第九十四話◆模擬戦決勝
――Zチーム控室。
「お前、とんでもなく強かったんだな……悔しいけど、俺よりもよっぽど強いよ……」グレンがサミュエルに言う。
「そんなことないよ…僕は弱いから原始魔法の勉強を始めたんだし……」サミュエルが嘘をつきながら謙遜する。いや、弱いから原始魔法の勉強を始めたのは本当なのだが……。
「それはそうと、こんだけ強ければ余裕で優勝出来るわね。」ナディアが言う。
「よっし!Zチームが優勝して、優勝賞金がっぽりいただこうぜ!!」グレンが四人に声を掛けた
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あれから、一般魔法に慣れるため、敢えて原始魔法を使わずに勝ち進み、決勝戦になった。
模擬戦の決勝戦はTチームvsZチームだ。
Tチームのメンバーは、ドリス・マカヴォイ、ヒルベルト・オーウェン、アーロン・ビーティー、ミラベル・クライトン、ビビアナ・スペンサーの五人だ。
ドリスは四学年二位(本当は三位)で、ヒルベルトがその次の魔力量を有する。四学年のトップクラスの強さを誇る魔導士だ。
当然、サミュエルもグレンも男性なので、ドリスは四学年の女子学生の中では文句なしの最強の魔導士だった。また、相手チームでマインドコントロールされていないのは、ドリス一人だけだ。
戦闘フィールドで向かい合う両チーム……。
「さぁ、皆様大変長らくおまたせしました!これから行われるのは、国立魔導学校トーミヨ魔法学科四学年の模擬戦・決勝戦です!!」
まだ始まってもいないのに、歓声が挙がる。かなり騒がしい。
サミュエル、グレン、ドリスの三人は、他のメンバーに気付かれないような小ささで頷いて合図を送り合う。
この合図は「上手くやるぞ。」という合図だ。模擬戦でしっかりと戦いはするが、他のマインドコントロールをされている学生になるべく馴染んで戦おうというものだ。
「では、四学年模擬戦決勝戦TチームvsZチーム……始めッ!!」
「「「「発動」」」」
両チームのメンバーは一斉に魔法を放った!
ドリスは得意属性が雷属性なので、同時詠唱でサミュエルとグレンに撃つ!
グレンへは強い魔導士への牽制として。サミュエルへは魔力の低い弱い魔導士へダメージを与えるため。
戦闘フィールドに張られている障壁のゲージは、全員共通なので、誰か一人を集中砲火するだけでも勝ててしまう。それ故の作戦だったのだが、サミュエルは今や素の魔力だけで抑え込めるほどの魔力を有しているので、ドリスの落雷魔法はほとんど聞いていなかった。
ドリスの魔法でZチームのゲージは8%ほど削れたのだが、グレンへのダメージで7%、サミュエルへのダメージで1%といった程だ。
他にも、ヒルベルトは自身の得意な金属魔法で武器を創り出し、アーロンは火属性の渦を作りそれをZチームの周りに出した。
ミラベルとビビアナは共同で土属性の物理魔法障壁を創り出した。
対するZチームは、グレンは自身が得意とする光属性魔法で矢を生成して敵に発射。
ヒルベルトへ向かって真っ直ぐ突き進んだものの、ヒルベルトは生成した剣でその矢を弾いた!
ナディアは火属性で火球を創り出しドリスへ発射する!これはドリスに命中し、相手のゲージを一割ほど減らすことが出来た。
カミラは氷属性でつららを空中に五本作り出し、それを風属性魔法による同時発動で物凄いスピードでヒルベルトへ発射した!
グレンの光の矢を弾いたのと同時に五本のつららが来てしまったので、対処が追いつかず、五本のうち二本は外れたものの、残りの三本がヒルベルトに突き刺さった!
これでゲージを一気に二割まで削る。
サミュエルは火属性魔法を発動させ、Tチームの地面から火炎を吹き出させ、相手を焼いていく。
その強い熱で徐々にゲージが減り続けていく……
「こいつらかなりタフだぜ!サミュエル!原始魔法使え!」グレンが合図した。
仕方なく一回戦で放った原始魔法とは別の魔法を放ってみることにした。
(
バァン!!という音を立てて、巨大な氷塊がTチームの学生全員を包んだ!それと同時に一気に七割ゲージが削れた!
そして、その氷塊はミシミシ音が鳴っている……。
氷塊から聞こえるミシミシという音は、その氷塊に包まれた相手への攻撃のための衝撃による音だ。
因みに、その衝撃は与える度にTチームのゲージをガンガン削っていった……。
そしてそのゲージが残り一割ほどになった時……パァァアンッ!!という音を立てて氷塊が破裂する!!
残りのゲージが一割ちょっとというのは、Tチームにとってはかなり危険なはずだが、ギリギリで耐え切ったのだ。
「こいつらギリギリとはいえ耐え切りやがった……!」驚くグレン。
「グレン!今のうちに!」ゲージの残り一割を削るように指示するサミュエル。
グレンはその指示を受けて、彼が使える最高魔力で光属性の攻撃魔法を放った!それは超高速の光球で、それはアーロンに向かって飛んで行き、命中してTチームのゲージが空になった!
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しばしの沈黙の後……
「優勝は――Zチームだあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
ワアァァァァァァァァ!!!戦闘フィールドに大きな歓声が上がる……。
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