凍星や塵は無けども目に涙

 凍星いてぼしちりけどもなみだ


〔語釈〕

「凍星」は、凍りついたように冴えた、冬の夜空の星(冬)。

「無けども」は、無けれども。


〔大意〕

 凍星よ。その光は目に立てて見る塵もないくらい清浄であるが、(目に入る塵があるわけでもないのに)目に浮かぶ涙のせいで曇ってしまう。


〔解説〕

 これは、


 白菊の目に立てゝ見る塵もなし


という芭蕉の句を踏まえている。芭蕉の句は


 くもりなう鏡の上にゐる塵を目にたてゝみる世と思はゞや


という西行の手になる古歌を踏まえたものだそうで、本歌の解釈も句の解釈も意見が分かれているようだが、ともかく園女そのめという女流俳諧師(俳人)の清浄さを言った挨拶句らしい。


 ちなみに、「凍星」という語の入った古句(近代以前の句)は探しても見つからず、新しくなった語だろうと見ている。


〔参考句〕

 行春や鳥なき魚の目は泪 松尾芭蕉

 ろふそくの涙氷るや夜の鶴 与謝蕪村

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る