月明かりと液晶の画面は、同じ色をしている。

思い出したくないことを、思い出した。

嫌だな……。来ないでほしい。見たくない。


私は、良い子よ。お願い、許して。


嫌な話を聞いたり、見たりすると、胸の辺りで気持ち悪い締め付けがする。

ずきり、ぐっ、がっ。むっ……。

嫌い。私は、そんな話好きじゃない。


心が騒つき、ムカつき、耳を塞ぎたくなる。

私は、どうすればいいんだろ。わからない。


なんか、疲れちゃった。



昨日は満月で、見れないと思ってた。

夜の四時ぐらいに、目が覚めて、台所へ向かう。水を飲みに。

窓から、いつもよりも眩しい光が溢れていたから、不思議に思って、外を見た。

あ、いた。

青白い球体が、黒い空に浮かんでいる。窓の中央部分。ど真ん中。私を見つめていた。


「やっと見てくれたね」

私、探していたの。でも、いなかったからもう会えないと思ってた。

「そうなの。ずっとここにいたよ」


見下げられているくせして、威圧感がなくて、神秘的で、愛おしい光だった。冷たい色なのに、私の気持ちは明るくなる。凄いなぁ。私もあなたみたいになりたい。


不安だった。どうしてか、眠れなくて。

今日は、わからない。嫌いな人の声がまた、聞こえてくるかもしれないから。クソっ。



私のスマホの背景は、金木犀の星屑。

せめて、今だけでも見ていたいと思ったから。今だけでもいいから。お願い。

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