ゴーレムマンション奪還編
第54話お母さん! ゴーレムマンションが非常事態!
「うがあああ!!!」
と勢いよく俺を襲ってきた狼は雪の深さを計算していなかったのか、「ボフッ」と布団を叩いたかのような低い音を立てて、雪にハマってしまった。
雪の中でもがくが中々、出られない様子。
「だ・大丈夫... ...」
雪の中から、ふきのとうが顔を出すように緑色の物体が姿を現した。
大丈夫おじさんだ。
「大丈夫おじさん!!!」
「... ...大丈夫」
大丈夫おじさんのルックスがもっと可愛らしいものであったら、抱きしめていたのに、抱きしめる程愛着がないので声を掛けるだけで止めた。
なにやら、自身の纏っている小さな服のポケットをモゾモゾし出す大丈夫おじさん。
秘密の道具を出してくれるのかと思いきや、銀色のイヤリングをこちらに差し出してきた。
「なんだこれ? イヤリングか?」
もしかして、大丈夫おじさんの左耳にもこれと同じものが付いていて、俺が付けると合体でもするのか?
まじまじとイヤリングを見ると、何やらリングの裏に文字のようなものが刻まれている。
どうやら、俺じゃ読めないな。
字が小さいし、ホワイトにも読めないだろう。
シルフが起きたら、シルフに読んでもらおう。
大丈夫おじさんに、イヤリングを返そうとしたが、目の前に大丈夫おじさんの姿はなかった... ...。
大丈夫おじさんのいた場所にはくっきりと足跡が残っている。
大丈夫おじさんは確かに、俺の目の前にいた。
ただ、それをホワイトやシルフに言っても信じて貰えないだろう。
今まで吹いていなかった風が、木々と木々の間をいたずらに吹く。
まるで、大丈夫おじさんが遊んでいるかのようだ... ...。
「んはあああ... ...」
大丈夫おじさんがいなくなった感傷に浸っているのに、ホワイトの兄がうるさい。
一体、いつまで、舐めてんだ!
「おい! まだ、成分分かんないのか!?」
俺の声に「びくっ!」と身体を強張らせる。
「わ・分かったぞ! ど・どうやら、氷に見えるが、氷では、な・ないみたいだ」
「氷じゃない? 何なんだ?」
「うーん。それが、わ・分からない。今まで、こんな成分の氷の塊は見た事がない」
正体不明の氷の塊。
ただの氷に少し恐怖を感じた。
氷の中からは「ピッピッピッ... ...」と終始、規則正しい機械音が聞こえている。
「もしかしたら、これは、俺のいた世界から来た物かもしれない... ...」
「い・いた世界?」
ホワイトの兄は俺が、他の世界から来たという事は知らない。
俺の発言を疑問に思うのは当然だ。
恐る恐る、俺はその氷の塊に触れてみようと思った。
______その時。
後ろの方から、何かが弾けるような爆発音がした。
地面が小刻みに揺れ、地面の下からトンカチで「トントントン... ...」と叩かれるような感覚。
地震とは明らかに違う。
ゴーレムマンションの方から、煙が出ている。
何かがゴーレムマンションで起きているのは明白だった。
恐らく、悪い事に違いない... ..。
そう思った瞬間、俺はゴーレムマンションの方に走り出した。
「花島!」
ホワイトに声を掛けられるが、俺は振り返らずに前に進む。
あそこには、魔法少女や婆がいるんだ!
「あたしの肩に乗りなよ... ...」
勢いよく走ったは良いが、雪が深く、前に全然進めていなかった。
ホワイトはあきれ顔で俺を肩にひょいと乗せてくれた。
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