第3章 双子、湖で大冒険!
第1話 沈黙の期間
青白い光が所々にうっすらと光っていた。湿気に侵食された石の床に壁は、どんよりと黒い色が染み付いている。空気もどんよりと重く、ひんやりとその空間を包んでいた。そんな薄暗い空間に、同じように
――ペルソナだった。
相変わらずの真っ白な仮面には空洞の黒い目が大きく開かれ、不気味に
男の暗誦にあわせ、その光は徐々に光の強さを強めていった。
「――さあ……一つ目の封印といこうか……。闇の石よ!!」
ペルソナが低い声で叫ぶと、それに
その反応に満足するように、仮面の男の口から、鼻で笑うような笑みがこぼれた。
「……何千何万という時を超え……いまだにその力を失わぬとはな……。いや、それは片割れも同様か……」
しばらくその光を見つめているようだったが、沈黙の後、男は光を支える両手に力を込めた。またもそれに反応するように、緑色の光はその勢いを強める。
「我が闇の力に勝てると思うな……。光があれば闇も当然あるのだからな……」
また鼓動のような波動が光から発せられ、それと同時に地響きが通り抜けた。それはまるで大地の鼓動のように……。
1,沈黙の期間
徐々に蒸し暑くなって、夏の訪れを感じ始める時期だった。真っ暗な外から、静かな雨の音が聞こえてくる。じめじめと湿っぽく、空気は肌にまとわり付くような、そんな雨の夜だった。
双子はいつものように寮の自分達の部屋にいた。兄であるシンは、窓ガラスにはりつくように外を見ていた。表情はぼんやりとして、見るからに外の雨にうんざりしているようだ。
「シンー。そろそろお風呂に行こうか? ガイも迎えに来る時間だよ」
そんなシンに、机に向かっていた弟のシンジが向き直って問いかける。シンが生返事していると、シンジも彼越しにその場から外を見る。
「ああ、また雨なんだ。こういう時期を梅雨って、昔の人は言ったらしいよ」
シンジはそう言ってシンの隣にやってきて、彼と同じように外を見る。
「雨だと、明日も校庭では遊べないだべな……。ここ一週間くらい遊んでない気がするだー!」
隣のシンジに訴えるようにシンが言うと、シンジも首をひねって答える。
「そういえばそうだね。ここんとこ、ずっと雨だったもんね。ま、僕は久しぶりで気持ちいいけど、みんなと遊べないのはつまらないね……」
「シンジは雨はあんまり関係ないだべよな……。泳ぎにでも行ったほうがいっそのこといいかも知れないだべ」
シンジの発言に
そんな会話をしている最中、突然ぐらりと家がゆれた。家具が倒れるほどではないが、割と大きな地震だ。ズズズと低音の地響きが聞こえ、がたがたと寮全体が震えた。
「……また地震だべな……」
「……うん。……あ、止まったね」
地震があったのは数十秒程度だろうか。沈黙して地震のゆれを感じていた双子だったが、その対応は冷静なものだった。特別あわてる様子もない。それもそのはず、
「今日は三回目だね」
「ここ一週間くらい、地震が続いているだべな……」
双子が言うとおり、ここのところセイランの町は地震が続いていた。家が壊れるほど大きい地震ではないのだが、体感できる地震としては決して小さいものではなかった。町の新聞でも取り上げられてはいるのだが、調査隊の調べでも大きな危険は見つかっていないらしい。気にはなるものの、大きく騒ぐほどではないらしい。
「そういえば、今日の新聞でも地震の話載ってたよ。地割れもないけど、震源地は海の方ではなくて、大陸の方なんだって」
思い出したようにシンジが言うと、そこでシンは初めて振り向いた。
「地震の原因分かっただべか?」
「ううん、わかんないって。でもこのセイランのある大陸って、そんな大きな火山もないのに、おかしいって、それは騒がれているみたいだけど」
シンの言葉に、ふるふると首を振ってシンジが言うと、シンも興味をなくして、また窓を見る。
「そういえば、新聞にももうペルソナのこと、載らないだべな……。あれからペルソナもデルタも、姿を現さねぇだ……」
シンの言葉にシンジもうーん、とうなだれる。
そうなのだ。彼らとデルタが対戦してから、デルタが化けていたデュオは忽然と姿を消した。当然、
シンの発言に、シンジは机の上に置きっぱなしの黒く古びた本を見た。闇の石の組み込まれた超古代文明時代の本である。この本のおかげで闇の石を見つけることができ、ペルソナの悪事も妨害できたのだが……。
「本のほうも、まったく反応しなくなっちゃったしね……。手がかりをつかみようがないからな……」
そうぼやいて、シンジは小さくため息をつく。
この一ヶ月、シン達「超古代文明探検隊」は何もしていなかったわけではない。本を例の呪文で発動させ、闇の石の在り処を突き止めようと悪戦苦闘していた。しかし残念なことに、魔法陣に地図は浮かび上がっても、肝心の闇の石の光が発生しなかったのだ。
ガイの推測では『闇の石のある場所が遠すぎて、今の地図の範囲にはないんじゃない?』との事だったので、彼らは本を片手にうろうろとあちこち出歩いていた。時には双子が、時にはヨウサが、時には級長のフタバも巻き込んで、彼らは本を片手にうろついてみた。ところが本は反応しないばかりか、本を狙ってきてもいいような、ペルソナやデルタですら、
シンはしばらく黙って、シンジ同様に机の上の本を眺めていたが、息を大きく吸い込んで、弟の方を向いた。
「シンジ……。明日、久しぶりに本持って歩いてみるだべか?」
「最近、探してなかったしね。明日も雨っぽいから、久しぶりに探しにいこっか。
「……だべな! 明日はちょうどお休みだべさ! じっくり探しに行くにはいいだべな!」
弟の反応にシンも笑顔で答え、勢いよく立ち上がった。
「そうと決まれば今日は早く寝るだべ! さ、シンジ、寝る準備するだべよ!」
「それはいいけど……お風呂が先だよ?」
そんな会話をしながら、双子は窓から離れた。その窓の向こうでは、重たい雨がまだまだ降り続いていた。
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