第五章★皺月の輝き編

第九十九話◆巨人族の街タイタス

時は遡り巨人族領へ向かう好矢たち。

道中で道から少し外れると、ライドゥルの群れがいたので、人数分捕獲しておくことにした。

しかし、まだロサリオが起きていない。気絶しているロサリオをライドゥルに乗せて走らせるのは危険なので、とりあえずそのままライドゥルを引き連れて歩くことにした。


「……よし、街が見えてきたぞ。」好矢が指を差す。目の前に見えるのは巨人族の街タイタスだ。


「……好矢、彼起きたわよ。」沙羅が声を掛けて来た。


担いでる木の棒の上を見ると、縄で縛り上げられて木の棒に括り付けられているロサリオが状況を理解できていない表情でキョロキョロしている。

「……。」

好矢は無言で木の棒を地面に下ろす。


「……よう。起きたか。」


「てめっ!ヨシュアッ!何だこれ!解きやがれ!!」起きた途端元気になるロサリオ。


「お前、模擬戦でいきなり俺に魔法撃ってきただろ。それの対処のために敢えて縛り上げたんだよ。」好矢はとりあえず丁寧に理由を説明する。


「理由は解ったけど、俺は何もしねえから解けよ!」若干うるさかったが、これ以上うるさくなっても困るので解いてやることにした。


「……ほら。これで動けるだろ。」


解かれたロサリオは立ち上がり、服についた汚れをパッパッと叩いて落としてから、好矢の方へ向いた。

「……全く、変な角度で縛られてたから肩が痛いぜ。」そう言って、自分の荷物を背負い直し周囲を見渡す。

「ここ、ベリウム街道か?」


「あぁ。これから巨人族の人間を仲間にするつもりだ。……ロサリオ、お前はどうする?」


「……お前らは何の為に巨人族を仲間に?」


「魔王ガルイラからの命令で俺が仕切っている皺月しゅうげつの輝きを世界最強のハンターチームにして、邪悪なる者を倒せって言われたんだ。」


「邪悪なる者を倒すためのチームを作ってるってわけか……。」そう言ってロサリオは考えた。

(本当にそれが目的でハンターチームを作っているとしたら……本当に邪悪なる者を倒せたら……そうだ!俺がこの皺月の輝きに入って邪悪なるものを倒せたら……きっとヨシュアは「ロサリオくんのお陰で邪悪なる者を倒せた!本当にありがとう!!」と言って、色んな人達から俺が感謝される…そしてアデラちゃんが俺に振り向いてくれる……!…完璧だ!!)

「…よし、決めたぞ。」アデラのことを考えて、ニヤけそうになる顔を必死に抑えて平静を装ってロサリオが言う。

「俺も皺月の輝きに入れてくれ。」


「えっ…なんで?」好矢は正直驚いた表情で返した。


「俺も世界の為に何か出来ないかと思って旅をしてきたんだが……ここへ入ってお前みたいなクソ野郎の手伝いをするのもアリかなと思ってな。」


「そんなクソ野郎の俺に戦闘中指示されることになっても良いのか?」好矢は平然と言う。


「…………。」黙ってしまったロサリオに好矢は続ける。


「そもそも、俺がお前に何をした?クソ野郎と呼ばれる筋合いも無ければ、俺はお前に恨まれるような事をしたことはない。」アデラが余計なことを言ったせいで恨まれているだけだ。

当の好矢は模擬戦中、ロサリオを集中砲火したことも無ければ、普段の学校生活でもロサリオの教科書やノートを燃やしたり、上履きをゴミ箱に捨てたり、彼が生徒手帳に入れているアデラの写真を破り捨てたりはしていない。

本当の意味で何もしていないのだ。そもそも、模擬戦が始まるまで接点すら無かった。


「……すまなかった。」


「えっ?」好矢は聞き間違いだと思った。ロサリオから謝罪の言葉が出るなど有り得ない。


「あの時は…すまなかった。あれは……確かに俺が悪かった。言い訳すれば、アデラちゃんが好きすぎて頭がおかしくなってたようだ。」それは今もだろ。とツッコミたかったが、好矢は黙って聞くことにした。


「……だから最後に、アデラちゃんの彼氏が誰なのか教えてくれ。」好矢はとりあえず教えてやることにした。


「アデラの彼氏はガブリエルだ。三度目の告白で付き合えたらしい。」


「くそっ……やっぱりガブリエルか……!!」


「で、ロサリオ。結局お前はどうするんだ?」好矢が頭をポリポリ掻きながら言う。


好矢の、もう早く進ませてくれと言いたげな表情を察したロサリオが言う。

「……俺も付いて行く」そう言った後、たまたま近くを走っていたライドゥルに捕縛魔法を掛けて、火を少し食べさせた後に乗り込んだ。


これで皺月の輝きのメンバーは、好矢、沙羅、アウロラ、メルヴィン、ロサリオとなった。

これから仲間にするのは巨人族の味方……上手く仲間になってくれれば良いのだが、当然メルヴィンの時のようにすんなり上手くいくわけもなく……。



巨人族領の街の前に着くと、門番の男が声を掛けて来た。「お前の名は?」

巨人族…という名前から超巨大な人間を想像しがちだが、彼らの身長は一般的な人間よりも一、二回り大きいくらいで、かなり筋肉質でガッシリとした体型をしている。

人間の成人男性の平均身長が170cm前後だとすると、彼ら巨人族の成人男性の平均身長は、210cmなのだ。必然的に見上げて話す必要が出てくるが、超巨大というほどでもない。


ライドゥルから降りて、好矢は一礼をして始める。

「俺はハンターチーム皺月の輝きのリーダー。名前は刀利好矢。魔王ガルイラの命令で、世界各地から他種族の仲間を集める命令を受けてきました。それを伝えるために巨人族の長にお目通り願えますか?」


「僕も元々エルフ族の王家の人間でした。こちらのトール・ヨシュアの言葉を受けて味方になることを決めました。」


「私はアウロラ・ベレス。魔王都ガルイラで魔導兵をやっていた者です。」


「……して、そちらは?どこかで見覚えがあるのだが…。」門番の男が訪ねてくる。


「刈谷沙羅です」沙羅はそう言うと、免罪符のようにコールブランドをチラッと見せた。


「キャリヤー・サラ……あのサラ・キャリヤーか!どうして貴方様が現世に?」門番がまた訪ねてくる。


「魔王都ガルイラに封印されていたコールブランドに肉体を封印されていました。封印は解かれ、邪悪なる者も同じく既に解封されていますが、今はおそらく力を蓄えているものと思います」


「そうでしたか……!サラ・キャリヤー様は伝承通りの美しい御方だ……。だが、我々の王様はここ、タイタスの街にはいない……とりあえず、皺月の輝きのメンバーの通行は許可する。……面倒だけは起こさぬようにな!」

門番はそう言って、街の門を開けてくれた。




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