第17話 儀式完了の合間
レイロウは、息荒くどんどんとその
「先ほどよりは弱まってきてますね」
レイロウの背後から、警備隊員のリンが声をかける。レイロウはその言葉にうなずくが表情は硬い。
「しかしまた続いている。今までにない長い地震だ。あいつら、無事だといいんだが……」
レイロウの調査結果から、地震のカギを握っているのは、例の湖だということが分かっていた。原因はつかめないままではあったが、震源が湖にあることに間違いはない。生徒であるシン、シンジの双子が、まだレイロウの休憩場所に戻ってこないところを見ると、まだ湖にいる可能性は高い。そう思うとレイロウはいても立ってもいられず、湖に向けてまた歩き出したのだった。
警備隊のリンがいたおかげで湖までの道のりは最短距離でいけた。余震が続く中、ずんずんと湖に向けて歩んでいった。
*****
ゆらゆらと不穏な雰囲気を出しながら、湖の水面はゆれていた。そのゆらぎは徐々に強さを増し、ついに湖の中心から勢いよく水が吹き上がった。それはまるで噴水のような勢いだ。湖から吹き上がった水は、まるで激しく降る雨のように、湖面に降り注いだ。
そんな激しい雨のような水面にぽかりと、丸い物体が浮きあがった。……そう、シン達が中に入った氷の球体だった。湖の中心から噴出す水流のおかげで、程なくして氷の球体は岸に寄せられた。
「……ふぅ……。お、おめーら無事だべか~」
力なくシンが呼びかけると、隣にシンジも倒れこんで答えた。
「な、なんとか……。疲れた……」
「まったく、危機一髪だったな……」
あまりキショウは疲労を感じていないらしく、双子よりもまだ元気そうだ。倒れこむ双子の様子を確認すると、そのまま湖を見つめる。まだ湖面は噴水のようで、湖の底から――つまりは例の水に沈む神殿から水は噴出し続けているようだ。
「水流にうまく乗れたからよいものの、あのままだったら、三人して
キショウは双子を横目で見て毒づくが、双子が気にするはずもない。ようやく息が落ち着いたシンが、ゆっくりとキショウの方を見る。
「オラ達はなんとか無事だったべが……ペルソナが持ってた緑の闇の石――大地の闇の石はどうなっただ?」
「それにあの水流は一体なんだったんだろうね……。急に噴出してきてさ……」
シンに続いてシンジも、首だけを動かして口を開く。へろへろな双子の様子に、キショウはため息混じりに答える。
「……さぁな。おそらく闇の石はあの様子だと地に沈んだな……。水流はそれをきっかけに地下で何かが起こったから噴出したんだろう。湖のはるか地下に水脈があったと考えてもおかしくないからな……。それより、おまえら」
と、キショウは双子の斜め上に飛び上がり、腰に手を当てて顔をしかめた。
「無茶しすぎだ。少しは自分のことも心配したらどうだ。そんな無鉄砲さじゃ長生きできねぇぞ」
その様子は身体の割りに大人の威厳、その不釣合いさに思わずシンが噴出した。
「へ、へへへ……キショウまるで大人みたいだべ」
「大人だっ!!」
「あはは……は……は……」
隣でシンジが笑いながら目を閉じた。その様子に一瞬キショウはぎょっとするが、すぐに静かに整った呼吸が聞こえてきた。どうやら眠ってしまったらしい。
「……無理もねぇか……。あの氷を維持するのに、かなりの魔力と集中力を使ったろうからな……」
キショウの言葉に、シンが首だけ動かして隣の弟を見る。寝顔を確認して、シンは口の両端をちょっとあげて微笑んだ。
「オラも……ちょっと疲れただな……」
その時、湖を囲う茂みの中から、見慣れた姿が飛び出した。そう、双子を心配して戻ってきたレイロウ先生だ。その姿を上目で見て確認すると、シンは力なく片手を挙げて微笑んだ。それを確認するや否や、二人の男は、倒れている双子に駆け寄っていった。
――数分後、レイロウはシンを、警備隊のリンはシンジを背中におぶって、山を降りていた。リンに背負われたシンジはぐっすり眠りこけている。シンも疲れた表情をしてはいたが、負ぶっているレイロウに対しポツリポツリ湖であった出来事を話し続けていた。
彼らが去った湖は、徐々にその水流を弱めてはいたが、静かな地鳴りがまだ続いていた。そんな地鳴りを覆うように、雨音は静かに森に降り注いでいた。
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