第23話

「……え? アイツ、目隠れ? モロに顔出てない?」

「何を言ってるN子? ゴリアテ、片方の目が常に隠れてるだろ?」

「え? 二人とも何言ってるの? ゴリは眼帯してるよ?」

「ちょっと待って、何!? 何か認知が変なんだけど! 何者なのゴリアテ!?」

「ゴリアテはゴリアテだ! 行くぞ!」


 多少以上の謎を残しつつ、玉藻前は指をN子の光に差す。


「戦闘力は800だ! これでターンエンド!」

「800! N子、どうしたの!? あんなニッチ属性に負けてるわよ!」

「SSR子ォ! 目隠れを馬鹿にするなーーーー!」

「ごめんなさい兄さま!」

「兄ちゃん、今日はなんかめっちゃ強ェ……」

「気を取り直して! ドロー! 私はエナジーゾーンに、『素材』をセット!」

「兄さんばっかりだな、エナジーゾーンに行くの!」

「だって戦闘力2よ?」

「妥当だな」


 これでコスト2までのカードが使用可能になる。

 だがSSR子は、


「これでターンエンド!」

「何だと! ふふふ、万策尽きたか! ならば、私のターン! ドルオオオオーーーー!」

「玉藻前って何だかんだでノリがいいよな」

「だからSSR子と波長が合うんだろ」

「私はエナジーゾーンに『少女趣味』をセット!」

「ZZZZZ……ZZZZZZ……」

「アザトース……だろうな、アレ」

「そして、再び! ゴリアテの属性だ! さっきの目隠れ属性に重ね合わせるのは、『照れ屋さん』!」

「何! 目隠れに照れ屋! ふほほーー!」

「兄さんの暴走が止まらない」


 ゴリアテの影が変質していく。より強力さを増したことを表すように、その身が巨大化していった。観客の歓声も上がっている。


「現れろ! クロス属性・萌えランク5! 『目隠れ照れ屋!』」


 戦闘力・1500。

 圧倒的な戦闘力を持つ巨人・ゴリアテがここに誕生した。


「コスト合計3であんなのが出せるのかよ!?」

「目隠れと照れ屋……それは恐ろしく相性がいい! あそこに『お目目チラ見せ』や『地味子』属性も加われば、恐ろしいことになるぞ!」

「詳しすぎるだろ兄ちゃん」

「ふははははは、行け! ゴリアテ! N子を粉砕しろ! 『うつむき目隠れ赤ほっぺ』!」

「ひでえ技名だ!」

「なんて萌え力だーー!」

 覚醒の宝玉(R以下)にヒビが入るほどの萌えの波動を振りまきながらゴリアテが動く。

 しかしSSR子は不敵に笑い、


「カウンターイベントカード発動! 『メジャー属性の氾濫』!」


 SSR子がかざしたカードから光が放たれた。


「何だアレは!?」

「このカードは、2エナジーと、手札にあるメジャー種族属性カード1枚をコストとして発動するわ! その効果は、ニッチ種族カードを2枚まで選択して破壊すること!」

「!」

「対象はもちろん、目隠れ照れ屋のみ! 行きなさい、メジャー需要! 誰得の二ッチ需要など、物量で圧殺するのよ!」


 カードから、多数のメジャー属性エネルギーが迸り、ゴリアテに直撃。ゴリアテにヒビが走ったと思うと、瞬間。爆発四散し、雲散霧消した。


「ぐあああああああ!」


 その波動で吹き飛ぶ玉藻前。しかしすぐに体勢を整える。


「や、やるな! 私が重ねた後にカウンターすることで、2枚分のアドヴァンテージを! 二枚消費する以上、1対1交換にしなければ割には合わない……そこまで待ったというわけか!」

「ふふふふふ! その通り!」

「面白くなってきたぞ、オーディン!」

「SSR姉貴、こういう時は少しだけ頭回るよな」

「要は遊びじゃないとやる気出ないタイプなんだろうな」

「そこ! 静かに! 私のターーーン! ドロー! 私は手札から、『球体』をエナジーゾーンに! そして、コスト2属性カード・『家庭的』を『愛の無い暴力』に重ね合わせる!」


 SSR子の手から、一枚のカードが『愛の無い暴力』に重ねられる。するとN子は成長して肥大化し、腰にはエプロンが巻かれた。


「……N子って家庭的だったのか?」

「うちの掃除洗濯炊事担当なのよ」

「意外!」

「うっせーな!」

「そして誕生する属性は、『ヤンママ』! 戦闘力は1600の巨人! そしてそのままダイレクト・アタック!」


 N子巨人はかち合わせていた拳を解いて、左手にフライ返しを、右手にお玉を握って玉藻前に突撃。


「喰らいなさい! 『不器用な包容力』!」

『チッ、んだこのヤロー、残業なんかしてきやがって! 精のつくもん喰ってさっさと元気出しやがれオラー!』


 そして玉藻前をブン殴った。地響きが鳴り、観客は大いに沸き立つ。


「どこが包容力だ! 殴る包容力がどこにある!」

「仕方ないじゃない、そういう名前なんだから! そしてヤンママのスキル・『作り置き』発動! ターン終了時、エナジーカード一枚をエナジー放出可能に戻す!


 つまり、相手のターン中に私はエナジー2を使えるのよ!」


「く! またカウンターイベントカードが使えるということか……」

「そういうことよ!」

「ハハハハハハハ、実に面白いなコレ! いいスリルだ!」

「何だかんだ玉藻前が一番ハマってね?」

「まあこういうのは誰がハマるか分からないもんだしな」

「ちなみに今の状況を整理するね。SSR子は手札2枚。属性カード1枚。ライフ7。玉藻前は手札5枚。属性カード0枚。ライフ6。SSR子優勢に見えるけどハンドアドバンテージが玉藻前にある分、まだまだ勝負は分からないね」


 そして、勝負は続く。

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