第2羽 メープルの願い
『僕はうさぎとしていきた記憶をなくす事を条件に、雅思さんが、うさぎになれるようにお願いました』
なんだと! じゃあ俺がメープルになれたのはメープルのおかげなのか?
そんでもって、うさぎとして生きてた記憶が、代償で・・・・くっ! 頭が混乱してきた!
「雅思さんに出会えて幸せだったのです。だから恩返ししたかったのです。迷惑をかけるつもりはありません。雅思さんはうさぎになれて幸せですか?」
幸せじゃない。そんな答えは無い!
幸せだ! 幸せなのだ!
メープルが俺に恩返ししてくれたんだ!
これを幸せと思わずして、何が幸せだ!
俺は今、感動しているっ!
「プップッ!」
鼻の鼓膜が揺れた。とっても嬉しいそうな鳴き声だ。
「良かったぁ。あ、そうだ。最後に僕のお願い聞いてくれますか?」
「ブップッ?」
「うさぎのお友達をたくさんつくって、うさぎライフ楽しんでくださいね!」
力強い言葉に俺は元気よく相槌を打つ。
「ブブ!」
「ありがとう。さようなら雅思さん」
そう言い残してメープルは雅思(俺)になった。
「メープル! 」
「ブブ?」
興奮した声で名前を呼ばれたから、鳴き声で応える。何? と
「可愛いな!」
「プー」
それなら常識でしょ。
日本共通常識いや、万国共通常識だろ。
俺は、うざすぎる俺(中身メープル)を適当にあしらいながらメープルの最後のお願いについて考えていた。
友達がいないならどうする。話し相手をする。話し相手がいないならどうする………
うさぎの飼育率向上を目指せばいい!
「プッププー!」
「メープル、どうしたんだ?」
ふふっ、俺(中身メープル)よ。
お前には分かるまい。
俺は今から飼育率向上革命を起こすのだ!
俺による、うさぎの為の、うさぎの革命!
革命を確実に成功させる為に内容はこれだ!
うさぎの愛らしさを俺にアピールする。
手段としては、芸とか、仕草で愛嬌を振りまけばいいだろう。犬みたいにな。
いや、犬よりも愛らしく、心から癒やされてどんな堅物でも、ほっぺがゆるゆるになる、そんな芸を俺は目指すっ!
うさぎLoveを自称する俺とこの愛くるしい外見を持ち合わせれば最強だ。ナポ◯オンと同じく、俺の辞書に不可能は無い!
俺は、基本、地についているうさぎの前足を浮かせ、「ぷー!」と鳴いた。
そして、すぐに地に前足をつけた。
一番大事なのは、うさぎの固定概念を取り払う事だっ!
うさぎイコール臭い。
この年寄り臭い概念を取り払うのだ。
常日頃から感じていたのだ。何故、うさぎが臭いと思われがちなのか。
うさぎの排泄物が臭いからだと思う。
うさぎの排泄物には食糞というものがあり、それを見た飼い主が他の人に広めてしまってうさぎイコール臭い、という概念が生まれたと考えている。
最も、うさぎの排泄物には、アンモニアが、混ざっている。つまり、アンモニア臭がするのだ。
理科の授業でアンモニアの実験を経験した事があると思う。あの時も臭くなかったか?少なくとも、アンモニアが臭い、と言う事くらい知ってるはずだ。
そんなもん! 犬の方が人間みたいな感じで臭いし環境汚染だろが。
「ブー!」
「おっ、メープルが鳴いた。可愛い」
ゴホン。鳴き声が漏れてしまった。
気を取り直してもう一つ。
ペット可でもうさぎはダメ。
俺はこのあるあるに猛烈に怒っている。
ペット可でも、うさぎはダメ?
何だそれは! 可愛らしさを代表する生き物であり、ディ◯ニーにも登場する、うさぎがダメだと?
意味分からん! 責任者の偏見だろ!
責任者連れて来い!
そりゃあよ、生え変わりの時は毛が、わさっわさっと抜けて大変だろうけどよ。
それは犬も同じだっ!
「ブブッ」
「おっ、メープルが鳴いた。怒ってんのか〜可愛いなぁ、もぉ、こいつぅ〜」
おい! 俺! あ~、俺じゃなくて元俺か?
あぁ、そんなもん、どうでもいいわ!
ともかく、なんでそんなに呑気なんだよ!
俺のふわふわもちもちのほっぺを、触ってる場合か!?
うさぎを飼っている人がいない中、俺はメープルの為に、メープルの為だけに!
飼育率向上を目指してるっつうのに!
呑気にほっぺを触るな!
あ~、分かる。分かるよそりゃ。
メープルのほっぺは、ふわふわもちもちで、触ってるだけで気持ち良くて癒やされて……って! あぁもう! 今はうさぎ愛を語ってる場合では無い! 計画を練らねばっ!
「メープル、なんでその場をくるくる回ってるんだ? 目が回っちゃうぞ〜」
俺(中身メープル)の呑気な声に勢いを削がれる。
情熱はメラメラ燃え続けているが、興奮だけが鎮まった。
俺のしたことが。無意識にその場をくるくる回っていたのか。それもずっと。
「プー?」
俺は俺(中身メープル)に問うような眼差しを向けた。
「あぁもう! まるっこい目をこっちに向けるなよ。可愛すぎるぞ。メープル」
「プー」
はいはい。それは万国共通常識ですよ? 俺(中身メープル)
「もう、飯の時間か、メープル、ペレットの時間だぞ」
そう言うなり、俺(中身メープル)はゲージに手を入れて、ペレットを入れる為の皿を、手に取った。
コロコロコロコロ…………
静かになった空間に、その音だけが響く。
じーっと、俺はそれを見つめる。
人間だったの時はなんとも思わなかったが、うさぎとなった今では、美味しそうに見えるから不思議だ。
やっぱり俺はもう、うさぎなんだ。人間じゃなくなったのだなぁ。
もしゃもしゃボリボリとゲージに入れられたペレットを咀嚼しながら俺は思った。
前途多難を、極めるだろうが、俺はうさぎの飼育率向上の為の革命を巻き起こしたい。
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