第六十五話◆放浪魔導士ヨシュアvs鮮血のエルミリア
「もう知っているのよ。……最大魔力を増やすポーションなんて聞いたことがないけれど……造れるのよね?」
「すみません、何のことだかサッパリ分かりません。」好矢は嘘をついた。…いや、つくしかなかった。
あのポーションは危険すぎる。簡単に人の手に渡っていいものではない。
「隠しても無駄です。……何なら、今ここで無理矢理吐かせることも出来るんですよ?」エルミリアが、傍に置いてあった槍を手に取った。
「……槍ですか。俺と戦うつもりですか?」
「えぇ。私は上級魔族……ガルイラ達のような下級魔族とは格が違います。」
「……エルミリアさん、貴女の魔力はいくつなんですか?」あくまで冷静を装う好矢。
「聞きたいのかしら?」不敵に笑うエルミリア。
「よろしければ。」
「32200よ。」
「ッ――!?」3220ではなく、32200…!?好矢にとっては格が違うどころの話ではなかった。
しかし、好矢を殺せば魔力増幅ポーションの秘密を知ることは出来ない。何故なら、作り方を記憶してノートにはあえて書いていなかったからだ。
もしもノートが他の人の手に渡った時の為に行ったことだ。
「…………。」好矢は無言でミスディバスタードを抜いた。
「やる気のようね……。」エルミリアは槍を構えた。
(光魔法で敵の行動予測……視界の上に映像表示……魔力100使用!)
(土属性の物理魔法障壁……魔力1000使用!)
「「発動ッ!!」」
エルミリアは薄い膜のような防護が見えた。同時に発動したので詳しい魔法詠唱文は解らないが、土属性の防護魔法だということは分かった。
その刹那――超スピードで槍の刺突攻撃を繰り出してきた!
「ッ!!」エルミリアの攻撃をギリギリのところで躱し、バックステップで距離を取った!
「今のを避けられるとは……ますます私のモノにしたくなったわ……!!」エルミリアは黒いオーラを纏った。
実際、オーラが見えているわけではないので魔法ではないが、そのような雰囲気を感じた。
「あんた……悪しき者なのか……?」ミスディバスタードを構えたまま、聞いてみる。
「いいえ……悪しき者は別にいますよ。」ニッコリと微笑んだエルミリア。その姿は歪んでいた。
マズイ!あれは分身だ……!
その瞬間後ろに気配を感じて、ミスディバスタードを思い切り後ろに振った!
ミスディバスタードの薙ぎ払いにより、槍の狙いは逸れ、刃は好矢の頬を掠めた!
……本気で命を狙いに来ている……!?
「あらら…惜しいわねぇ……。」エルミリアは言った。
そして更に、行動予測で読めなかった……?
(行動予測魔法……魔力100追加!)「発動!」好矢は魔法を発動させた。
実際、エルミリア自身には何の影響もない魔法なので、彼女は首を傾げた。
「何か小細工をしているのかしら……?」
今はまだ好矢との戦いに油断しているエルミリア。好矢はその隙に立て続けに魔法を使用した。
(魔法バフ…足元に磁場を展開……雷球魔法をバフ起点に発動……
バリバリバリ……!!好矢は自身の足元に電気を纏った。
この魔法は履いているブーツとその接地面である床に電磁場を発生させ、磁石の同極の性質を活かして素早く動けるようにする魔法バフだ。
通常は魔法バフの起点を作り、そこへ同属性の魔法を発動して使用するものだが、好矢は魔法の同時発動で、魔法バフを一度の詠唱で発動させた。
魔法バフを発動させると、エルミリアの姿はまた歪んだ。しかし、後ろに気配がない。
………………上だ!!
「でやぁっ!!」上にミスディバスタードを振り上げた!
バシュッ!という重い斬撃音が鳴り、エルミリアの槍を構えていた肩に斬撃を命中させた!
「くっ……!」槍は好矢に当たることなく地面に刺さり、すぐに槍を抜いてバックステップで距離を取ったエルミリア。
好矢を睨みながら肩を押さえている。肩からは青い血液が流れている。
「やってくれたな……トール・ヨシュアッ!!」エルミリアは怒鳴り出した。
「やっと化けの皮が剥がれたな。……それがお前の本性だろう!」好矢もミスディバスタードを構え直し、エルミリアに駆け出した。
(光球で敵の視界を奪え……魔力60使用。)「発動!!」エルミリアは光属性の失明魔法を発動したが、先ほど使用した分析防御用の光魔法で詠唱文と使用魔力は筒抜けだった。
パァン!という強い光球を好矢の目の前に放った!
「もらった!!」エルミリアは槍による刺突攻撃を再度仕掛けてきた!先ほどとは違い、超スピードではなかったので、好矢は槍を受け流して、先ほど切り付けた方の反対側の肩をすれ違いざまに斬りつけた!
「グッ…!どうして……!!」エルミリアはよろけた。
(植物魔法……ガゾの葉…金属魔法……ガラスレンズ…光魔法……高熱源……水魔法……ガゾの葉に……魔力2500使用!)「発動!!」
合計魔力を可能な限り高めて、四属性同時発動を行って金属のように硬いガゾの葉を目の前に作り出した。
植物魔法による魔力消費を増やして、現れたガゾの葉の合計枚数は15枚。
(強風でガゾの葉を吹き飛ばす……エルミリアに……魔力100使用!)「発動!!」
そして、発動の号令と共にミスディバスタードをエルミリアに向けた。
「魔法伝導210!!」
切れ味の凄まじい鉄のような硬さのガゾの葉は、ミスディバスタードの魔法伝導によって魔力5250分の強度になり、もの凄いスピードでエルミリアに飛んで行った!!
ガガガガガガ………!!エルミリアの手足を容赦なく攻める!!
先ほどの二発の斬撃で土属性の物理魔法障壁が弱まっていたエルミリアに痛手を負わせるには十分な威力だった。
「がはっ……!!」その場で膝をついたエルミリア。
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