと通るようすである。


 字余りは不本意だが、上五かみごを「花ちるや」「梅ちるや」等とする気はない。


【参考句】

 青々とうずまく淵や散る紅葉 木導もくどう

 今日の別れ心の波に紅葉散る 樗堂ちょどう

 鳴度に紅葉散なり雉子の宮 抱一ほういつ

 紅葉ちる和尚の留守のいろりかな 正岡子規

 馬つなぐ木に散りそむる紅葉哉 同

 血なまくさき戸隱山とがくしやまの紅葉哉 同

 水音や谷ほの暗く紅葉散る 藤野古白

 空駕籠や紅葉かつ散る山の暮 羅蘇山人

 敷石に紅葉散りけり門の内 寺田寅彦


 河の紅葉ふみ分て鳴かじか哉 西鶴

 油引あぶらひきや紙のまにまに紅葉傘 同

 かけはしや命をからむつたもみぢ 芭蕉

 紅葉ばにふんどし赤し峰の猿 北枝ほくし

 竹伐て日のさす寺や初紅葉 吾仲ごちゅう

 犬ほえて家に人なし蔦紅葉 千代女ちよじょ

 炉に焼きてけぶりを握る紅葉かな 蕪村

 律院の後淋しきもみぢ哉 嘯山しょうざん

 下紅葉かさねて雨のうつ夜哉 闌更らんこう

 琥珀には蟻氷には紅葉かな 召波しょうは

 門叩狂僧憎し夕もみぢ 曉台きょうたい

 暮れさむく紅葉に啼くや山がらす 白雄しらお

 霜きえて酒の煙れる紅葉哉 青蘿せいら

 水よりや染けん岸のした紅葉 同

 紅葉してあんは柚味噌のにほひかな 士朗しろう

 見る人の唇乾く紅葉かな 成美せいび

 底澄みてうをとれかぬる紅葉哉 同

 ひよどりも来て悲しがる紅葉哉 同

 夕紅葉谷残虹の消かかる 一茶

 魚汁のとばしる草も紅葉かな 同

 紅葉折る音ひと谷にひびきけり 梅室ばいしつ

 紅葉してしばし日の照る谷間かな 村上鬼城

 目ざましき柿の紅葉の草家かな 同

 紅葉して苺畑の小春かな 同

 山鳥のしだり尾動く紅葉哉 正岡子規

 山賊のすみかを問へば鳶紅葉 同

 稻刈て村靜かなり柿紅葉 同

 むらもみぢ灯して行くむじなの湯 泉鏡花

 樹から樹へ渡す紅葉や山葡萄 寺田寅彦 

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