プロローグ2 動き出す盗賊たち
「あんだけ偉そうに言ってたのにねぇ」
「……」
「一瞬で隙をとられるかぁ」
「……」
「オレよりひでえよなぁ」
「……うるさいわね」
さすがに女が怒り出した。
「仕方ないでしょ! 予想外な助っ人がやつらの中にいたのよ!」
いつもは白い肌のほほを赤くして、水色の女性――エプシロンは背後の男に勢いよく振り向いた。エプシロンの背後で偉そうに腕組みしていた赤い男――デルタは意地悪な笑みを貼り付けたまま言葉を続ける。
「それ言ったら、オレだってそーだぜ!? ちっさい娘が雷使うなんて知らなかったしな!」
「なによ、アンタなんか女の子に負けたんでしょ!?」
「お前は小人に負けたんだろ?」
「何ですって~!?」
灰色の石造りの部屋には不似合いな、ケンカの声がにぎやかに響いていた。
「やれやれ、低レベルな争いはやめてほしいものだな」
「げっ……」
「オミクロン!」
茶色のサラサラな髪に、きりっとした
「一体何の用だよ、オチビさん」
あからさまに反発的な態度でデルタは足元の仲間に声をかける。しかし当の本人はその発言など聞く耳も無く、二人の間をつかつかと通り過ぎた。二人の腰の高さにも満たないその身長は、どう見ても五,六歳の子ども程度……。
そう、オミクロンの外見は、どう見ても
「ねぇ、オミクロンも言ってやってよ! デルタってばひどいのよ」
自分より年上の相手に言うようなエプシロンの発言に、オミクロンはやや目を細めて、彼女を見る。どうやらデルタとは違い、エプシロンはオミクロンに反発はないらしい。オミクロンは軽くため息をついてまた背を向ける。
「エプシロンも、言い争っている場合ではなかろう。お前のミスはたいしたミスではない。そんなことに、あげ足をとられている場合ではないのだぞ」
その発言に、エプシロンは「どうだ!」といわんばかりの笑顔でデルタを見る。面白くないのはデルタだ。
「なんだよ、オミクロン。おまえ失敗したエプシロンをかばうのかよ」
「彼女は失敗ではないだろう。ペルソナ様の大事な儀式も無事完了できたのだからな」
「……彼女『は』、って……じゃオレは失敗なのかよ!?」
「当たり前でしょ。風の闇の石を奪うのがアンタの仕事だったのに、奪えなかったんだから。なんか文句あるの?」
ここぞとばかりにエプシロンが口をはさむ。二対一では分が悪いというものだ。デルタは言い返せなくなって、むぐぐと口をつむぐと、また腕組みして二人に背を向ける。
「なんだよなんだよ、二人して……」
「すねている場合ではないぞ」
間髪入れず、オミクロンの言葉が飛ぶ。幼い声で偉そうに言われる、それ自体がデルタにしては面白くないのである。反射的にデルタは
「すねてねぇ!!」
これでは、親にすねる子どもそのものである。その様子にあきれてため息をつくオミクロンの隣で、エプシロンは素直に彼の方を向き、首をかしげた。
「で、オミクロン、どうしたの? 何か仕事?」
「ああ、ペルソナ様から頼まれていた仕事が大分進んだのでな。次はお前達も手伝わせろと命じられた」
オミクロンがそう説明すると、デルタが背を向けたまま鼻で笑う。
「へっ。オレの次に動き出した割には、ずいぶん遅いんじゃねーの? 今頃になって仕事が片付いてきたのかよ」
「遺跡を調べながらの探索だからな。力任せで出来る仕事ではないのだよ」
「誰が体力バカだよ!?」
思い切り振り向いて抗議するデルタだが、
「で、お前達には私と一緒にきてもらう。今回は私の命令に従ってもらおう」
まったくオミクロンは聞く耳持たずである。
「あら、オミクロンと一緒に仕事するなんて、久しぶりね」
「ちょ、ちょっと待て! なんだよ、お前と一緒に仕事すんのかよ!」
二人ともそれぞれの反応だが、オミクロンは全く気にする様子はない。
「ペルソナ様からの命令だ。あの方の命令に反することは、私が許さん」
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