第3羽 うさぎ革命と日常

 前途多難を極めるだろうが、俺はうさぎの飼育率向上の為の革命を巻き起こしたい。


「プゥプゥ」


 俺は雅思(中身メープル)に問うような目線を向けた。鼻はそれに連動して揺れる。


「なんだ? メープル」

「プップップー!」


 必殺! うるうるおねだり!!

 目を潤ませてからの上目遣い!


「メープル! 可愛すぎる」


 ふっ俺の可愛さにまんまと引っかかったな。雅思(中身メープル)よ。


 さぁ、このふわふわわがままボディーを余すことなく撮るがよい!


「メープルの可愛さを世界に広まれ!」

「プップップッー! 」


 世界に広まれぇ―――! うさぎの魅力を世界に知り渡れ――――!!


「プゥープゥー」


 つ、疲れたぁ。興奮MAXの状態で心の中で絶叫すると疲れるなぁ精神的に。


「ププッ♪ 」


 えへへっと、そんな疲れさえも俺は愛嬌に変えて魅せる。革命に余裕は無い。


「メープル、可愛いなぁ。メープル。彼女にしたい! 彼女にする!」


 まっ!こんな、わがままもっちりボディーを持った人間なんていねぇよな。


 あっそうそう人間で思い出したが、俺はバニーガールというものに嫌悪を持っている。

 あの破廉恥極まる格好で、うさぎを騙るなんて嫌だ!


 スクール水着の肩紐の部分を取り除いて、胸を大きく露出させ、網タイツを履いた足は大きく露出しているあの痴女が着る様な服を、『うさぎの女の子』と言うなどあり得ない。


 ふむふむ。『うさぎの女の子』じゃなくて、バニーガールだと? 一緒だッ!

 英語にすれば何でも許されると思ったら大間違いだっ!


「なに怒ってるんだ。メープル?」

「ププゥ〜?」


 別に怒ってない。苛立っていただけだ。


「キョトン顔、マジ神」


 はいはい万民が知る常識です。知ってないとおかしいですから。


 キョトンとした顔、いわゆる間の抜けた顔は老若男女問わず誰でも可愛いと思える瞬間ですから。うさぎに限らず、ですよ?


「好きっすよマジでメープル姉さん」


 あ~あ~萌えすぎてキャラ崩壊とかやるな。雅思(中身メープル)よ。


「あら、可愛いわね! メープルちゃん」


 ゲッ、いつの間に来た兄貴。

 兄貴は女装が趣味で女装してる時は女っぽい口調になる。俺の苦手部類に該当する。


「うふっ。素敵だわ」


 うわぁ、語尾にハートマークがついてるな。絶対。

 兄貴、勘弁してくれよな。仮にも弟に向けた会話にハートマークを混ぜるか?

 兄貴が向けてる(と思っている)のは可愛い飼いうさぎであって俺じゃないけど。はぁ。


「ねぇ雅思」

「おうよ」

「ププッ」


 なに言ってんだろ、俺。答えようとしても、出てくるのは「プ」だけなのにな。


「ねぇ雅思、行きましょう? お散歩」

「おう!」


 俺も行きたいなぁ。お散歩。

 ちょっと高いところに兄貴の頭があって、笑いながら一緒に並んで歩くんだ……って、なに妄想してるんだろ。


 もう笑いながら一緒に並んで歩くことなんて出来やしないのに。ハハッ。


「メープル、お留守番よろしくな」

「プププゥー!」


 ……めそめそしてるなんてらしくないよな。


 スゥーハァー……


 よっし! 任せとけ! 俺がばっちりお留守番してやるよ!


「頼もしいなぁ! 雅思」

「雅思は貴方よ。メープルじゃないわ」


 鋭いツッコミにあからさまに俺と雅思(メープル)は反応する。


「ギクッ、悪いかよ。俺の名前でメープルを呼んで」


 効果音を自作してまで。おいおい……雅思(中身メープル)。しっかりしろよ。


「別に」


 兄貴は時折、鋭い勘を持つ。

 俺と雅思(中身メープル)の秘密がバレるのは意外と早いかもしれない。それまでになんとしてでも革命を成功させる。


「行くわよ。メープル」

「おう!」


 あ~バカバカバカッ!! 雅思(中身メープル)のバカ!!

 ここは俺がそれはそれは愛らしく「プー」と言う場面だろ!!


「やっぱり貴方メープルね。不思議だけど、確信できるわ。ねぇ雅思」


 ヤバッ! くそぉ!

 兄貴が勘が鋭すぎてヤバイッ!


「なっ何言ってんだよ兄貴。俺は雅思だ! 誰がなんと言おうと雅思だ!」

「本当に? 褥の上でも同じ事、言えるの? 睦言を囁き甘美に溺れながらだと、真実なんてぽろりと吐くわよ」


 遊郭の花魁みたいな言葉を吐くな! 兄貴は男だろ! 立派な〇〇ブーツがついてるだろ!


「あっ、兄貴は男だろ。キモい事言うなよ」

「あら残念ね。全国の腐を極めた女子が待ち遠しく思っていると思ったのに」


 ※この拙作を読んでくださる皆々様。兄貴は異常です。兄貴は異常なんです! ご堪忍!


 ぜぇぜぇはぁはぁ兄貴、ツッコミどころ多いよ。マジで多すぎる。


「プップー! プゥー」

「おっ?おっ?おっ?」


 あぁ? なに『おっ?おっ?おっ?』って。


「雅思、どうしてうさぎになったの? 」

「プゥプゥープププップー」


 あぁそれはね。実はカクカクシカジカで……って伝わるかい!


「分からないわを『ぷ』以外に何か言えないの?」

「うさぎには声帯が無いから無理だろなっ? メープル! メープルはうさぎだもんな!」


 もう誤魔化しきれない! だが誤魔化す!

 雅思(中身メープル)、お前だけが頼りだ!


「あっはははっ! 何冗談を真に受けてるの! お腹痛いわよ! あっはははっ!」


 あぁん? おいこら。兄貴。全部ウソだったのか! こちらとら、冷汗たらたらだったのに!


「……メープル」

「プゥ」


 皆まで言うな。雅思(中身メープル)。

 お前の命令を俺は諾した!


「あっー! あたたたたたたたたたたたー! やめんしゃい! お前ら!」

「ブゥ!」


 怒りの高速穴掘り! 兄貴の身体に穴をほってる! ほれほれ〜!


「楽しいなぁ。こういう日常」

「ブゥ〜」


 雅思(中身メープル)そうだな。俺もそう思う。

 兄貴は俺に引っかかれて悶てる。穴掘りって言っても、連続で兄貴を服の上から引っかいているだけだ。

 兄貴の身体に穴掘りながら、みんなと笑い合う日常がこんなにも暖かい。これが幸せか。

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