銀漢や曙杉に落ちかゝる

 銀漢ぎんかん曙杉あけぼのすぎちかゝる


【季語】

 銀漢(秋)


【語釈】

「銀漢」は、天の川。銀河。

「曙杉」は、杉科の落葉高木。世界各地で公園や街路に植えられる由。メタセコイア。


【大意】

 天の川が曙杉に落ちかかっているなあ(夜明けも近いようだ)。


【補説】

 曙の名を冠する立ち木に白く輝く天の川が落ちかかるということによって夜明けの到来を象徴的に表わそうとした。


 メタセコイアの現生種の発見されたのが1943年ごろのようで(化石種は前々から知られていたらしい)、このような句が作れるのはやはり現代人の特権だろうと思う。中国名は「水杉」とのことだが、私には日本名の「曙杉」のほうがすこぶる良く思われる。


【参考句】

 荒海や佐渡に横たふ天の川 芭蕉

 かさゝぎのはね橋ならむ天の川 越人えつじん

 五位の声まだらにふけぬ天の川 汶村ぶんそん

 西瓜すいくわ喰ふ空や今宵の天の川 沙明さめい

 芋の葉の露や銀河のこぼれ水 自笑じしょう

 真夜中に釣瓶つるべの音や天の川 晩得ばんとく

 暁のやなに落けり天の川 青蘿せいら

 素麺にわたせる箸や銀河あまのがは 抱一ほういつ

 別るゝや夢一筋の天の川 夏目漱石

 銀漢の瀬音聞ゆる夜もあらむ 芥川龍之介

 天の川見つゝ夜積みや種茄子 同

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