第六話◆国立魔導学校
「ここが、国立魔導学校・トーミヨだ!」
えっ? 灯明……? 俺が居た学校に名前が似ていた。
学校の敷地内は非常に広い。元の世界の旅行で一度、栃木県の那須塩原公園まで行ったことがあるが、そこの草原にそっくりだった。
敷地は木で囲まれているが、敷地内は広大な草原。ところどころで布を敷いて弁当を食べている人、上空へ向かって炎で出来た槍を飛ばしている人……色んな人がいた。
「えっと……ここで何をすれば?」
「大丈夫、歩きながら話すよ」
「←∇∋∂」と書かれた立て札を見て、そちらへ進む。
「あの、さっきの何て書いてあったんですか?」
「うん? さっきの立て札か? 左、学長室って書いてあったけど、どうかしたか?」
「いえ……ここの言葉読めないので……」
不安に駆られながら答えた。だが、その不安はすぐに薄らいでいく。
何故なら、ここ、国立魔導学校・トーミヨでは、基本的に扱う言葉は魔導語(好矢が知る日本語)であり、共通言語は会話の時だけだそうだ。
それに、話し言葉である共通言語においては、日本語で通じているので、特に不自由はない。
立て札が共通言語で書かれていた理由を聞いてみると、魔導語はかなり勉強しないと覚えられない言語だから、入学や見学に来た人達でも分かるようにしている……とのことだった。
ちなみに、準魔導語というものも存在していて、日本語のカタカナのことだ。これは一般市民も使える人が多い。
兵士が書類に「トール・ヨシュア」と書いていたのも、準魔導語であるカタカナだった。
この魔導学校は、灯明医科大学同様、とても広い敷地であった。
現在把握している違う点を敢えて挙げるとすれば、灯明医科大学は6年制だが、国立魔導学校トーミヨは5年制の学校であるということと、魔法を使うか使わないかの違いだ。
トーミヨにも、寮はいくつかあるらしい。入居人数の制限から、入居出来るかどうかは解らないが。
兵士曰く、俺はこれからこの魔導学校の2年生へ編入して、魔法の勉強をしてもらう……とのことだった。
現代日本から来た人間であれば「冗談じゃねえ、元の世界へ帰せ!」か「やった!異世界で第二の人生頑張るぞ!」のどちらかである場合が多いが、好矢はどちらでもない。
どちらか片方を選べと言われれば、元の世界へ帰せ! と言うはずだが、異世界に転移して突然やってきた青年を学校に入れると言っているのだ。
何か事情があるに違いない。この世界の人達が俺の力を必要としているなら、もう少し頑張ってみよう。……そう思っていた。
元々医者を目指したのも、友人の母親が亡くなってしまった時に、悲しませる人間を少しでも減らそうと思ったから。その責任感のまま、本当に医者の卵になりかけていた。
「――さて、こちらです。ヨシュア殿」兵士さんは扉の前で振り返って答えた。
「あ、どうも……」
扉を開けると中から男性の声が聴こえる……。
「ようこそ……トール・ヨシュアくん……」
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