蝶を助けた数日後

小さい頃から、眠れない時に部屋の端っこを見つめることがある。


端っこ。


ただでさえ夜は暗い。それでも半分開かれているカーテンからは光が入り込み、自らの両手が見れるほどの明かりが灯っていた。

だから、夜は怖くなかった。夜に怖いことは、振り返った時に開かれた母の両目。

「早く寝なさい」と私を見つめ、また閉じる二つの眼が怖かった。

それ以外は、一日で一番楽しい時間であった。


私は眠れない時に父の背中を眺めながら多くのことを考えた。

学校のこと、友達のこと、先生のこと、ご飯のこと、ゲームのこと、本のこと、アニメのこと、母のこと、父のこと、自分のこと、飼っていたインコのこと。

そして、物語のこと。


私は幼い頃から、物語を考え耽っていた。

いつも魔女や、好きなキャラクターたちが登場する話だった。

今も登場した者たちを覚えている。


物語を耽っていただけではなく、自分も話の登場人物になり、演技をしていた。

私は龍使いの龍、ラベンダー。

なんて、考えていたり。(本当のセリフ)


それでも考え続けるのも疲れるので、天井をぼーっと何も考えずに見つめることががあった。

そんな時、月明かりの眩しい日。

異様な暗さが天井の隅の方に集まっていることに気付いた。

見つめ続けた。意味もなく、ぼーっと見つめた。


すると奇妙なことに、暗さが明るいところを侵食していたことに気付いた。

白とは呼べない光が、黒、影、闇、無によって消えていった。

そう、広がっていったのだ。


私は怖くなり、開きっぱなしにしていた両目を閉じ、瞬きをした。

そうして、ゆっくりと開き、隅っこをちらりと見た。


天井は元の姿に戻っていた。


きっと目の錯覚とかなんだと、今では理解できる。

それでも怖くなって、すぐ瞬きをするようにしている。


突然、言いたくなった夜の11時のこと。



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