epilogue

E

 あの後、部員たちの元に戻った田中真由子は、みんなに頭を下げて謝った。

 ぎこちなく、それでも素直に、自分の非を認めたこと、認められるようになったこと。ほんの少しだけ、また前進できたのではないかと、思う。


 そうして本番までの練習は、ちょっとだけみんなに心を開けるようになった田中真由子への信頼と比例するように、少しずつ仕上がっていった。文句なしといえる出来では決してなかったけれど、全力を尽くした状態で本番を迎えることができた。きっとこれが、集団で活動するってことなのだろう。ドラマみたいに上手くいったりはしないのだ。

 もちろんみんな素人で、経験者から見れば拙いものであるのは当たり前。本番も、上手くいったとは到底言えないのかもしれない。けれど、演じている瞬間は言葉にできないほど楽しくて、舞台上で同期たちと心が通じ合った瞬間があったような気がして、終わった後の達成感も、皆で分かち合うからより大きい。


 ああ、もしかしたらこれが。――確かな実感を得たのは、きっと俺だけじゃないと思う。



 SSS団、総団員数二名。

 この珍妙な団体が、これからどうなっていくのかは分からないけれど。

 目指す〝青春〟の形が、どんな風になるかは未知数でも。

 とにかく全力で、始まったこの高校生活を、楽しんでやりたいと思う。

 果報は掘ってでも探し出せ。背伸びして、手当たり次第に触れてみろ。

 さあ、ここから。退屈な世界の憂鬱を、吹き飛ばそう。ぶっ飛ばそう。

 宇宙人未来人超能力者がいなくても、この世界は最高だって、証明してやろう。


 隣で不器用にも笑う、涼宮ハルヒになりたい少女と一緒に。



 ……ところで。

 やっぱり俺たちは到底ハルヒやキョンには及ばない、主役になんてなれやしない平凡な高校生なのかもしれないわけだけれど、しかし俺にはひとつだけ、ちょっとだけ自慢できることができたんだよ。それは何かというとだな――――


「ナオ」


 真昼の中屋上。青空の下、呼ばれる名前。

 ナオ、那生、関彌那生。


 どうだいキョン、俺はお前よりも先に、ヒロインに名前呼びされたんだぜ?

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