白ゆりの香に更け足らぬ短夜かな

 しらゆりのらぬ短夜たんやかな


【季語】

 短夜(夏)


【語釈】

 短夜――夏の短い夜。みじかよ。


【大意】

 白百合の香にむせ返って、十分に更けることもなく明けてしまう夏の短い夜だなあ。


【補説】

短夜たんや」は大辞林 第三版およびデジタル大辞泉では季語の扱いではないが、「みじかよ」は季語とされている。


「白百合」も夏の季語。


【参考歌】

 道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがゝらに妻と言ふべしや 詠み人知らず

 夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ 坂上郎女さかのうえのいらつめ

 髪長き少女とうまれしろ百合にぬかは伏せつゝ君をこそ思へ 山川登美子


【参考句】

 鬼百合にそふいばら木のまがきかな 信徳しんとく

 わすれ草もしわすれなば百合の花 素堂そどう

 ひだるさをうなづきあひぬ百合の花 支考しこう

 鬼百合やりんとひらいて蝉の声 史邦ふみくに

 百合咲くや汗もこぼさぬ身だしなみ 諸九尼しょきゅうに

 かりそめに早百合さゆり生けたり谷の房 蕪村

 百合の花人もねぶたき盛かな 成文せいぶん

 野ぎつねの嫁とる雨や百合匂ふ  一瓢いっぴょう

 うつむいた恨みはやさし百合の花 正岡子規

 蛇逃げて山静かなり百合の花 同

 驟雨しうゝ欲来きたらんとほつす五尺ノ百合ヲ吹ク嵐 同

 百合白く雨の裏山暮れにけり 泉鏡花

 花百合や隣うらやすだれし 芥川龍之介

 傾きて崩るゝごとき百合の山 横光利一


 みじか夜や六里の松に更たらず 蕪村


 白梅しらうめあくる夜ばかりとなりにけり 蕪村

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