第九十九話 仰向け

 高校生のWさんが、夜、和室の布団で寝ていた時のことだ。

 いつもの寝相でうつぶせになり、枕を抱き締めるようにして眠っていた。

 布団がはだけて、肩がはみ出している。寒いな――と、少しだけ意識が覚めかけた。

 その時だ。ふと冷えた両肩に、誰かの手が触れる感触を覚えた。

 あれ……と思った瞬間、クルン、と体を引っくり返された。

 仰向けにされて、Wさんはハッと目を開けたが、部屋には誰の姿もなかった。


 そういうことが何度か続いたある日、Wさんはふと、木目の天井の片隅に、小さな節穴を見つけた。

 気になって穴を塞いだところ、なぜかそれ以来、仰向けにされることはなくなった。

 ただ――どうやら天井裏に、がいるらしい。時々コツコツと、天井越しに和室を叩く音がするそうだ。

 Wさんは、高校を卒業したら、家を出るつもりでいる。

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