第百五十三話◆天帝の破杖

(((浮上する身体……自由に空を飛翔出来る風の翼……無限詠唱待ち状態を常時保持……魔力1200使用)))…「「「発動!」」」


風属性魔法を扱えるメンバーである、好矢、メルヴィン、ロサリオ、ダラリア、オルテガは空へと飛び上がった!

そして風属性魔法を扱えない、沙羅、アウロラ、ダグラスの三人のうち、沙羅はアンサの背中に肩車のような要領で乗り、ダグラスとアウロラはドラゴンに変身したガリファリアの背中に乗っていた。


ガリファリアへの身体の負担はあるものの、ダグラスとアウロラの雷属性の物理攻撃、攻撃・補助魔法はかなり強力だ。そこへドラゴンビームの火力が加われば、最強のコンボになるだろう。

そして、アンサの背中に乗った沙羅。アンサはバハムートへ対して攻撃することをほぼ諦め、皺月の輝きの中でも最強の沙羅に全てを托した。

臨機応変に空を飛ぶが、沙羅から指示があればその通りに飛ぶつもりだった。



「ギャァオォォォォォム!!」バハムートの咆哮が大気を揺らす!

今まで自分のエサ以外の何者でもなかった人種族が、自分へ真っ向勝負を挑もうとしていることに対し、驚きがあるようだ。


「よし、行くぞ!!」皺月の輝きは全員でバハムートの四方を取り囲み、一斉攻撃に出た!


今まで一方的に捕食してきただけで、戦いをしたことがなかったバハムート。どれを相手にすればいいか対処に悩み、真っ先に狙ったのはガリファリアだった!

ガリファリア、ダグラス、アウロラの三人が一緒になっているので、一番大きなエサがやって来た!とでも思ったのだろう。バハムートはそのまま口を開けて突進してきた。


「ガリファリア!十分に引き付けてから、喉奥にドラゴンビームをお見舞いしてやってくれ!」ダグラスはガリファリアに指示する。


「簡単に言ってくれる…!ハァッ!!」ガリファリアの発声と共に口からビームが発射される。

そのまま、喉奥に命中するのと同時に、その箇所にミョルニルによる電撃を飛ばすダグラス。


弱点の箇所にビームを受けて、そこへ電撃が直撃した!


「ギャアァァァァァァ!!!」物凄い咆哮で、再び大気を揺らすバハムート。

しかし、ガリファリアのドラゴンビームに関して言えば、消耗している状態で魔力を振り絞って使用したため、火力も低かった。

だが、ミョルニルの電撃はかなり効いたようで、ドラゴンビームの対象物を蒸発させるレベルの熱光線の命中箇所に弱点属性を叩き込めた。これでかなりの大ダメージを与えられたはずだ。

相手が人間やただの魔物であれば、一瞬で消え去るような攻撃だった。




……そう。ただの人間や魔物であれば……だ。




バハムートは自分に対して初めての攻撃を仕掛けてきたガリファリア、ダグラス、アウロラの三人をギロリと睨みつけ、海から飛び上がるようにして突進攻撃を仕掛けてきた。

口はしっかり閉じて突進してきたのは、先程の攻撃を再び食らってしまうとマズイと思ったのだろう。

だが、その攻撃手段そのものが好矢にとっては決定的瞬間であった。

つまり“バハムートは確実にダメージを負っている”ということだ――



「ガリファリア!右へ旋回してくれ!」ダグラスの声に反応する龍神化したガリファリア。


「解っている!」バランスを崩しそうになるアウロラを、ガリファリアの背中の突起で身体を固定しているダグラスが腕で支える。


「あ、ありがとうございます!」


「礼を言う暇があんなら詠唱しろ!」


上手く回避出来たガリファリアはぐるりとそのままバハムートの後ろ側に回り込む。

獲物を見失ったバハムートはキョロキョロと辺りを見渡す……。


「ガアァァァァァァ!!」今度は別の咆哮をあげながら、今度はアンサと共にいる沙羅に攻撃対象が移った!


「アンサ、来るわよ!上へ飛び上がれる?」


「愚問だ……!」バサァッ!と一気に上昇し、上へ回避し……そのままバハムートの脳天へ急降下を始めるアンサ。


「やってやれ、サラ!」


「えぇ!」コールブランドを進行方向へ構える。


ザクッ!…鈍い刺突音が、急降下のスピードも加わった高速突き攻撃をバハムートの頭へ直撃させた事を知らせる。

そして、それと同時にコールブランドに嵌められていた幻惑の魔宝珠が発動した!


「ガアァァァァ!!…ギャアァァアァァァアアァァァアァ!!!」今までを軽く超える爆音で咆哮を挙げてのたうち回るバハムート!


「う、うるさっ……!」アンサの鉤爪を使い、一気に剣を引き抜く沙羅。


そこから一気に翼で飛び立つ!

そこへ……


「発動!」好矢の声が響いた!

「みんな!離れろ!!…ロサリオ!あのに最高火力で雷属性魔法を頼む!!」好矢は自身の創り出した魔法バフを指差す。


「黎明の天罰か……!」ロサリオが懐かしさからフッと笑みを浮かべる。まさか自分が黎明の天罰を扱える日が来るとは思わなかった。

あの日以来見たことがない……トーミヨで好矢が別のチームに使っていた黎明の天罰……しかし、その魔法バフのは……ただの点だったはずだが…………



(雷属性魔法…最高火力の雷球……魔法バフの球体へ……魔力2400使用)「発動ッ!!」


魔法バフの球体よりも上に膨大な魔力を使用した雷球が現れ、その魔法バフの球体へ落ちる……!


「!?」バハムートも異変に気が付いたようで、自身の真上にある魔法バフを見た!


しかし、今からじゃ回避は出来ない。


カッ……!

雷球と魔法バフの起点がぶつかった直後、光った!

そして、その少し後……



ズガアァァァァァァンッ!!



強烈な光線が剣で刺されたバハムートの脳天を貫く!!その光線はバハムートの身体の全身を包み込む……

収束され切らなかった余分の電気は周りをビリビリと鳴らす!



「な…何なの…アレ……!」


たまたまロサリオの近くにきていたアウロラが呆然とする。


「ヨシュアが起点を創って、俺がそこに火力を叩き込む…そうして完成した黎明の天罰だ!!」ドヤ顔で言うロサリオ。


アウロラがトーミヨで五年間在学して見たことがあるのは、好矢が創った黎明の天罰……そして、自身が一学年の頃に五学年の先輩が使っているのを見た……

しかし、そのいずれも今回放った魔法の威力とはかけ離れていた……。そもそも形状が少し違う。


黎明の天罰ならば、真っ直ぐ下に電気で出来た収束された光線が落ちる。しかし、今回は収束し切れないほどの火力だ。

直径およそ100m以上はあるだろう…。



近くに来た好矢が言った。

「あれは天帝てんてい破杖はじょう……黎明の天罰の上を行く大火力魔法だ」


「天帝の……」


「破杖……」


そのあまりにも絶大過ぎる威力にだんだんと恐怖が込み上げてくるロサリオ……



しかし……

「グオオォォォォォォォ……!!」


“奴”はまだ生きていた……

プスプスと音を立てながら、全身が黒く焦げながらも、バハムートの身体は生命活動を続けていた!


「ッ……!?な…何て生命力だ…アイツ……!!」



好矢がそう言ったのをキッカケに、バハムートの眼が光った!


すると、頭上に無数の魔法が接近している事を、その魔法が纏っている魔力で感知するアウロラ。


「いけない!皆逃げて!!」


天から無数の氷の矢が降り注いできた!

ハルティート大陸へ着く前に船でバハムートから攻撃されたあの地面から氷を生やす魔法だ。


恐らく、自分が当たったら、身体を貫かれた上でそこから更に深い傷にする為にメキメキと枯れ木のような形に変わるのだろう。

だとするならば、直撃したら確実に死ぬ魔法だ……


それを天から無数に降らせるバハムート!

バハムートはその巨体から、氷の矢を躱すことは出来ないが、自身は大したダメージを受けていないようだ。



オルテガとメルヴィンは並んで、メルヴィンの炎魔法、オルテガの斧で、槍を弾いていく!


他の皆も各々の武器で弾く!


しかし、上に対処している間に……


「グオオォォォォッ!!」口を開けたまま突進してきたバハムートに、メルヴィンとオルテガがバクンッ!と飲み込まれた!


「メルヴィンッ!…オルテガッ!!」


「うそ……!」唖然とする周囲……


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