追記 「解く」ための手引き
まず始めに、五十話分に到達した際の紹介文より――
【話数順不同で送る現代怪異譚――として公開してきましたが、五十話を超えましたので、手の内を少しだけ明かします。
実は、ここに集められたすべての怪異には、どれも明確な「得体」が存在しています。ただし文字に起こすに当たって、意図的にその「得体」を伏せさせていただきました。
人は昔から、怪しい出来事に遭遇すると、必ずその「解釈」を試みてきました。解釈と言っても、必ずしも現実的な視点は必要なく、幽霊・狐狸・神仏といった「答え」が多数生まれました。
しかし逆に言えば、そうした「解釈」をすべて削ぎ落した話こそが、「怪談の原石」と呼べる……と僕は考えています。
この『夜行奇談』では、そんな「怪談の原石」にこだわった描写を目指すとともに、一方で「解釈する楽しみ」のご用意もさせていただきました。
純粋に怪異を妖しむも良し、得体を解き明かすも良し――。どちらの楽しみ方もできるよう、心がけております。
最終的な「答え」は、すべての話が終わった後に明かしますが、それはまだまだ先の話。今しばらく、現代に息づく怪異の物語をお楽しみくださいませ。】
◆
本項は、『夜行奇談』の前半である百五のエピソードが終わったタイミングで、追記として書き置くものである。
……なお、『夜行奇談』を純粋に怪談集として楽しんでいらっしゃるかたにとっては、以下の内容は、かなり蛇足的なものかもしれない。
従って、敢えて目を通さずにおく――というのも一つの選択肢である。
どうするかは、皆様それぞれにお任せしたい。
◆
さて、改めて明言させていただく。
本作『夜行奇談』で僕が紹介している怪談は、どれも明確に、得体を「解く」ことが可能である。
もちろん紹介文にあるとおり、解かなくとも楽しめるよう心がけてはいる。しかし読者のかたの中には、この紹介文を見て本作にご興味を持たれたかたも、もしかしたらいらっしゃるかもしれない。
ただ――あいにく僕が答えを示すのは、すべての怪談を語り終えた時。つまり、まだまだ先の話である。正直なところ、それが何箇月後になるのかは、皆目見当もつかない。
これは読者の皆様にとって、極めて不親切な状況と言えるだろう。
……そこで、だ。
このタイミングで一度、「解く」ためのヒントをまとめておこうと思う。
解きたいかたは、以下のヒントを参考に、お考えいただければ幸いである。
【ヒント】
●「はじめに」で明記したように、話数と怪異の内容は、密接に関係している。
●話数の順不同な並びについては、実は特に大きな意味はない。
●両者の関係を見抜くには、それなりにマニアックな知識が必要となる。ただし怪談を好むようなかたであれば、その一端にどこかしらで触れている可能性は、ゼロではない。
●前半は百五話で終了した。後半は、もう少し短い話数になる。
●ご紹介した怪談の中には、「これは誰それの幽霊である」といった具合に、怪異の得体が明言されてしまっているものもある。一見紹介文と矛盾しているように思えるかもしれないが……これについては、そもそも「得体を解く」という言葉自体に、多少の引っかけが含まれている――とお考えいただきたい。
以上――。
ご興味のあるかたは、ぜひ挑戦していただきたい。
……もっとも、怪異を解き明かすというのは、即ち「恐怖を緩和する」行為でもある。
もし解き明かした結果、『夜行奇談』で語られた数多の怪異が、まったく違う印象のものに置き換わってしまったとしても、そこはご容赦願いたい次第である。
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