極めし者とは

闘気と呼吸法

 さて、メインである極めし者についてのあれこれの話に入ります。


 前の項で、闘気を扱える素質のある人は50人から100人に1人ほど、と触れました。

 割と確率は高いのに、どうして極めし者は少ないのか。

 それは、適度に体を鍛えた人でないと闘気を扱う呼吸法を習得できないからなのです。

 どれだけ鍛えればいいのかは、何らかの格闘技で有段者レベルになるぐらい、とされていますが、個人の資質にも大きく左右されます。


 闘気を扱う呼吸法は、極めし者に師事して習得します。なので、道場の師範に習うのが一番多い方法です。

 正式に道場ではなく個人的に習うことも可能ですが、刑法にもあるように、必ず第三者が立ちあわないといけません。……守ってない人も多そうですが。

 またごくまれに、自然と身につけてしまった、という例もあります。


 呼吸法は、文章にするのは難しいのですが、俺が習った時に言われていたのは「精神を集中させ、腹のあたりに力を集め、それを体全体に巡らせることを意識し、深く呼吸する」というものです。

 最初は目を閉じたり、動きを止めて深呼吸しないと扱えないのが、慣れてくると普通の呼吸より少し深くするだけで力を操れるようになります。それができないと呼吸法を維持しながら動いたり闘ったりができませんからね。


 この呼吸法でないと、という型はないです。闘気を全身に巡らせ、力をコントロールできるすべを身につければよいのです。その一番簡単な方法が、規則正しい呼吸にあわせるというものだそうです。


 なので、闘気を扱うには呼吸法を会得しないと、と言われているけれど、例えば極めし者が突然口をふさがれたり水の中に落ちたりしても、少しの間だけなら闘気を扱えるはずです。

 でも、呼吸できないと闘気よりまず生命活動に影響しますよね。水中で活動出来る時間は極めし者も一般人と変わらない、ということになります。


 闘気の習得には平均で一年ほどかかります。闘気を放出するだけならもう少し早いですが、さっきも書いた通り、闘気を操りながら動いたり、というところまで行くのに時間がかかるのです。

 俺は、まさに平均的な一年ほどでした。

 照子は早かったと聞いています。半年ほどだったみたいです。

 逆に、数年かかる人もいるし、どれだけ修練しても、ついに闘気を操るどころか放出することさえ出来ない人もいます。


 本来は素質なしの人でも、突発的に闘気を操れるようになるケースもあります。

 火事場の馬鹿力、って聞いたことありますよね? 力のない人が火事現場からタンスなどの普段では絶対に1人では運べないようなものを運び出していた、というあれです。

 普段は制限されている潜在的な力を、緊急事態に陥ってリミッターが外れて使うという現象ですが、闘気が一時的に体にうまく流れたということです。


 その一時だけのことなのがほとんどですが、それをきっかけに闘気をコントロールできるようになった、という人もまれにいます。


 このように、さまざまな経験を経て、極めし者になって行くのです。

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