第19話
「とはいっても、そう一口には語れないのがシンレアリティ・ポイントよ。それはかの邪龍が黒炎の鈍き煌きが如き理解の拒絶に覆われているわ」
「かの邪龍ってどの邪龍だ」
「どこから話そうかねえ……そうだな、かの3日戦争にまで遡るぜ、SR姉貴。この凍て錆び朽ちし屈辱の叙事詩の楔を焼き、詰めを削ぎ、無慈悲な剛腕で破ろうとするなんざ、ヒヒッ。アンタも物好きだ」
「そうだね。まさかあの3日戦争を語る日が来るなんて。これも大邪神フェルクル……あ、これ以上は言っちゃ駄目だね。何せSR子は私達とは違って、オルクの落とし子じゃないからね」
「仕方ないことよR子。オルクの落とし子は呪われし煉獄に居るニワトリのようなもの。SR子のようなショッピングセンターでピーピーく乳飲み子とは違うのよ」
「SSR子。また方向性ブレてるよ。もうレパートリー尽きたの?」
「……」
SSR子はそっとSR子の耳に口を寄せる。
「……私、アドリブって苦手なの」
「知ってる。だからいい加減話せ。何なんだこの会議。さっきから全く進んでないじゃないか。もしもこれが活字になってたら、普通はここまで行きつかない」
「ふっ……。シンレアリティ・ポイント」
N子に目を向ける。
「それは神の到達点」
R子にパスをつなぐ。
「そしてそれは好事家の為のペテン」
SSR子に返す。
「さてどこから話そうかしら」
「語るに2日、至るに2年。約束の地へは20年……」
「遠きに遠き特異点……シンギュラリティ・ポイントすら凌駕するそれを求める故に」
「ポテトは半額となる」
「そしてポテトは滅びの道を辿り」
「無間の闇に落ち。さりとて人は繰り返す」
「私はケチャップを着けない」
「神はサイコロを振らない」
「己が神と知る神である。傲慢は傲慢とすらならない」
「胡麻ドレッシング」
「振りかけるという意味ではまさにそれだ」
「栄光を振りかけられ、傲慢なる神に、シンレアリティ・ポイントに至る者は近づき」
「イタリア飯はイカメシ」
「そしてイカメシはタコメシへと至り、終結する」
「N子。タコメシって何よ?」
「SSR姉貴。アンタを必死にフォローしまくってたのに何でディスるの? どんだけテメーボキャブラリー無いの?」
すいーっと気持ちの悪い挙動でSSR子はN子の耳ににじり寄る。
「……実は私、今はらぺこなの」
「だろーな。ほれ、おにぎり」
「恩に着るわ、可愛い妹よ」
「猿蟹合戦の猿みたいだなコイツ」
そしてもっしゃもっしゃとおにぎりを食べ始めるSSR子。SR子の眼に殺意が漲っていることに、彼女だけが気付かない。
「で。さっきからアンタが邪魔しまくってるシンレアリティ・ポイントの正体。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかな? この会議って、そもそもそのシンレアリティ・ポイントとやらを超えるための話だって聞いてたから、私も分かるように説明してくれないと困るんだけど」
「ふふ、そうねえ。そろそろおちょくるのも可哀想だわ。本気で教えてあげましょう? シンレアリティ・ポイントの恐ろしさを。そう。あれは、遠い昔。遥か銀河の果てで……」
「ごめん、SSR姉貴。アタシその映画観てない」
「私もそこまでしか知らない」
「…………」
裏切られたSSR子は、ペロッと指に着いた米粒を舐めとる。
「じゃあ、それは、十年前のことであった……キューーン、ダダダダーン、ダニー、グレッグ、生きてるかあ?」
「いい加減にしろこのボケポンコツクソ姉がアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
グワシャーーーーーーン! 机がひっくり返され、その勢いで覚醒の宝玉(R以下)が窓をぶち破る勢いで飛んで行った。
外では「ワーーー!?」「こ、これ、あの家のタマ兄貴!」「割れてるーー!」と大騒ぎである。しかし無視し、SR子はSSR子を引っ立てる。
「さっきからぜんっぜん話進んでないじゃないかお前のせいでえええええ!? わけわかんないごっこ遊びもいい加減にしろこのボケ! アホ! すかたん! 語彙力貧弱能無しスケベボディ!」
「ヒイイイイイイイ! ま、待って! 待つのよSR子! だ、だって、やってみたかったんだもんこういうの! いかにも頭良さそうな人達の賢人会議みたいなの!」
「お前だけ乗れてないだろ愚者! ついてこれてたのN子だけだよ、N子だけだよ賢者! っていうか功労者だよ! 妹ながら誇らしいよあのレシーブ力! お前の脳みそは芽キャベツサイズか!?」
「ママママママ、マアマア落ち着いて落ち着いて! バオバブくらいはあるわ、私の脳みそも!」
「お前の脳は何!? チブ〇星人!? そうだとしても全部腐りきってそうだけどなお前の脳も! もう我慢できない、久しぶりに折檻してやる! 来い!」
「ギャアアアアアアアーーーーー!? せ、折檻はやだ! SR子の折檻超怖いんだもん!」
「問答無用! 来い!」
「キャアアアアアアアア!」
そしてズルズル引きずられ、『SR子の折檻ルーム』と書かれた部屋へと引きずり込まれていくSSR子。彼女を見送ったN子とR子は、顔を見合わせる。
「で、シンレアリティ・ポイントって何?」
「んー、よく知らない。何かSSR子が突然思いついた言葉らしいけど。でも、多分アレには関係あるよね」
「ああ。あるな」
N子は割れた窓から、空を見上げる。
「超萌え萌え戦記・総選挙。上位5名は、新規SSR追加」
「つまりその5位以内がシンレアリティ・ポイントってことだよね」
ここまでの流れの全てを一回の会話で、二人は成し遂げた。
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