第69話 空からジャッキーが落ちてくるような場所

新居に引越した。

ピーク時で引っ越し難民な中、業者を押さえて15万強で引っ越し代を抑えたおくさんはもっと褒められるべきだと思うの!という思いが過ったので、とりあえずパソコンに向かう夫にアッピールした。


夫は「よしよし」とテキトーに頭を撫でて「自分の名前入れて死んだとき嫌だから」とホラーゲームの主人公の名前に私の名前をそっと入力していた。

「あなた存在がギャグみたいなものだから…死んでもすぐ『あーびっくりした☆』とか言って生き返ってくると思って。」とかわいこぶって来たことを私は忘れない。


生イチゴもりもりのパフェで手を打ってやらぬこともないので、これを見た夫はGW中にでもおくさんを花見デートに連れていくといいと思う。


引越をしたのは3月末だった。GW中に花見、ということから既にお気付きだと思うが九州→北海道への引っ越しだった。引っ越しの集荷と荷受に1週間かかるため、結婚記念日も兼ねて、家が無い間台湾に3泊4日で出かけることにした。初の海外ですよ!新婚旅行のやり直しですよ!

思わず、ですます口調になってしまった。


夫と行く初海外。何もないはずはなく…


なぜか入管で私だけ指紋が取れず何度もやりなおしを要求されたり

なぜか宿がカンフー映画の序盤で空からジャッキーが落ちてくるような場所だったり

なぜか「めんたいこ 京都」と書かれたお好み焼きの店があったり

なぜかドラえもんの姿をしたスタンドで豚足が売られていたりした。


夫は小汚い、いや生活感溢れる路地裏の雰囲気で生き生きとしていた。

水を得た魚とはまさにこの事をいうのだろうと思った。

天パがいつもより多めにグリグリしていた。


ちなみに宿についてだが、某大陸にありがちと聞かされていた和式トイレの上にシャワーがついている感じのファンキーな宿ではなくてホッとした。

2人で4泊、1万ちょっとしたので奮発したと夫は言うけれど、1泊一人あたり2,000円を切っている宿ということだ。あなたがいるのでセキュリティに気をつけて…という気遣いがとてもありがたかったが、後になって冷静に考えてみると普段は一体どんな宿に泊まっていたんだという疑問が湧いたのだった。


現地では某嵐の顔がむくみやすいラップ担当に似た夫の友人と晩ご飯を食べに行った。案の定、イケメンの紹介してくれるお店は全部オサレスポットだったので夫は若干弱って天パが直毛になっていた。私も観光客らしく空気を読んでマンゴーかき氷を頼んだが、その日はめっちゃ寒かったので予想通りに腹を下したのだった。

美味しかったから悔いはない。

悔いは…ない。



ホラー店主、家は流石に断ったらしい。よかったよかった。



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