第76話 黒幕を追って




10:15

ラルキア城 廊下


「なんだ‥‥‥ その攻撃は‥‥‥ 」


周囲に火薬の匂いが立ち込める。

ベレッタの放った9㎜パラベラム弾は真っ直ぐ刺青男の右肩に飛翔し、真っ赤な鮮血を周囲に撒き散らした。


狙いも構えもヘッタクレも無い滅茶苦茶な射撃だったが、ちゃんと命中してくれたみたいだ。


「敵のお前に教えるわけねぇだろ‥‥‥」


ウォーターボールの衝撃と、壁に激突した痛みで軋む体を起こしながら、右肩から血を止めどなく流す刺青男を見下ろす。

少なくとも、今の状態でこの男が戦闘を続ける事は出来ないだろう。


「隊長‥‥‥ 隊長がやられた‥‥‥逃げるぞ!」

「なっ! 逃げるのか!? 待てお前ら!」

「逃がしません!」


少し離れた所で刺青男がやられた姿を見た他の暗殺者達は、統率を無くして前回の様に煙玉を使わず一目散に逃げ出した。

レーヴェが怒声を上げ、ドラルが逃げる暗殺者達へ矢を放つがそれは虚しく宙を舞うだけだった。


直前まで此処で戦闘があったとは思えない程、謁見の間へ続く廊下は静寂に包まれた。

今この場に居るのは、重傷を負った刺青男と既に事切れた暗殺者の遺体が数名。

そして擦り傷等は負っているが、命に別状の無い俺達5人だけだった。


「お前‥‥‥案外信頼されてねぇみたいだったな‥‥‥ 仲間の連中はお前を置き去りだぜ?」

「ふ‥‥‥ ヘマした奴は見捨てろと彼奴らに強要してきたからな‥‥‥ 自業自得だ‥‥‥」

「止めは刺さない。 お前はこれまでの行いを悔いながら、此処で静かに眠りにつけ」


よろめきながらベレッタをホルスターに入れ、再度壁に凭れかかる刺青男の顔を見下ろす。


殺しはしない。


直ぐに痛みから解放してやるのが武士の情けかもしれないが、見る限り此奴等はこれまで罪の無い人達を数え切れない程殺して来た筈だ。

それに加えてこの傷。放っておいても、この刺青男は後数分の命だろう。それに今は先を急がねばならない。


この男には今までの行いを反省させ、後悔の中死んでもらう。それが此奴等に殺された人達への手向けになる筈だ‥‥‥


「行くぞ皆!」

「で、でも良いのミカド?」

「あぁ‥‥‥ この傷だ。助かりはしないだろう。なら、此奴にはこれまでの行いを悔いながら眠ってもらう 」

「ミカド‥‥‥ 」

「時間が無い! 急ぐぞ!」

「「「「は、はい!」」」」


刺青男へ微かな同情を感じているセシル達に檄を飛ばし、俺は謁見の間へ向かった。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼



10:18

ラルキア城 謁見の間


「はぁ‥‥‥ はぁ‥‥‥ 」

「まさかここまでやるとは‥‥‥ 」

「ユリアナ‥‥‥ 」

「ユリアナ様!」


謁見の間には骸の山と血の海が出来上がっていた。

ユリアナの纏う白銀の鎧は敵の返り血を浴び、この鎧は初めから赤い鎧だったのではないかと思わせる程、その全てを赤く染め上げていた。


後ろに居るゼルベルとギルバードが不安げな声を上げている。


ユリアナは何とか隙を作りゼルベル達を逃がそうと考えていたが、敵は倒しても倒しても減っているように感じなかった。むしろ増えている錯覚さえ感じ始めていた。


( 一体私は何人の敵を倒した? )


正直な所、ユリアナは切り倒した人数が100を超えた辺りから記憶が曖昧だった。余計な事を考えている暇が無くなってきたからだ。


3方向から迫る敵の一点を強行突破しようにも敵は分厚い肉の壁を形成しているし、この反乱の首謀者ベルガスを打ち取ろうにも、彼の隣にはローズが居り、ユリアナは下手に手出し出来ない。


( まさか私達3人を殺す為だけに、ベルガスが100名を越す兵を用意しているとは予想外だった‥‥‥ )


ユリアナは救援が来てくれる僅かな希望を胸に戦い続けるしか無かった。


「さすがユリアナ様‥‥‥ 戦乙女ワルキューレの名に恥じぬ戦ぶり‥‥‥ですが、そろそろその活躍も潮時ですかな? 足が震えておられるぞ」

「はぁ‥‥‥ はぁ‥‥‥ まだ! まだ戦えます!」


ベルガスは操るローズを餌にユリアナ達へ降伏を進める等の行為はしなかった。


己に忠誠を誓う兵達が謁見の間に入った時点で既にチェックメイト。

既に勝ちを確信しているベルガスは、余裕綽々といった態度を崩さず、まるでサーカスでも見ているかの様にユリアナの奮戦ぶりを眺める。


権力と金の欲に呑まれた平民生まれのこの男は、足掻くユリアナを見てもうすぐこの国の頂点に立つ己の姿を想像していた。


そして同時に、ユリアナ達を降伏させ首を跳ねるのは結末としては呆気なさ過ぎる。

この者達をこの手で殺してこそ、名実共にこの国の頂点に立てるのだとベルガスは歪んだ心の中で思っていた。


一方、ユリアナは悲痛な表情を浮かべながらも必死に戦っていた。


( 確かに足は震えるし、愛剣バルバティスを持つ手に力が入らなくなってきた‥‥‥ でも私がここで諦めたら、ギルバードが‥‥‥ 父上が‥‥‥ この国を支えている希望が潰えてしまう! )


「はぁぁぁ!」

「くっ! まだこんな力を!」


( そしてローズ‥‥‥ 私の大切な妹のローズを道具として使い、ラルキア王国を支配しようとするベルガスに負ける訳にはいかない! )


「私は‥‥‥ 私はラルキア王国第1王女!戦乙女ユリアナ・ド・ラルキア!

貴方達の様な下賎な輩に屈する訳にはいきません!

例え剣が握れなくなろうとも、私は最後まで戦い抜きます! 地獄ヘレへ向かう覚悟の有る者よ! 私が相手です!」

「よく言ったユリアナ!」

「!?」

「あ、貴方は!!」


ユリアナは矜持を持って叫んだ。

するとその時、勢い良く謁見の間の正面扉が蹴破られる。


そこには漆黒の髪の青年と、その仲間の少女達が立っていた。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼



10:18

ラルキア城 廊下


微かに痛む体で走る事数分、目の前に巨大な扉が見えてきた。あの扉の先が俺達が目指していた目的地、反乱軍の兵士がユリアナやゼルベル陛下が立て籠もっていると言っていた謁見の間の扉だった。


扉の周囲には鼻を突く血の匂いが充満していたが、扉の付近に反乱軍の兵士やラルキア王国軍の死体は無い。


となると‥‥‥ 敵はもう謁見の間に!!


「ミカド! 敵は!?」

「わからん! でも、死体が1つも無いのにここまで血の匂いがするって事は、敵は謁見の間まで侵入しちまってるかもしれない!」

「っ! なら早く謁見の間に入ろうぜ!?」

「で、でも作戦は!? このまま闇雲に突っ込んでも!」

「ドラルの心配も最もだけど、今は悠長に作戦を練ってる時間は無い! ただ、何時でも俺の指示に従える様にしていて欲しい! 皆突入だ!」


謁見の間に入る直前、想像した物を形にする加護で再度太刀を召喚し、走り抜け様に拾う。


そして俺は、謁見の間に通じる扉を思いっきり蹴飛ばした。


「私は‥‥‥ 私はラルキア王国第1王女!戦乙女ユリアナ・ド・ラルキア!

貴方達の様な下賎な輩に屈する訳にはいきません!

例え剣が握れなくなろうとも、私は最後まで戦い抜きます! 地獄ヘレへ向かう覚悟の有る者よ! 私が相手です!」

「「「「「っ‥‥‥ 」」」」」


謁見の間へ入ると、透き通る様な‥‥‥ だが確かな決意と猛烈な迫力が篭った声が響き渡った。


その声を発した人物はかつて人だった者達に囲まれ、赤い水溜りの上で全身を鮮血で染め上げていた。

普通の人が見れば、死神が地獄の淵に立っていると表現しそうな光景だったが、俺には戦場に咲く気高くも儚い一輪の花に見えた。


「よく言ったユリアナ!」


思わず叫んでしまった。敵に絶対屈しない強い意志に、その心意気に、俺の心が無意識の内にそう叫んでいた。


「!?」

「貴方は!」

「ミカドさん!」


真紅の花を思わせるユリアナの背後から、ゼルベル陛下とその執事ギルバードさんの姿が見えた。良かった‥‥‥ ユリアナは返り血に塗れているみたいだが、どうやら3人とも無事みたいだ。


間に合ったんだ‥‥‥ 本当に良かった‥‥‥


「ミカド・サイオンジだと! 此奴がここに居ると言う事は、彼奴めしくじりおったか!」

「貴方はベルガス丞相!? それにローズか!?」


ユリアナと対峙する様、数多の兵の中で

この国の丞相ベルガス・ディ・ローディアが顔を真っ赤にして叫んだ。その表情は、数日前に見た好々爺とした彼からは想像も出来ない位の怒りに満ちていた。


そしてそんなベルガスの傍には、静かに佇むローズが立っている。


なぜ此処にベルガスが居るのか?


考えるまでも無い。このペンドラゴや、ラルキア城を攻撃したのは丞相ベルガス! 此奴に間違いない!!


「お前が‥‥‥ お前が全ての元凶か!」

「答える義理は無い‥‥‥ 魔術士兵! その者等の足止めをしろ! 他の者は一刻も早くユリアナ達を殺せ!」

「させるか! 皆、閃光手榴弾フラッシュバンを投げろ!」

「うん!」

「わかりました!」

「任せろ! ユリアナ様の前でミスったりするかよ!」

「了解‥‥‥」

「敵は何か仕掛けてくるぞ! 注意しろ!」


ベルガスが叫ぶ声を聞きつつ、俺達は其々が持っている閃光手榴弾のピンを抜き、宙へ放った。


「ユリアナ! ギルバードさん! ゼルベル陛下! 目を閉じて耳を塞いで下さい!」

「は、はい!」

「くっ!」

「うっ!?」


閃光手榴弾を投げた3秒後、謁見の間が眩い光と爆音に包まれた。


「がぁぁあ!?」

「め、目がぁぁあ!!」


数時間前、俺達を敵と勘違いし襲ったラルキア王国軍が体験した衝撃を、今度はベルガスを始めとした反乱軍達も体験する事になった。


特にこの反乱軍の兵士達は、俺達との距離が近かった事や俺達の挙動を警戒していた事、更に今回は光が拡散しにくい室内での爆発だったので、前回よりも効果があったみたいだ。


爆音と閃光をモロに受けた反乱軍の兵士達は、何が起こったのか分からず叫びながら蹲る。


「今だ! 反乱軍共を蹴散らせぇえ!!」

「「「「はい!!」」」」


目を閉じた事で視力は問題なかったが、閃光手榴弾の爆発音により、耳鳴りがする中、同じく耳鳴りしているだろうセシル達に聞こえる様に俺は腹の底から声を出し命令を伝えた。


セシル達の大きな返事が、微かに聞こえた。


「ベルガス様! ここは引いて下さい!」

「う、うむ‥‥‥ ローズも連れて来い!」

「待てベルガス! クソ! 邪魔だぁぁあ!」


閃光手榴弾で大多数の反乱軍をパニック状態に陥れたが、比較的効果の薄かった兵士数名がベルガスとローズを謁見の間から逃がそうとしている。

ベルガス達を追おうと駆け出したが、目の前にはパニック状態の反乱軍の兵士達が統率を無くし、犇めき合っているから思う様に前に進めない。


「はぁぁぁあ!」

「くらえぇ!!」

「やぁあ!」

「ふっ‥‥‥ !」

「撃ちます!」

「ぎゃぁぁあ! 」

「ぐはっ!?」

「ぐぎゃ!!」


だが、状況は一変した。

俺の指示通りに目を瞑ってくれたのか、直ぐに立ち直ったユリアナを始め、レーヴェ、セシル、マリア、ドラルが次々と反乱軍の兵士を討ち取り、兵士達が地面に倒れて行く。


暫くして‥‥‥

ほぼ無抵抗の反乱軍を打ち倒し反乱軍の包囲を抜けたが、既にベルガスとローズは謁見の間から姿を消した後だった。


「クソ、逃げられたか‥‥‥ 皆、怪我はないか!?」

「うん! 大丈夫!」

「私も大丈夫です!」

「おう! なんともないぜ!」

「大丈夫‥‥‥」


流石セシル達だ。セシルはギルドの依頼で一緒に戦っているから心配していないが、マリアにレーヴェそしてドラルの戦闘能力も並ではなかった。

マリア達は幸福の鐘で元ラルキア王国軍の人に訓練を受けていたと言っていたが、その元ラルキア王国軍の人は余程の凄腕だったのだろう。


「其の方等は、ミカド・サイオンジとセシル・イェーガー‥‥‥ それに幸福の鐘グリュック・グロッケンの子等か。 其の方等のお陰で命拾いした‥‥‥ありがとう」

「いえ、 ご無事で何よりです」

「ミカド様方のお陰で助かりました。心より感謝申し上げます」

「頭を上げてくださいギルバードさん。俺達は当たり前の事をしただけです」


謁見の間の敵を殲滅し、安全が確保されるとゼルベル陛下とギルバードさんが前に来て頭を下げた。


もしカリーナさん達と別れた後、そのまま第7駐屯地へ戻ってしまっていたら、ゼルベル陛下達は無事では済まなかったかもしれない‥‥‥ あそこでラルキア城に向かう事を選択して本当に良かった。


「ミカドさん、 貴方は何故此処に‥‥‥ 」

「それは後で説明する。それより逃げたベルガスとローズを追わないと!」

「で、ですが、父上達の警護をしなければ! 」

「そうですね‥‥‥ まだ城内に敵が居るかも知れません。そんな状況下で一緒にベルガス達を追うわけにもいきませんし‥‥‥」


ベルガスの後を追おうと、ユリアナ達に背を向けたが、ユリアナの言葉に踏み出した足を止める。 ドラルの言う通り、いくら謁見の間の敵を全て倒したと言っても、まだ敵がラルキア城内に潜んでいる可能性もある。


そうでなくてもラルキア城の外には他の反乱軍の兵士達が居た。


ゼルベル達を追うのは当然として、このままゼルベル陛下達を護衛無しに放って置く訳にもいかないし‥‥‥ どうするべきか‥‥‥


「「「「「姫様ぁぁあ!」」」」」


どうすべきか迷っていると、謁見の間に女性達の声が響いた。


「あれは!」

「ラミラ! 皆さん!!」


その声は、ボロボロになりながらも凛とした空気を纏った、ユリアナの護衛騎士団、戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲン団長のラミラ・アデリールを始めとする数名の戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲンの面々の声だった。


「ラミラ! 無事だったか」

「ゼルベル陛下! はっ! 報告します、我々戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲンは本日早朝、駐屯地でラルキア王国軍‥‥‥いえ、反乱軍数百名に攻撃を受けました。

しかし! 皆擦り傷等は有るものの、戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲン総勢100名健在です! 反乱軍と交戦中ラルキア城で火の手が上がったのを確認し、敵を蹴散らし馳せ参じました!

他の元は謁見の間の外で待機しております!」


数名の戦乙女騎士団の面々はザッと靴音を揃えながらゼルベル陛下の前に傅き、ラミラが代表して報告している。

ラミラの話を聞く限り、戦乙女騎士団も駐屯地で反乱軍の攻撃を受けた様だ。


恐らくベルガスの指示で‥‥‥


「ラミラ達が無事で安心しました。簡単に今の私達の置かれている状況を説明しますと、今ラルキア城はベルガスを大将とした反乱軍に制圧されかけています」

「な!? ベルガス丞相が反乱軍の大将!?

誠ですか姫様!」

「はい。本人の口から確かに聞きました。

そのベルガスは数分前まで此処に居ましたが、救援に来て下さったミカドさん方に兵を蹴散らされると、ローズを連れて逃げ出しました」

「っ! ローズ様は! ローズ様は人質に取られたと!?」

「詳しく話せば長くなるので、この件にカタをつけた後詳しく説明します。そして戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲン! 貴女達に命令です!

私はベルガスに連れ去られたローズを助ける為、ベルガスの後を追います!

戦乙女騎士団ワルキューレ・リッターオルゲンには、父上とギルバードを安全な場所に避難させた後、父上達の警護を命じます」

「なっ!? 姫様1人でベルガスを追うのですか!?」

「1人ではありません。ミカドさん達にも付いて来て貰います」

「‥‥‥ 失礼ながら納得出来ません! ここは我らが姫様と同行すべきで、陛下達の護衛はそこのミカド達に任せるべきです!

1度ならず2度までも姫様の危機に駆け付けられなかった我々ですが‥‥‥ それでも姫様が危険と分かっていながら離れるなど、我等の存在意義が!」


ラミラが凄い剣幕でユリアナに異議を唱える。他の戦乙女騎士団の皆も声にこそ出さないが、強く光る目がラミラと同じ気持ちだと物語っている。


これだけで、彼女達が心の底からユリアナを尊崇しているのがハッキリと分かった。


「ラミラの言葉、とても嬉しく思います。

ですが‥‥‥ 今この状況に置いて、父上とギルバードを護る重要な任務を任せられるのは、私が全幅の信頼を置いている貴女達意外には考えられません。

父上達を護って下さい‥‥‥ お願いします」

「「「っ‥‥‥ !はっ! 全身全霊を持って、ゼルベル陛下とギルバード殿をお護り致します!」」」


ユリアナはそう言うとゆっくり頭を下げた。

それを見た戦乙女騎士団も、頭を地面にぶつけそうな勢いで深々と頭を下げる。


彼女達は心から慕うユリアナにお願いしますと言われたのだ‥‥‥ 心の底から信頼し、命を賭して仕える主人から頼むと言われれば、それに異議を唱えられる人が居るだろうか?


否、居るはずがない。


少なくとも、俺がラミラ達の立場だとしたら異議を唱えようとは思わない。ラミラ達も俺と同じ考えらしく、主人の命に全力で応えると返事を返した。


ユリアナは本心から言っているのだろうが、こんな事を言われたらユリアナに忠誠を誓うラミラ達が反対できる訳ない。


これが天然ってやつか‥‥‥ いや、違うか。


「皆さん、父上達を任せます。 さぁミカドさん! ベルガス等を追いましょう! あの様子ではまだ遠くへは逃げていない筈です!」

「あぁ! 彼奴には聞きたい事が沢山ある!

こんな所で逃してたまるか!」

「お供しますユリアナ様!」

「微力ながら、私達も力になります!」

「まさかユリアナ様と戦えるなんて‥‥‥ が、頑張ります!」

「私も頑張る‥‥‥ 」

「頼りにしていますよ皆さん。行きましょう!」


半ば放置されかけていた俺達の方を見たユリアナは頬に付いた血を拭い、ベルガス達が出て行った扉に向かい走り出した。

俺、セシル、マリア、レーヴェ、ドラルもその後に続いた。


「ミカド! 姫様に何かあったら、殺してやるからな!」

「ユリアナ様を頼みますミカド様!」

「皆、無事に帰ってくるのだぞ」

「はい! 行ってきます!!」


ラミラとギルバードさん、そしてゼルベル陛下の声を背中に受けながら、俺達は謁見の間を飛び出した。

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