第百五十九話◆最後の試練へ
左の道を進んでいたアウロラ、ロサリオ、ガリファリア、オルテガは、土の壁の洞窟をそのまま進んで行く。
道の横幅は3mほどあり、天井の高さも2m以上はあったが、ダグラスが通るとしたら少し窮屈だったことだろう。
こちらの道は右側の道と違って整備はあまりされていなかったが、魔物がチラホラと現れる。
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「…また魔物だ!数は2!今度はロサリオ、貴方がお願い!」アウロラが指示を出す。
「了解だ!」そういってロサリオは目の前の魔物に手を向けて詠唱した!
(目の前の蜘蛛の魔物と蛇の魔物に破裂する炎…手から発射……魔力100使用)「発動!」
ロサリオの手からパァン!という破裂音が鳴ったと思えば、蜘蛛の魔物と蛇の魔物の間へ火の玉は着弾し、それがゴゥッ!という燃える音で拡散し、まるで炎に意思があるかのように魔物二匹だけを狙って燃やし尽くす!
「ギイィィィィ!!」「キシャアアァァァァ!!」とそれぞれ断末魔を挙げて二匹の魔物は動かなくなる。
魔物の死亡確認はアウロラがやってくれた。
魔物とは別でトラップなどもあり、極稀ではあるがトラップに掛かって死んでいる魔物もいた。
トラップがあるということは人工物だろうか?そう考えていると……
「さっきからあるトラップが気になっているのか?」主に原始魔法でトラップの対処をしてくれていたガリファリアが戦闘を歩くロサリオに聞いた。
「あぁ…この洞穴……人工物か?」
「その可能性はある。恐らく他の道でも魔物やトラップに出くわしているだろう……皆の無事を祈りつつ、我々も気を引き締めて行こう」
「もしかしたら……ここを作った人の遺品とかがあるかもな」オルテガが言う。
そう言いながら、そして魔物とトラップの対処をしながら進んでいくと、行き止まりだった。……が、視線の先には真っ黒な台座があり、その上には黄色い球が置かれていた。
「これは…なんだ?」ロサリオがまじまじと見つめる。
「……魔力も何も感じられないわ」アウロラが言う。
「トラップもないようだ……手に取ってみろ」そう言って、ロサリオは頷いて黄色い球を手に取った。
丁度手の平で握れるソフトボールほどのサイズだった。
「……何なんだ?これ……」
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それと同じ頃、右の道を進んでいたチームも台座に置かれていたドーナツ型の不思議なリングを手に取っていた。
「何だこれ?周りには特に何もないか?」ダグラスが他の皆に確認したが、アンサとダラリアも周囲を見渡してから頷いた。
「じゃあ……来た道戻るか」
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そして中央の道を進む好矢、沙羅、エヴィルチャー。
三つの道の中でも中央の道が一番広く、結構最初の方からレンガ調の壁に、石で出来た床に変わっていた。
道幅は4,5mほどと広く、天井の高さもおよそ4mほどあった。ダグラスがミョルニルを振り下ろせるほどの広さだった。
そんな中央の道では先程から、激しい戦闘が行われている……。
完全魔法型の魔物や、完全物理型の魔物が入り混じって次々と襲い掛かってくるのだ。
完全物理型にはエヴィルチャーが、完全魔法型には沙羅が対処し、何故か魔法が上手く扱えない好矢は不思議そうにしながらもミスディバスタードで戦っていた。
「はぁっ…はぁっ…魔物の数が尋常じゃないな……他の皆が心配だ……」好矢がそう言うと、また進み始める。
この中央の道には魔物の数こそは多いものの、トラップが全く無かった。ただただ中々の強さの魔物が多く存在していたのだ。
この大陸の人種族ではまず勝てないようなレベルの魔物ばかりだった……だが、洞穴から出ないのはきっと――――
「――この奥に五大魔器があるってこと?」沙羅が聞いてくる。
「可能性はあるはずじゃ。五大魔器から発せられる魔力に魔物が寄り付いた結果と考えれば……」
「なるほどな……だから魔力をほとんど持たない大陸の陸地には魔物が滅多に現れない…ということか」
そうこうしている内に、視線の先には石版が置かれていた……。
「……これは?」
「読めない……」好矢も沙羅もこの世界の共通語はほとんど読めなかった。全く読めないわけではないのだが……。
「仕方のない奴らじゃのう……」そう言ってエヴィルチャーが石版に手を当ててじっくり読み始める……
“力と頭脳を併せ持つ者よ 騎士と共に鍵を取れ 騎士は汝の味方となりて 最後の試練が汝を待つ”
「……と書いてあるな」
「騎士って何なのよ……」
「力と頭脳……今までの道が試されている道だとするならば、全く頭脳は関係無さそうだけど……魔物と戦って力しか見せていないはずだ……」そういう好矢。
「もしかすると、他の皆が向かった左右の道で何かがあるのかも……」
そして、他の皆へMMを飛ばすことにした好矢……
『中央ルートの好矢だ。道の先に石版を発見。そこには“力と頭脳を併せ持つ者よ 騎士と共に鍵を取れ 騎士は汝の味方となりて 最後の試練が汝を待つ”と書かれていた。騎士らしき者や鍵はあったか?』こう書いて飛ばした。
しばらく待つと、他の仲間からMMが送られてきた。
『メルヴィンです。右ルートは騎士らしき存在どころか魔物すらいませんでしたが、ドーナツ型の金属板のようなものが奥にありました。これが鍵の可能性はあるかと思いますので、中央ルートへ持っていきます』
『左ルートのアウロラよ。魔物やトラップは結構あったけど、騎士っぽいヤツはいなかったわ。鍵は……多分だけど黄色い球があったから恐らくこれじゃないかな……?』
手元に届いたMMを呼んで言う好矢。
「騎士らしきヤツはどちらのルートにもいなかったそうだ。……どうしたもんか……」
「完全に手詰まりね……とりあえず鍵はあったの?」
「鍵らしき物はあったそうだ。ただ、ドーナツ型の金属板と黄色い球らしい……恐らくここに嵌めるんだろう」そう言って指差したのは石版の横にある丸い形状が二つ並んだものだった。
ドーナツ型の金属板が嵌められそうなくぼみの右上に丸い形状のくぼみがあった。両方を嵌めれば“最後の試練”とやらを受けられるのだろうと察する。
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しばらく待つと、他の仲間たちが歩いてきた。どうやら三叉の別れ道で合流したのだろう。一人も欠けることなく来てくれた。
「待たせたな!これが俺たちが手に入れた鍵らしきものだ!」ロサリオとメルヴィンはそう言って前に出て、黄色い球とドーナツ型の金属板を手渡してくれた。
ちょうど、奥のくぼみに嵌められそうなサイズだった。
「なるほど……じゃあこれを嵌めれば良いのか。……でも、騎士って何のことだ……?」好矢が呟くが、ロサリオに背中をポンと叩かれて我に返り、二つの鍵をくぼみにしっかりと嵌めた。
すると、ゴゴゴゴ……という音を鳴らしながら、奥には開けたドーム型の部屋があった。
レンガ調だった壁はその部屋から真っ白に変わり、ミスリルの青い光りの柱が等間隔で部屋の周りを囲むように立っており、それが部屋を青く照らしてくれる。
中央には真っ黒で冷たい粒子を漂わせる弓矢を一人の男性が持っていた。
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